三日坊主日記

本を読んだり、映画を見たり、宗教を考えたり、死刑や厳罰化を危惧したり。

顕正会の功徳(2)

2023年12月06日 | 問題のある考え
「顕正新聞」にある総幹部会での活動報告によると、入信後に病気や家庭不和になった人もいます。

「顕正新聞」令和5年2月5日号
上原加代子さん
昭和60年、高校生の時に入信。
両親の素直な入信も叶う。
母は、父の借金でマイホームを失い、離婚になるも、一念信解の信心を貫き、競争率の高い県営住宅に当選する功徳を頂きました。
しかし、平成27年に父が臨終し、そして母は車椅子生活になる。
平成30年、母が心筋梗塞になり、退院後、施設に入所。
昨年3月ごろから認知症を発症し、10月に84歳で臨終。

吉岡法弘さん
孫の折伏、すでに入会していた母の後押しで、父が平成27年に創価学会から入会。
前立腺癌が早期に発見されたことで、身体に負担のないホルモン剤投与の治療で完治する大功徳を頂き、いつもニコニコしながら「有難い。有難い」と感謝を語っておりました。
しかし、徐々に認知症が進行し、脳梗塞を2度発症したことも相まって、ついには食事・排尿が自力では困難になり、施設への入所を検討せざるを得なくなり、自宅の近所にある特別養護老人ホームへの入所申請を令和3年の秋より始めた。
数ヶ所を同時申請しても2~3年は入所待ちと言われるほど順番待ちが多いところ、なんとわずか1ヶ月後に入所が決まり、御本尊様の御守護を強く実感いたしました。
2022年12月に臨終を迎えた。

「顕正新聞」令和5年4月5日号
秋山未来さん
母の縁で高校入学と同時に入信するも、高校生になってウツ病と診断される。
美容師になるが、ウツ病の再発と摂食障害で働けなくなる。
病院を受診すると、先天性脳機能障害・自閉症スペクトラムと診断される。
強い精神薬の副作用に苦しみ、自殺未遂をした。
その後、回復して順調に仕事ができるようになった。

長島毅さん
父は平成4年に顕正会に入信した。
株式経済アナリストで、「月刊宝島」の2008年度ベストアナリストランキング1位になった。
平成29年ごろ、家庭が経済的に逼迫する中、大学に合格したものの4年分の授業料が工面できなかった。
ところが、父が折伏に奮い立つと、どこからも買い手のつかなかった祖母の公団分譲住宅が高額で売却できたので、大学を卒業した。
御本尊様のお力を実感いたしました。
3年前、父は急性骨髄性白血病を発症し、一昨年末には医師から余命十日と宣告された。
(父は)最後に本部会館の御本尊様にお暇乞いの参詣を申し上げると、その日を境に体調がみるみる回復し、驚いたことに白血病が「完全寛解」する大功徳を頂きました。
本年3月、父は身体に変調をきたし、検査を受けると白血球の数値が減っていた。
4月7日、眠るように臨終を迎えた。

病気が治ったら信仰のおかげ、治らなくても信仰によって病気や死を受け入れることができたというわけです。
つまりは、どんな苦難も心の持ちようだということです。
これは顕正会だけでなく、創価学会もそうですし、多くの宗教が同じことを言っています。

宗教とは、「何でこんな目に」という不条理なことがあった時、物語によって不条理を受け入れる教えだと思います。
顕正会も災害、飢饉、伝染病、戦争などを、日蓮に背いた総罰という物語で説明しています。
もっとも、これは信じなければ日本が滅びると脅すわけですから、あまりいい物語ではないと思います。
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顕正会の功徳(1)

2023年12月02日 | 問題のある考え

「顕正新聞」に載っている信者の活動報告を読むと、創価学会から入会する人が多いようです。
創価学会を批判(国立戒壇建立の放棄など)するとともに、顕正会の功徳(病気平癒など)、そして臨終の相について語っています。

「顕正新聞」令和5年2月5日号
竹内千代子さん
学会からの入会。

不慮の事故で亡くなる学会員も多く、私自身も家庭不和・病気・経済苦等、悩みは尽きず、「学会はおかしい」と思いつつ、どうすることもできずにおりました。

小宮山夏実さん
創価学会から入会。
毎日のように怒鳴っていた上司が突然優しくなり、過去のイジメにより人との関わりが怖かったのが、自ら初対面の人とも会話ができるようになる初心の功徳を実感しては、顕正会の信心にはこんなにも功徳があるのかと驚きを禁じ得ませんでした。(略)
学会では聞いたことのない功徳の体験や臨終の証拠、そして広宣流布・国立戒壇建立こそ大聖人様の大願であることを知っては、自身もお役に立たせて頂きたいとの決意が衝き上げました。
臨終の証拠については後ほどご紹介します。

