2,軍や官憲による強制連行があったかどうか
吉見義明は強制連行をこう定義している。
「強制連行とは本人の意志に反してつれていくことである。このような広い意味での強制連行には、①前借金でしばってつれていくことや、②看護の仕事だとか、食事をつくる仕事だとか、工場で働くとかいってだましてつれていくことや(誘拐)、③拉致などもふくまれる。
②のだましてつれていくケースを強制連行にふくめるのは、慰安所についたとき、むりやり慰安婦にされるからである。最初から暴力的に連行するよりもこのほうがかんたんに移送できた」
秦郁彦は「官憲による組織的な「強制連行」はなかったと断言できる」と書いているが、秦郁彦が聞き取りした中でも、歌や踊り等の慰問とだまされた、部隊の炊事手伝いとだまされた、事務員・女中・看護婦などとだまされた、金儲けができるとだまされたといった例がある。
業者の甘言にだまされてついて行って、慰安所に入れられた女性が多いようだ。
兵站司令部の山田清吉慰安係長は
「内地から来た妓はだいたい娼婦、芸妓などの経歴のある二十から二十七、八の妓が多かったのにくらべて、(朝鮮)半島から来たものは前歴もなく、年齢も十八、九の若い妓が多かった」
と語り、性病検査をした麻生徹男軍医少尉は、朝鮮人女性は若くて性経験のない初心な者が多かった、と書いている。
海原治主計少尉(のち防衛庁長官)の談話では、
「民間のピー屋が日本人主体なのに、こちらは朝鮮人が主だった。
「軍医の話では「初検診でバージンや小学校の先生もいたので聞くと、女衒から軍の酒保でサービスするとだまされてきたよし。帰ったらとすすめたら、前借金があるので返してからでないと帰れないと語った」とのことだった」
売春の経験がなく、おまけに処女の女性が自ら進んで慰安婦になるとは考えられない。
親が娘を売ったか、業者たちにだまされたかだろう。
強制もある。
「警備隊長は、治安維持会長に、まず女を差し出すよう要求したという」話を聞いた平原一男第一大隊長は、
「小さな警備隊では自らの力で慰安所を経営する能力がないので、中国側の協力に期待することになっており、ある場合には強制という形になっていたのかもしれない」
と述べているし、深田軍医少佐は
「バンドンその他性病多きをもって、村長に割当て、厳重なる検黴の下に慰安所を設くる要あり」
と報告している。
村長に慰安婦になる女性の人数を割当てしているわけだから、強制徴集につながるのは当然である。
豪北のアンボンでは、
「慰安所の復活が計画され、特警隊と政務隊が現地人警官を使って女性の徴集に乗り出した。近くの島から女を連れていく時に「住民がどんどんやってきて〝返せ〟と叫び、こぶしをふりあげ、思わず腰のピストルに手を」と禾中尉が書いているくらいだから、拉致まがいの徴集もあったにちがいない」
と秦郁彦は書いている。
この事例など「組織的な強制連行」ではないのだろうか。
また、フィリピンやインドネシアでは現地人への強姦が多く、その被害者と慰安婦とがごっちゃになっていると秦郁彦は言っている。
強姦であって、強制して慰安婦にさせたのではない、だから強制連行はなかった、というのは説得力がないと思う。
3,慰安婦は売春婦なのかどうか
たしかに娼婦だった女性が慰安婦になることはあったし、金のために志願して慰安婦になった人もいただろうし、親が娘を売ることもあった。
だからといって、自分から進んで娼婦になる人はほとんどいないだろうし、ましてだまされて無理矢理に慰安婦にさせられた人たちに対して、「売春婦」と罵声を浴びる神経にはちょっとねと思う。
仕事があるとだまされて、インドで売春をさせられるネパールの少女が多いそうだが、彼女たちにも「金儲けがしたいから売春婦になったんだろう」とののしるのだろうか。
4,慰安婦の証言はウソが多いかどうか
元慰安婦の証言には嘘も混じっているだろうし、誇張もあるだろう。
吉見義明はこう書いている。
「もちろん50年もまえの出来事の回想なので、記憶違いがないとはいえない。実際、韓国人やフィリピン人の元慰安婦の多くは、十分な学校教育を受ける機会がなかったこともあってか、証言内容が矛盾したり、年代などあいまいだったりする」
