「死刑囚表現展」のアンケートに「被害者の方のことを考えると廃止とは言い切れません」と書いている人がいます。
死刑制度に反対できない一番の理由は被害者感情だと思います。
自分の家族が殺されても死刑反対と言えるのかと問う人は多いです。
宮下洋一さんがインタビューした川上賢正弁護士はこう言っています。
家族が殺されても死刑反対と言えるのかと問われたことがあり、もし自分や家族が加害者になったらと想像してほしいと、私は答えました。
人間は縁によっては何をするかわからないからです。
平野啓一郎さんも同じことを聞かれるそうです。
犯人をゆるせないなら死刑を求めて当然だということにはならない。
「調和を目指す殺人被害者遺族の会」(事件に巻き込まれて家族を失いながらも、死刑に反対する家族の会)の中心メンバーとして活躍されているバッド・ウェルチさんはこのように語っています。(「死刑を止めよう」宗教者ネットワーク第10回死刑廃止セミナー講義録)
1995年、ティモシー・マクベイがオクラホマシティにある連邦ビルを爆破し、168人が亡くなった。
バド・ウェルチさんはこの事件で娘のジュリーさんを失った。
娘を失った後、酒を飲み過ぎて二日酔い、頭痛という生活が30日間続いた。
事件の6ヵ月後のアンケートでは、被害者家族の85%が死刑に賛成だった。
事件から6年2ヵ月後にマクベイの処刑が行われた時点で、2000人以上の犠牲者家族の50%は死刑反対になった。
当初は死刑を望みながら、次第に悩む人もいます。
小学1年の娘さんを殺された木下建一さんも同じことを言われています。
加害者は無期懲役が確定し、
あいりちゃんの「敵討ち」だと信じていたが、その言葉を口にするたびに重圧を感じていた。
差し戻し控訴審の判決後、「あいりに申し訳ない。死刑判決が必ず出されるものと思っていた」と語っている。
2011年、仮釈放中の男が2件の強盗殺人事件を起こした。
被害男性の姪は裁判で「被告に極刑を望みます」と断言したが、本音は違った。
宮下洋一さんのインタビューです。
宮下「望むのは終身刑ですか」
姪「そうですね。でも、今までに悪事を働いて出所してきた人って、実際はどうなんでしょうね。そりゃあ、ちゃんと善人になって帰ってきてほしいですけど。また同じことをするなら、終身刑で全うしてほしいという思いがあります」
加害者を「奴」と呼ぶ。
極刑と言ったけど、私はそれを望みませんわ。人が人を殺せるなんて、いくら悪いことをした人に対してもできないじゃないですか」
遺族の気持ちは揺らぐものですし、時間の経過とともに変化が生じるようです。