創価学会に入信したものの、本人や家族が病気に苦しめられたことが語られます。
「顕正新聞」令和5年6月5日
岸井あつ子さん
昨年9月、創価学会から入信。
母が昭和39年に学会に入信し、17歳のときに学会に入信。
結婚して子供に恵まれたが、10年後に夫は心臓のバイパス手術に成功したものの、その2年後に脳出血を発症して42歳で亡くなった。
母が子宮ガンで苦しみの中に59歳で亡くなった。
その7年後、熱心に学会活動に励んでいた妹が風邪のウイルスが脳に入り、全身の痛みに苦しみながら、発症から3、4日で37歳で亡くなった。
7年前には次男を白血病で亡くす。
長男が軽い脳梗塞になり、糖尿病で右足の壊疽を起こし、膝から下を失った。

森山末子さん
今年3月に創価学会から入会。
昭和35年に母と2人の姉が学会に入信した。
酒浸りの父が家出をし、働き詰めの母は次第に放埒に走り、姉妹は育児放棄され、貧しさで風呂にも入れず、学校で汚いといじめられた。
高校入学と同時に学会幹部の家に下宿したが、預けたお金を患部に使い込まれ、学会から離れた。
幸せを求めて天理教や真光を信仰したが、職場ではいじめに遭い、夫や子供にまで軽んじられた。
長女は知的障害を抱え、文字を読むのが難しい。
自殺を決意した日に折伏を受けた。

小八重節子さん
令和元年、創価学会から入会。
昭和42年、夫婦で創価学会に入信した。
学会に入信してから3人の兄弟が相次いで癌で亡くなり、5年前には息子が胃がんと診断され、53歳で苦しみながら亡くなった。
夫が3年前に肺気腫を発症し、最後に「学会はダメだ」と言い残して亡くなった。
今年3月、胃の調子が悪く、病院を受診すると、「胃がんの疑いがある」と診断された。
これは罰だと気づき、学会の本尊を返納し、池田大作の書籍などすべて処分した。
入院すると、胃がんではないとわかった。
内視鏡の簡単な手術で済んだことに御本尊様の御守護を実感し、有難さがこみ上げました。

病気が治った人です。
「顕正新聞」令和5年6月5日
岡村礼子さん
本年3月に入信。
実家は代々日蓮正宗。
御遺命に背いた宗門に身を置いていた罰なのか、私は学生時代にいじめられたことで不登校になり、就職してからも仕事上での人間関係が上手くいかず、32歳でうつ病と診断されました。
夫と結婚したものの、うつ病はさらに悪化し、食事もとれない状態になってしまい、体重が20キロも落ち、生きていることがつらく思え、自殺をはかった。
昨年からは糖尿病を発症し、そのうえ本年2月からリウマチによる激痛にも悩まされるようになり、薬を大量に服用していた。
広告文の配布で訪れた会員に「私のリウマチは治りますか」と尋ねると、「治りますよ。顕正会員でリウマチや重病が不思議と治ってしまう方が多くいます」と答えてくれた。
部屋に戻ると、夫が7年前に顕正会に入信していたことを打ち明けた。
その後、夫婦そろって毎日朝夕の勤行を欠かさず行うようになり、リモートで語り合い等にも参加する中で、入信して一週間でリウマチの痛みが全くなくなった。
数日後、病院で採血検査を行うと、リウマチの炎症数値が劇的に下がっていただけでなく、糖尿病の数値までもが正常値に下がっていた。

もちろん信者でも病気になる人はいるし、亡くなる人もいます。
これは確証バイアスだと思います。
自分の都合のいい証拠ばかりを集め、自分が間違っているかもしれない証拠は無視する。
トランプが何を言おうが、何をしようが、トランプ支持者は都合よく解釈し、トランプに従います。
似ているなと思います。

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顕正会の終末論(2)

2023年11月23日 | 問題のある考え

「顕正新聞」には総幹部会での信者の発表も掲載されています。
皆さん、言葉も文体も似かよっていて、「大安楽」「大利益」「大確信」などというように、「大」が多用されています。

何人かの方の発表から引用します。
末次由美さん

正月勤行において先生は
「まもなく超インフレと食糧危機、さらに巨大地震、他国侵逼が必ず日本を襲う。そのとき全日本人は、始めて政治家たちの無力・無責任に気づくに違いない。そして「お救い下さるは日蓮大聖人ただ御一人であられる」と知り奉る」
と烈々と叫ばれました。この時はもう来ていると大歓喜が衝き上げました。


梅田敦子さん

「もし台湾侵攻が開始されれば、日本の尖閣諸島や先島諸島は同時に戦場となる。さらに米軍の航空基地がある沖縄の嘉手納、三沢・横田・岩国等の基地も先制攻撃を受けると思われる」
と先生より伺っては、じっとしていられない思いになりました。


永石正伸さん

仏法は完璧なる法則の上に成り立っていることを改めて実感しては、今の日本に起こる「総罰」が重なり、いよいよ三災七難はこれからなのだと覚悟を堅め直しました。


三災七難とは、正法に背き、また正法を受持する者を迫害することによって起こる災害のことで、飢饉、他国の侵略、内乱、伝染病の流行、風水害、干ばつなどのことだそうです。