しかし、
「その証言は、記憶ちがいや、事実をかくしている場合をのぞけば、大変重要である。文字の世界に生きていないだけに、逆に、強烈な体験はそのときどきの鮮烈な記憶となっており、くりかえし聞くことによって当事者でなくては語り得ない事実関係が浮かびあがってくるからである。軍や政府の文書・記録や統計には決して出てこない生なましい現実は、彼女たちの証言からしかわからないのだ」
5,どこの国でも同じようなことをやっている
だから責任はありませんよ、ということなのだろうか。
みんな賄賂をもらっているとか、誰もが裏金で飲食しているとかいうのも、まあ、みんな同じようなことをやっているのだから水に流して、ということなのか。
慰安婦問題とは昔の話ではなく、タイやフィリピンなどの女性が「日本に行けばいい仕事がある」とだまされ、売春させられるのと同じ構造だと思う。
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そこを何とかしないと、変わりようがないですね。
「第二条 この法律において「ホームレス」とは、都市公園、河川、道路、駅舎その他の施設を故なく起居の場所とし、日常生活を営んでいる者をいう。」
「故なく」、、、という言葉に対して、いや「やむなく」だという意見があります。「ホームレスなんて好きでやってんだからほっといたらいいんだ。げんにおれのファンにホームレスがいて、そいつと飲み友だちだけど、、、」と死刑肯定論者・立川談志師匠の発言を10年も前に何かの雑誌で読んだことがありますが。
さて。日本で売春している女性は、「好きでやってる」のか。「やむなくやっている」のか。いったいいわゆる風俗で働いている女性の人口って何人いるんだろう、、、とか、AV女優さん経験者ってどれだけいるんだろうと思うんですが。そんなのホームレス人数の比じゃないですよね。
飲み代はどうするんでしょうね。
>日本で売春している女性は、「好きでやってる」のか。「やむなくやっている」のか。
イヤな客だって拒むことができないわけですから、やむなくの部分が大きい気がします。
何となくそうなってしまったと、仕方なくそうなったとの間ぐらいという感じでしょうか。
新宿ゴールデン街で「おれがその師匠の飲み友達だ」という人に会いました。新宿中央公園に住んでいるんですが、ともだちから紹介で建築や引越しの手伝いをするそうで、けっこうお金は持っているそうで。
談志師匠のサイン入り扇というのも見せてもらいましたが。
>イヤな客だって拒むことができないわけですから、やむなくの部分が大きい気がします。
仕事ってたいてい「イヤな客」の対応に明け暮れるもんですから。私も「やむなく」の部分は大きい(笑)。
で、↓の本。この手の本は一時たくさん読んだので、とくに目からウロコは落ちないですが。事情は察します。わたしも障害者の男性の介助をしてこの問題にぶちあたりましたから。
http://www.jscf.org/jscf/SYOHYOU/omori.html
けれど、障害者の女性はじゃあどうすればいいかという問題がありますね。
あと、これまた自己ツッコミですが。ホームレスの人たちは、人間関係を断ち切った(断ち切られた)人が多い。だから、高齢男性には葬儀の問題が発生する。
しかし、このAV女優さんなんていうのは、親バレ、友だちバレしたら人間関係はどうなっているのでしょうか。マンションでひとり孤独死とか、自殺なんてことがあるのでしょうか。AV女優がナゾの死を遂げた、、、という記事なんかは読みますが。
マクロ的には女性が弱い立場にある。あるいは、みゆきさんのように労働者、被雇用者は客が選べず、立場は弱い。けれど、ミクロ的には相手が障害者だったり、気の弱いオタクっぽい人とみるや、どんどんぼったくりにかかるおねーさんだっているわけであって。
そこが人生のおもろいとこ、妙味というやつでんがな。状況が状況なら立場が逆転してしまうわけですよね。それを一本調子な女性解放運動理論家とかは、いつでも弱者は女性。男が悪い、男が悪いとお題目を唱えるわけで。
