ポピュリズムの主張は、反権威、反知性、排外主義だと思います。
ネトウヨも同じです。
石戸諭さんは『ルポ百田尚樹現象』でこう述べます。
百田尚樹さんはこういう発言をしています。
発行部数が多い新聞が権威なら、朝刊発行部数は世界一である読売新聞こそ権威です。
読売新聞:6,874,345
朝日新聞:4,345,612
http://www.kokusyo.jp/abc%E9%83%A8%E6%95%B0%E6%A4%9C%E8%A8%BC/16935/
なのに読売新聞を攻撃しないのはなぜか。
それは百田尚樹さんの考える権威とはリベラル=サヨクだからだと思います。
石戸諭さんは、新しい教科書をつくる会についてこう説明します。
伊藤昌亮『ネット右派の歴史社会学』によると、サヨクとは左翼ではなく、リベラル市民主義のことだそうです。
60年代のカウンターカルチャーは反権威主義だが、反体制だった。
ところが現在は、ネット右派はリベラルが権威だとし、自分たちはマイノリティーであり、権威に立ち向かっていると考えている。
平和運動、基地問題、護憲、環境問題、反原発、移民・難民支援などの市民運動をする人たちを批判する。
どうして嫌いなのか。
朝日新聞に代表される権威に、エリート意識、特権意識、独善的正義感、上から目線の啓蒙主義、尊大な態度を見、大衆への軽蔑心を感じ取るから。
反体制的言辞をする人を反日と決めつけ、安倍政権に代表される自民党政権や右派に批判的な人を攻撃する。
山田晃(『虎ノ門ニュース』を制作するDHCテレビジョン社長)はこう言ってます。
なんでも朝日新聞が悪い、戦後教育が悪い、反日メディアが日本をおとしめていると非難、攻撃するのも単純さでは同じだと思います。
しかし、権威とは「他の者を服従させる威力」という意味です。
日本では天皇や皇室が一番の権威です。
大日本帝国憲法や教育勅語の復活、戦前回帰を狙う勢力は天皇という権威を錦の御旗にしています。
また、戦後ずっと自民党政権が続き、現在も自民党候補というだけで当選する人が大勢いるので、自民党も権威でしょう。
石原慎太郎、麻生太郎、安倍晋三、加瀬英明、竹田通泰といった右派政治家、右派文化人はエリートだし、しばしば上から目線的な発言をしますが、ネトウヨは彼らを攻撃しません。
ネトウヨは、マスコミは嘘ばかりと主張しても、産経新聞など右派メディアは別です。
永吉希久子「ネット右翼とは誰か」(『ネット右翼とは何か』)は、ネット右翼を特徴づける重要な要素として権威主義的態度をあげています。
松谷満「ネット右翼活動家の「リアル」な支持基盤」も同じ指摘をしています。
反権威といえば聞こえはいいですが、体制にすり寄り、従っているわけです。
フランシス・ベーコンの造語に「イドラ」があります。
事物の正しい認識を妨げる先入観や偏見のことで、ベーコンはイドラを4つあげます。
その一つが劇場イドラです。
有名な思想家や学者の説から生じた誤りで、権威や伝統を無批判に信じることから生じる偏見のことです。
親の言っていることや、権威のありそうな人が言っていることを信じ込んでしまうのがこれです。
政治批判をする人をどうして非難するのでしょうか。
白戸圭一『はじめてのニュース・リテラシー』にこうあります。
宮武外骨や陸羯南あちは自分たちが主宰する新聞が何度も発行停止されても、筆を折ることはありませんでした。
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