日本が滅ぶという日蓮の警告は何年間有効なのでしょうか。
日蓮は1282年に亡くなっていますから、没後約740年もたっています。
それなのに、いまだに国立戒壇は建立されていません。
日本が滅びるならもっと早く滅びてもおかしくないと思うのですが、今のところまだ滅びていません。

日蓮は「日本国の大疫病と、大飢渇と、どしうちと、他国より責めらるゝは総罰なり」と書いている草ですが、伝染病の流行、飢饉、内乱、侵略は、今も昔も世界中で起きています。

大疫病
ペストや天然痘などで多くの人が亡くなっています。
1347年~1351年にはペストで2億人が死亡しているそうです。
日本では安政5年にコレラによって20数万人が死亡しています。

大飢渇
鎌倉時代では最大と言われる寛喜の飢饉では3分の1が死んだそうです。
1230年から1231年に起きていますから、日蓮が8歳から9歳のことです。

どしうち
南北朝の争い、戦国時代、戊辰戦争など、日本国内で何度も内戦が起きています。

他国より責めらるゝ
第二次世界大戦では約300万人が死亡しています。
空襲で死亡した民間人は41万人以上だそうです。

現在、世界では、結核で死亡する人は年に約100万人、マラリアで死亡する人は年に約60万人です。
飢えで苦しむ人は約8億人。
シリア、イエメン、スーダンなど内戦が続いている国はたくさんあります。

世界はこうした状況なのに、「大歓喜」するものでしょうか。
少しでも世界がよくなることを願うものだと思うのですが。
なんだか終末を待望するキリスト教徒みたいです。

そもそも国立戒壇が建立されることはかなり難しいでしょう。
国が宗教に支出するのは憲法違反なので、まず憲法第20条と第89条を改正する必要があります。
さらに、顕正会を国教にしないといけません。

もしもそうなったら、世界から白い目で見られると思います。
日本は信教の自由がない日蓮原理主義の国になるわけですから。

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顕正会の終末論(1)

2023年11月19日 | 問題のある考え

知人の住むマンションに入ろうとしたら、新聞をたくさん持った男女3人が出るところで、私に新聞をくれました。
見ると「顕正新聞」でした。

顕正会は「日蓮大聖人に帰依しなければ日本は亡ぶ」、「早く国立戒壇を建立すべし」と説いています。
国立戒壇とは、日本が国家として建立する本門の戒壇です。

「顕正新聞」を読み、顕正会も終末を説いていることを知りました。
「顕正新聞」(令和5年6月5日号)「阿部日顕の臨終」特集号にある浅井昭衞さんのお話の中にこうあります。

もし日本の人々が、いつまでも日蓮大聖人の大恩徳を知らず、背き続けるならば、自身の成仏が叶わぬだけではない、日本が亡びる。

https://kenshoshimbun.com/issue/230605_depraved.html

「顕正新聞」(令和5年2月5日号)、一月度総幹部会での浅井昭衞さんの講演から引用します。

日本はいま戦後78年において最大の危機に直面しております。
そのゆえは、「悪の枢軸」といわれる共産主義・軍事独裁国家たる中国・ロシア・北朝鮮の三国に、この日本が包囲されてしまったからです。


出世本懐成就御書には次のようにある。

日本国の大疫病と、大飢渇と、どしうちと、他国より責めらるゝは総罰なり。


日蓮在世での「総罰」がいかに凄まじかったか。
正嘉2年・3年の大疫病と大飢饉では「死を招くの輩既に大半を超え」と『立正安国論』に書かれている。
そして、建治から弘安にかけての大疫病と飢渇はさらに激しかった。

「どしうち」とは、北条一門で内乱が起きたこと。
「他国より責めらるゝ」とは大蒙古による侵略。

なぜこのような総罰が起きたのか。

それは当時の日本国が、邪法の悪僧どもに唆されて、大慈大悲の御本仏日蓮大聖人を悪口罵言し、流罪に処し、ついには御頸を刎ね奉るという大逆罪を犯したゆえに、諸天がこの国を罰したのであります。


いま、再び「総罰」が現れつつあるを感じている。
「大疫病」は、コロナの大流行。
「大飢渇」は、地球温暖化に伴う異常気象で世界各地で大飢饉が起きている。
さらにロシア・ウクライナ戦争で食糧の輸出が停止された。
これまで食糧輸出国であった20数ヶ国が輸出制限にふみ切っている。
インフレと食糧危機がいま世界を覆いつつある。
「どしうち」とは、日本の中で内乱が起こること。
日本は親米派と親中派が激突して必ず争乱が起こる。
「他国より責めらるゝ」とは、日本は核兵器を保有し、かつ侵略的な中国・ロシア・北朝鮮の三国に包囲されている。