いったいどーなつてんのって感じです。で、もちろんこれは女性解放運動だけではなくて、いろんな運動でもそうですがな。ほんま、なんでそんなことぐらいわからんのかなあー。
いくらなんでも話ができすぎているような。
>仕事ってたいてい「イヤな客」の対応に明け暮れるもんですから。
ジャン=リュック・ゴダール『女と男のいる舗道』という映画について、佐藤忠男は「ゴダールはこの映画で売春を普通の職業の一つとして描いているのである」「普通の堅気の職業も、実は多くの場合、賃金で自分の労働力ばかりか、心さえも売ってしまうものである点で、売春と基本的には違わないのではないか、と」と書いています。
そこまで言い切っていいものかと思いますが、言われてみればそうかなという気もします。
大森みゆき『私は障害者向けのデリヘル嬢』は真面目に社会問題を考える人が喜びそうな本ですね。
読んでみましょう。
>障害者の女性はじゃあどうすればいいかという問題がありますね。
障害者の性は触れてはいけないとされがちな部分ですが、女性の障害者の性となるとこれは口をつむぐしかないという感じになりますね。
>そこが人生のおもろいとこ、妙味というやつでんがな。
弱者がもっと弱い立場の者をいたぶる構造は妙味というより、複雑な問題ですよ。
ナチの強制収容所でもカボ(だったと思います)と呼ばれるユダヤ人のほうが残酷だったりしたそうですから。
この人は寄席オタクでして話しが弾みました。その日も新宿末廣亭に行ったそうです。(もっとも談志師匠は末廣亭にはあがりませんが)ゴールデン街の安酒場にはいろんな人が集まって来ますよ。また行きたいとこの一つです。
ホームレスをやってる人の中には、高い家賃を払うのがバカバカしいから外に住んでいるという人もいます。けっこうまともに仕事をしてお金を持っている人が極まれにはいました。↓の写真集の中に出てくる人もそんな人。
http://www.amazon.co.jp/ASAKUSA-STYLE-%E6%B5%85%E8%8D%89%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0%E3%83%AC%E3%82%B9%E3%81%9F%E3%81%A1%E3%81%AE%E4%B8%8D%E6%80%9D%E8%AD%B0%E3%81%AA%E5%B1%85%E4%BD%8F%E7%A9%BA%E9%96%93-%E6%9B%BD%E6%9C%A8-%E5%B9%B9%E5%A4%AA/dp/4163650105
で、以前にも紹介しましたか。『山谷崖っぷち日記』。この本の作者は、
>山谷の住人を市井の人と同じように眺め、底辺にいる人間こそ美しいといった幻想をもっていない。
むしろ山谷では、無知と卑屈と傲慢の三位一体を体現した人と、腐るほど出会ったと書いている。
http://www.netpro.ne.jp/~takumi-m/book/264-sanya_gake.htm
うん。まあそれも言えてる(笑)。でも山谷をここまで描けるこの人は、「自分は人間関係がうまくいかず、山谷(肉体労働、、、つまり仕事があるときは高賃金で自分を売れる仕事)があったから救われた」と言い切れる高学歴の方ですからね。この人の視線もやや高めです。
>女性の障害者の性となるとこれは口をつむぐしかないという感じになりますね。
障害者専用ホストクラブ、、、うーん難しいでしょうか。ずっと以前『ビューティー・コロシアム』というTV番組でいわゆる「ブス」だと言われる女性がキレイになりたい一心で出演されてました。
「私も恋がしたい!セックスがしたい!!」と涙目で絶叫されたときは、胸が痛くなりました。
障害者の女性も同じ叫びを抱えておられるのだろうな、と。
>>そこが人生のおもろいとこ、妙味というやつでんがな。
>弱者がもっと弱い立場の者をいたぶる構造は妙味というより、複雑な問題ですよ。
もちろん面白いというのは、興味深いという意味です。人間の「業の深さ」とでもいいましょうか。以前ご紹介した落語『心眼』
http://ginjo.fc2web.com/56singan/singan.htm