「王舎城事」には

今生に法華経の敵となりし人をば、梵天・帝釈・日月・四天罰し給いて、皆人に見懲りさせ給えと申しつけて候。

蒙古襲来の大罰は、大聖人様が諸天に申しつけてなさしめ給うた。

やがて中国をはじめとする三国の侵略が始まるとき、日本国の一切衆生は、国亡び命を失う恐怖から、始めて
「日蓮によりて日本国の有無はあるべし」
との大聖人様の絶大威徳と大慈大悲にめざめ、一同、頭を地につけ掌を合わせて
「助け給え、南無日蓮大聖人」「南無妙法蓮華経・南無妙法蓮華経」
と必ず唱えるに至る。

https://kenshoshimbun.com/issue/230205_crisis.html

「顕正新聞」(令和5年4月5日)、三月度総幹部会での浅井昭衞さんの講演からです。

日蓮大聖人を信じ奉るか、背くかによって、日本国の有無も、人類の存亡も決する――ということです。


台湾侵攻こそ第三次世界大戦の発火点である。
アメリカも中国との対決姿勢を一段と強める。
アメリカの尖兵的役割を担わされる日本を中国は憎み、血祭りに上げる。

これ日本が、御本仏日蓮大聖人に背き続けた罰であります。

https://kenshoshimbun.com/issue/230405_renewal.html

キリスト教が説く終末では、選ばれた人たちは天国へ生まれますから、信者にとって終末は希望です。
しかし顕正会は、日蓮に帰依しなければ日本が滅びると説きます。
顕正会の信者だけが救われるというわけではありません。

この終末論は日本中心史観というか、世界が目に入っていないように感じます。
日蓮にとって世界とは日本、朝鮮、中国ぐらいで、地球全体という視点はありません。
世界と無関係に日本が存在しているわけではないのですが。

それにしても、日本人全員が顕正会の信者になり、国立戒壇が建立されれば、中国は台湾を攻撃せず、北朝鮮は核兵器を廃棄、ロシアとウクライナは即時和平、地球温暖化は解消、飢餓はなくなる、新型コロナウイルスは消滅するというのでしょうか。

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エビデンス

2023年08月05日 | 問題のある考え

音楽療法とは音楽を聴いたり演奏したりしたら症状が軽減されるとか、そういったものだと思ってましたが、佐藤正之『音楽療法はどれだけ有効か』によると全然違います。

エビデンスとは何か。
明白に証明された証拠で、他の人もあとで形跡を追えるものを意味する。
追試が可能、すなわち客観性と普遍性をもつ証拠。

ある研究がエビデンスとみなされるための最低条件は、専門家による査読を経た論文として国際誌に公表されること。
しかし、それでエビデンスとして確立したことにはならない。

ある研究によると、100件のシステマティック・レビューのうち、23件が2年以内に覆される。
システマティック・レビューとは、単なる過去の報告の羅列とは異なり、それぞれの報告の質的評価と統計解剖を行うもの。
現在行われている医療行為で、エビデンスが確立しているのは約20%にすぎない。

メロディック・イントネーション・セラピー(MIT)は失語症患者の発話改善に有効性が確認されている。
ところが、MIT日本語版は方法が文面で説明しにくい。

実際に行なっている施設で習うのが本来だが、自分のわかる範囲で適当にやろうと考える人がいる。
こうした人は、自分の方法と原法のどこがどのように異なるかを把握していない。
中には、自分の手法で効果がなかったことから、「MITは○○には無効」と発表したりし、MITに対する誤ったイメージを患者、家族、医療者に与えてしまう。

ボストンの病院の救急医である大内啓さんが、新型コロナウイルスの流行が始まった2020年2~3月ころの病院を『医療現場は地獄の戦場だった!』で書いています。

2020年5月、トランプ大統領が「ヒドロキシクロロキンを多くの医療従事者が服用している。私も一週間半前から服用している」と口にし、大混乱を招いた。
ヒドロキシクロロキンは抗マラリア薬である。
これより前、トランプ大統領はおそらく思いつきで、もう一種の抗マラリア薬とともに新型コロナウイルスの治療に有効だと主張し、米食品医薬品局にコロナ感染者への使用を承認させた。
6月、抗マラリア薬の使用許可が撤回された。

吉村洋文大阪府知事が「ポピドンヨードの含まれたうがい薬を使うことで、重症化を抑制できる可能性がある」と発表して非難された。
これらは科学を軽視し、科学と対立する発言だったと、大内啓さんは批判します。

トランプはコロナの治療として消毒剤を注射するのはどうだと言ってますから、
この2人の発言は思いつきなんでしょうが、金儲けがからんでいるかもしれません。

佐藤正之さんは以前勤めていたホスピスでの出来事を書いています。
60代の男性は診察を受けた時、すでに末期ガンで余命半年と診断され、ホスピスに入った。
この男性は週に1回仕事で出かける。
ある時、嘘を言っていたと告白した。

〝どんな癌でも必ず治る〟と標榜するマッサージの施療院を友人から紹介されたので行ってみると、病気の経過や診断を聞いたあと、その施療士は「私のマッサージを受ければ、必ず癌は治ります」と言った。
入会金が200万円、週1回30分のマッサージが1回7万円。
「3か月続ければ、必ず癌はよくなる」とのことだった。

3か月が経ったが一向によくならないどころか、悪化したと感じて、施療士に「3か月経ちましたが、さらに悪くなった気がするのですが」と質問すると、施療士は「今、3か月間の効果が蓄積され、まさによくなろうとしているところだ。もう3か月すれば必ずよくなる」と答えた。

しかし、容態はさらに悪化し、ふたたび「あれから3か月が経ちましたが、とてもよくなっているとは思えないのです」と質問したら、施療士は「もう半年続ければきっとよくなる」と答えた。
それが昨日のことで、どうしたらいいかという相談だった。

そして、小指くらいの太さで高さ数センチの入れ物に、茶色の液体が半分くらい入ったものを取り出した。
施療士から毎食後に飲むように言われた〝体調をよくする水〟で、1本3000円する。
この施療院に合計500万円ほどつぎこんだと言う。
男性はこの会話の1週間後に亡くなった。

亡くなる一週間前のひとに〝あと半年続けたら〟という、見え透いて現実離れしたことを平気で口にする・・・。残念ながらひとの不幸を、なかには死に至る病を、ビジネスチャンスとしかみなさない輩が世の中にはいるのです。

絵門ゆう子さんをだました「先生」たちは全国あちこちにいるわけです。

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アラン・レヴィノヴィッツ『さらば健康食神話』(2)

2023年03月22日 | 問題のある考え

アラン・レヴィノヴィッツは『さらば健康食神話』で、食べ物について広く信じられているニセ科学によって作られる病気を「集団社会性疾患」と名づけています。
ネットで検索しても出てこない言葉ですが、病気になると思い込んで心身が過剰に反応する、一種の集団ヒステリーということだと思います。

現代アメリカの食についての論説では、「自然」か「人工」、「良い」か「悪い」、「自然食品」か「加工食品」という二元論で判断する。
現代文明は邪悪であり、原始人は自然の中で生活していた。

農薬、化学肥料、化学調味料、添加物など化学物質は危険とされるわけです。
しかし、昔の生活が健康的だったわけではないし、病気にかからなかったわけでもありません。

砂糖や塩、脂肪の摂取量についても、ちょっとでもたくさん摂取したら病気になるというような極論を、アラン・レヴィノヴィッツは批判しています。

化学肥料や農薬によって野菜の生産量が増え、飢える人が減りました。
ワクチンによって多くの病気の感染者が少なくなりました。
インチキ健康食・健康法の信奉者、健康が至上の価値となっている健康至上主義(健康病)は反ワクチンになりがちだと思います。
左巻健男『陰謀論とニセ科学』からです。

デンバー大学のジェニファー・ライヒはワクチンを拒否する母親たちを調査研究し、その姿勢を次のようにまとめている。

私が調査した母親たちは、ワクチンが不要になると考えられる方法で子供たちの健康を守る努力をしていると説明しています。オーガニックフード、母乳、家での健康を増進する実践。

いい食べ物で免疫力を上げようということでしょうが、ワクチンは不要だ、毒だということになると極論です。

そこにつけこんで、ニセ科学によって金儲けする人がいます。
どういう手口か。

まず、病気の原因をやり玉に挙げる(グルテンやグルタミン酸ナトリウム)。
そして、背後に存在する巨悪の陰謀を暴く(政府、主流医療の医師、御用学者は、食品業界や製薬会社らから資金提供を受けている)。
そうして、巨悪を攻撃する高潔な研究者や医師を持ち上げる。

しかし、彼らは健康法、ダイエット食品、代替療法などで儲けるわけです。
だましのテクニックの一つは人間の弱みをつくことです。

ロバート・B・チャルディーニ『影響力の正体』にある、人に影響力を与える6つのルールが参考になります。

・比較のルール
買い物の際によりどころにしているのが「高いもの=いいもの」「安かろう悪かろう」ということで、値段が高いといいものだと思いがちである。
これは費用対効果、すなわち金額と品物の質や効果が正比例すると考えるわけです。

絵門ゆう子さんは、がん患者は「値段が高いから良い結果が出るかもしれない」という思考回路があると、『がんと一緒にゆっくりと』に書いています。
グルデンフリー食品は通常のものより2倍以上の値段がします。

・整合性のルール
人は自分が決めたことは正しいという態度を取る。
競馬で、金を賭ける30秒前までは自信がなく迷うが、賭けた30秒後には自信満々になる。
なぜなら、自分は正しい選択をしたと思い込むから。

間違いや失敗しても認めない。
ダメ男となかなか離婚できない、戦争に負けそうでもずるずる続ける、騙されたことを認めないなど。
自分がしたことと矛盾しないようにしたい思いがあるから、つじつま合わせをする。

絵門ゆう子さんは西洋医学を拒否したために、今さら病院には行けないと思います。
一時的に悪くなるという好転反応という言葉もつじつま合わせです。
化学調味料で体調を崩したと信じている人は、心理的なものだと言われると反発します。