目が開きますようにと薬師さまに祈願するのですが、となりにいる優しい女房は実は観音さんじゃないのですかね。目が治るのも奇跡には違いないでしょうが。最後にはおのれの業の深さに気づくというのが「救い」ですね。
みゆきさんは「風俗」で働くようになったきっかけは、やむを得ないといえばやむを得ないのでしょうが、誰かから強制されたわけではないですね。デリヘルをやりだしたのは、店を持ちたい。それには手っ取りばやくお金になる仕事ということで「選んで」いるんではないでしょうか。でも、この仕事を通じて貴重な気づきがあったのですね。
彼女が「気持ちいい」と言ってもらって救われたときには、「女を買う側」の男も救われたのでは?と思ったり。
さて私に、「時給8000円から12000円」の仕事はなかなか廻ってこないですねえ。あ、法要があるか(笑)。土方仕事でも一日働いてそれぐらいですから。風俗の仕事でも、札束でビンタするお客もおればいたぶるお客もいる。同じように、日雇い仕事の現場でもプライドをずたずたにされることもありますからね。
>「自分は人間関係がうまくいかず、山谷(肉体労働、、、つまり仕事があるときは高賃金で自分を売れる仕事)があったから救われた」
これはわかりますよ。
私も人づきあいがダメですから、セールスなどの仕事だったら続かない自身はあります。
>「私も恋がしたい!セックスがしたい!!」と涙目で絶叫された
ある掲示板で、自分は容姿に問題があるからセックスはできないだろう、と書いている女性がいて、女性もそういう悩みをもっているのかと驚いたことがあります。
>妙味というやつでんがな。
ずっと以前、知り合いがふられて、その時に「鈴木大拙は思うようにいかないところに人生の妙味があると言っている」と慰めたら、気を悪くされました。(笑)
>みゆきさんは「風俗」で働くようになったきっかけ
ある風俗嬢、昼間は会社に勤めているが、お金がほしいのでフーゾクで働いているとありました。
みゆきさんと同じ動機の人は結構多いのでしょうか。
でも、スナックでバイトするのに比べて、フーゾクで働くのは飛び込むのにかなりのジャンプをしないといけないと私なんかは思うんですけどね。
いわば、自分で「安全な場所」として山谷を選んだんですから、他の人とは違ってちょっと余裕があるのでしょうね。で、寄せ場であってもホームレスであっても、また階層化があったりしますね。そしてお互いを牽制しあう。
この大山さん。学歴のない人からみたら「何でこんなとこへ来てるんだ?」と、大卒というものが逆にマイナス評価になってその視線にさらされる。それで山谷の人々にシビアな見方になるんでしょう。
>でも、スナックでバイトするのに比べて、フーゾクで働くのは飛び込むのにかなりのジャンプをしないといけないと私なんかは思うんですけどね。
四、五年前の「笑っていいとも」のゲスト、ミスター・チルドレンの桜井クンが、会場に来ている女性に「オミズの経験者」ってどれぐらいいらっしゃいますか?ということでボタンを押してもらったら、ものすごい数でした。
うーん。自分もバイトといえばまず飲食店がいちばんたくさんやりました。だから女性にとってもお酒の接待というのは身近なバイトなんでしょう。
で、朝日新聞の記者がルポした飛田遊郭の女性なんですが。ミナミで別の風俗をやったけど、飛田の家庭的な雰囲気が懐かしくてまた戻ってきた、、、とありました。
また。私が新宿で飲んでいた頃、SM嬢さんとピンサロ嬢さんが激しく口論していて。「私はアンタみたいに男のモノなんか咥えないよ!」と。いわれた方も黙ってはいません。「私はアンタみたいにヘンタイ野郎は相手にしてないよ!」とスゴイ切り返ししてはりました。
うーん。どこへジャンプするかはそれぞれの価値観によるんですかね。
> 障害者の女性も同じ叫びを抱えておられるのだろうな、と。
これも自己ツッコミですが。17のときに行ってた学校の軽音楽サークルで車椅子に乗った二人の女性がいて。「一度でいいから結婚というものをしてみたいのよね」としみじみつぶやかれたのが、いまだ耳の底にとどまっています。