世界の終末の予言が何度はずれても、エホバの証人の信者は脱会しません。
法の華三法行やオウム真理教の教祖が逮捕されても、信者は活動を再開しています。

ケチくさいと思われたくない気持ちが人にはあるので、最初は小さな要求から始めて、だんだんと大きな要求をする。
宗教だと、年会費1万円にして、最初は安い、良心的だと思わせ、だんだんと神殿を新築する、大祭があるなどと言っては献金させます。

・社会的な証拠へのルール
みんなが買う人気商品は、さほどほしくなくても行列しても買ってしまう。
ある考えを正しいと思う人が多ければ、その考えは正しいと思う。
ある行為をしている人が多いほど正しいと考える。

テレビやベストセラーで語られることは本当だと思いがちです。
グルデンや化学調味料の害を説く本を読むと、体調がよくない気がしてくるわけです。

ネットは島宇宙だと言われますが、私も自分と同じ考えのものしか見ないので、みんなが私と同じ考えなんだと思います。
しかし、そんなことはありません。

絵門ゆう子さんは西洋医学を否定するガン仲間と親しくなり、さらに民間療法にはまってしまいます。
陰謀論を信じる人も島宇宙で自足しているのでしょう。

・好意のルール
知人や好きな人から何かを頼まれたら、たいていはイエスという。
マルチ商法がそうで、知人から勧められると、つき合いで買ってしまいます。
絵門ゆう子さんは草の根療法や気功の「先生」を訪れたのは、それぞれ違う知人の紹介によってです。

・権威のルール
肩書き・・・大学教授、医者、上司
服装・・・高級そうなスーツ、警備員の制服
装飾品・・・高級車、宝石

反ワクチンの主張する人の中には医学部教授、医師、弁護士などもいます。
そうした医師の中にはアヤシそうな代替療法を行う人もいます。

有名人がある商品を愛用していると売上げが伸びる。
絵門ゆう子さんはタレントであり、著書もあります。

気功先生のところに初めて行った時のことを、「凜とした空気が流れていて、埃一つない。袴を身につけた先生は、修行僧のように引き締まった雰囲気を漂わせていた。お香が焚かれた部屋で掌を通して気を入れる」と書いています。

・希少性のルール
あなたにだけ特別情報を教える。
モルモン教の教会には特別の区画があり、特に認められた信者だけが入ることができる。
特別開帳みたいなもんでしょうか。。

絵門ゆう子さんはアメリカ製のマイクロ波の器具による治療します。
医師は「日本でこの機械を持っているのは私だけだから」と自慢げに目を細めた。

数量限定の高級時計や車は高くてもすぐに売れます。
メーカーのほうも限られた人にしか売らないそうです。

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アラン・レヴィノヴィッツ『さらば健康食神話』(1)

2023年03月14日 | 問題のある考え

アラン・レヴィノヴィッツ『さらば健康食神話 フードファディズムの罠』の原題は「The Gluten Lie(グルテンの嘘)」です。
副題のフードファディズムの意味がわからないのでネットで調べました。

食品や栄養が、健康や病気に与える影響を過大に評価したり信じたりすること。ファディズムとは、英語で「流行かぶれ」という意味。たとえばテレビや書籍が発信した「〇〇を食べると痩せる」という情報を信じ、その食品を過剰摂取するというような、偏った食生活を続けることを指す。(略)
過去に多くの人がフードファディズムに翻弄された例として、以下のような食品がある。
「これを食べると痩せる」とされた食品:寒天、納豆、バナナ
「これを飲むと体に悪い」とされた食品:牛乳
「これを飲むと体に良い」とされた食品:水素水

https://ideasforgood.jp/glossary/food-faddism/

水素水については左巻健男『陰謀論とニセ科学』に書かれています。
ニセ科学的な水ビジネス商品として水素水以外に、アルカリイオン水、πウォーター、磁化水、創生水、酸素水、シリカ水、電子水、酵素ジュース、波動共鳴水などがあげられています。
いずれももっともらしい名称ですが、イオンや波動などはインチキ商品によく使われる言葉です。

『さらば健康食神話』は、まずグルテンやグルタミン酸ソーダは危険だという嘘について書かれています。
グルテンとは何か知らなかったですが、小麦粉に水を加えてこねることでできる成分のことだそうです。
グルテンを含まない製品がグルテンフリー。

アメリカ人はウイリアム・デイビス『小麦はたべるな』とデイビッド・パールマター『「いつものパン」があなたを殺す』の2冊によってグルテンを恐れるようになった。
グルテンはごくわずかな量でも依存と肥満を呼び、脳を傷つける。
そして、グルテンを含む小麦は、ADHD、アルツハイマー病、関節炎、自閉症、がん、心臓病、肥満、統合失調症などの病気を引き起こすか症状を悪化させる。

人間は何千年も前からパンや麺類などの小麦製品を食べてきたわけです。
なのに、こんな脅しを大勢が信じているのですから不思議です。

グルテンによってセリアック病やグルテン過敏症になる人はいます。
しかし、多くは思い込み。

グルテンフリー食品は普通の食品よりも平均で242%高価だ。
グルテンフリー食品市場は約40億ドル規模まで成長し、2019年には70億ドル近くに達するだろうと予想されている。
グルテンフリーのドッグフードまである。

かつてグルタミン酸ナトリウムは、現在のグルテンのようなスケープゴートだった。
中華料理を食べると体調が悪くなると言う人が現れたのが1968年。
化学調味料がひどい偏頭痛、過敏性大腸症候群、胃もたれ、関節痛、冷や汗、乳幼児の急な腹痛などの原因とされた。

メディアは「中華料理でおかしくなる? 一番疑わしいのはグルタミン酸ナトリウム」といった誇張した見出しを使った。
グルタミン酸ナトリウムは食の大物悪役に変身した。

1988年、シュワルツ博士は著書で、化学調味料はADHD、エイズ、筋萎縮症、アルツハイマー病、喘息、がん、下痢、ウツ病、胃食道逆流症、ハンチントン氏病、高血圧、肥満、パーキンソン病、月経前症候群の原因だと書いた。
8年後、プレイロック医師が出した本には、病気のリストに自閉症が加えられている。
シュワルツ博士はその本の序文で親たちに、子供に毒を与えるのはやめましょうと呼びかけた。

現在では、アレルギーの専門家はグルタミン酸ナトリウムへの反応のほとんどは心理的なもので、身体的なものではないと考えている。
しかし、今も化学調味料過敏症の神話は生き続けている。

2014年、健康情報のサイトに掲載された「グルタミン酸ナトリウムは誤解されている?」という記事に対するコメント。

「なんという無神経な記事でしょう。私は化学調味料を摂取した時に苦しい思いをし、それに苦しんでいる当事者です。ひどい頭痛を起こし何時間も気分が悪くなります。私にとってこれはいつものことで再現可能なことです。何が引き金になってこの偏頭痛が起こるか発見するまでに何年もかかりました。私の症状が心理的なものだとする記事を読むのはとても腹立たしいです」

「これはまるで悪魔が良い奴だと言ってるようなものです。息子のお誕生日祝いに中華料理屋に行って食事をしたあと店を出ると、息子がすっかりおかしくなって、バックミラーを壊してしまいました。化学調味料に慣れることなどできません」


気分が悪くなったり頭痛やめまいが、薬や食べ物ではなく、本や記事によって起こっている。
歪曲された情報やまったくの嘘に繰り返し触れることで、さらに症状が悪化している可能性がある。

アラン・レヴィノヴィッツはこう書いています。

毎日、毎食、口にしている食品は、神秘の秘薬でもなければ、死をもたらす毒薬でもない。お腹まわりが太くなったり、心臓発作が増えたりする原因は、何を食べる(食べない)かよりも、いかに食べるか(その量)なのだ。

いろんなものをバランスよく、ほどほどの量を食べ、適度な運動をするのが一番というのが結論でした。

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民間療法と健康器具・食品のアヤシさ(4)

2023年03月06日 | 問題のある考え

絵門ゆう子さんがガンの宣告を受けたのが2000年10月、聖路加病院に行ったのが2002年12月、『がんと一緒にゆっくりと』を出版したのが2003年5月、死亡が2006年4月。

『がんと一緒にゆっくりと』を書いたころには冷静に振り返っているように思われます。
批判的なことを書いています。

民間療法で良くなっている人たちは、基本的に病院に行きたがらない人たちである。
本人は「治ったみたい」と思ってしまうし、周りもそのように言う。

そのような状態の患者は、療法を売ろうとする人たちにとって、大いに利用できる存在なのである。彼らの体験を出回らせるのだ。そして、良い結果が出たのは、その療法が素晴らしいからであり、患者が一生懸命信じて迷わず行ったからだと言い、その患者のことを「えらかった」と称え、患者はそう言われて喜ぶ。


そして、このように述懐します。

巷で良いと言われていることを全てやった挙げ句に全身に転移させ、甘く見ることの怖さを思い知った。


ところが、なぜか民間療法を否定しないのです。

私は、放り出された。しかしそれでも、民間療法の持つ可能性を否定したいとは思わない。なぜなら、がん患者にとってそれは大きな希望だからだ。


入院中には、入院直前に教わった西式健康法の一つである裸療法をしたそうです。
服を脱いだり着たりすることで、毛穴から毒素が出て皮膚呼吸を促進させ血行を良くし、免疫力を上げていくというもの。

ウィキペディアによると、西式健康法は、生野菜食を中心に摂取し、暖衣飽食を退け、断食、生食療法などをします。
毒素を排出して免疫力を高める健康法のようです。
これまたデトックスです。

民間療法は大した効果はないわけですから、希望ではなくて気休めにすぎないと思います。
散々な目に遭ったのに、まだこんなものを信じているのかとタメイキが出ます。

盲学校で鍼灸を教えていた人に東洋医学について話を聞いたことがありますが、がんやインフルエンザなどは東洋医学では治らないと言われてました。
どんな病気にも効く万能の薬や治療法はありません。
簡単に「治る」と断言する人は信用しないほうがいいようです。

絵門ゆう子さんは「占いや霊能力関係が大好きである」と書いています。
西洋医学を拒否したのは母親のガンや、出会った医師との関係がうまくいかなかったこともあるかもしれませんが、そもそも疑似科学のようなアヤシいものが好きなのでしょう。

絵門ゆう子さんが行なった民間療法と健康器具・食品は人の弱みにつけ込む悪質な詐欺だと思います。
糖尿病なのに代替療法の「先生」の言うがままにインシュリン投与をせずに死んだ人もいます。
医者ではない「先生」が医療行為をするのは法に触れています。
絵門ゆう子さんはMRI検査で骨転移が疑われた時、栄養が足りないからだとか、MRIで心臓が悪くなったんだと言われましたが、医者でもない人間がそんなことを言っていいものかと思います。

それなのに、絵門ゆう子さんはがん患者仲間に草の粉療法などを紹介しているのです。
これは、だまされてカルトに入信した人が、今度はだます側になって勧誘を行う、つまり被害者が加害者になって新たな被害者を生むのと同じ構図です。

絵門ゆう子さんが民間療法、健康器具・食品にはまったことは個人の自由だとは言えないように思います。
だからといって、無理矢理に手術を受けさせることはできません。
これまた難しい問題です。

もしも絵門ゆう子さんが最初の医者の言葉に従って手術と抗がん剤治療をしていればどうなっていただろうと思います。

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民間療法と健康器具・食品のアヤシさ(3)

2023年02月27日 | 問題のある考え

絵門ゆう子さんが草の粉療法をしているころ、気功の「先生」を紹介してもらった。
『がんと一緒にゆっくりと』によると、特殊な能力を元に、整体のような気功のような治療を行う。
「先生」は、がんは「8回でカタがつく」と言った。
そして、草の粉療法を絶賛した。

そのころ、あるクリニックを訪れた。
Oリングテストによって、その人に合う健康食品を勧める。
Οリングテストとは、親指と他の指でΟの字になるように輪を作り、患者は輪が開かないように力を入れ、テストをする人は両手で輪を開こうとする。
それによって、がんの状態やどの健康食品が合うかなどを判定する。
そのクリニックで、がん細胞が活動しなくなるというマイクロ波の治療を受けた。

言うまでもなく、Οリングテストは疑似科学ですし、マイクロ波の機械は医療器具として認められているものではありません。

がんの告知から9か月後、スポーツクラブで叫び声を上げるほどの痛みが首を走った。
そのクラブに詰めているカイロプラクティックの先生に紹介してもらい、3回治療を受けたが、痛みはひどくなった。
後日、聖路加病院に入院した時、首の3か所で骨が折れていることがわかったが、この治療によって折れた可能性が高い。

カイロプラクティックの先生からレントゲンを受けるように言われた。
MRIで調べると、医師はがんの骨転移である可能性が高いと言った。
しかし、絵門ゆう子さんは聞き入れなかった。

マイクロ波治療後のOリングテストで「もうがんの波動はなくなった」と言った医者に相談すると、「それは骨転移かもしれないよ」と言われた。
草の粉療法の先生は「首は転移なんかじゃありませんよ。栄養が不足してなっているんです」と言い、毎日チーズをたくさん食べ、卵を1日に少なくとも3個は食べるようにと言われ、無理して食べ続けた。
しかし、首の痛みはひどくなるばかりだった。

自分が信じようとしているやり方に対する苦言だけは聞きたくないのだ。だから、ただただ耐えた。


「人間は自分が信じたいことを喜んで信じるものだ」はカエサルの『ガリア戦記』にある言葉だそうです。
逆に言うと、自分が信じたくないことは耳に入りません。

気功の先生は「悪くなっているのは心臓だ。あなたが受けたMRIの検査のせいだ。MRIは強烈な磁気の波動だから、それを、あなたのような影響を受けやすい体質の人が受けると、心臓が変になるんですよ」と責めた。
さらに、「あなたがMRIを受けた邪気のために、私の体はね、あなたの治療をする度に具合が悪くなるんですよ」と言う。

私はね、自分の体のエネルギーを使って治療してるんですよ。体を張ってるんだ。このままじゃあなたの持ってくる邪気のために、私の体が使い物にならなくなってしまう。だいたいね、今は3万円なんていう値段でやっているけど、ちょっと前までは、入会金を250万円、一回の施術料は30万円いただいていたんですからね。3万円なんかで体をボロボロにされたんじゃ合わないんですよ!


草の粉療法は4か月で50万円くらい。
気功の施術は1回40分で3万円を数十回。
ということは、絵門ゆう子さんは気功に百万円ぐらい支払ったわけです。
1回30万円だと1千万円。

スピリチュアルや民間療法、健康器具など疑似科学では波動という言葉をよく見かけます。
すべての物質が出している未知のエネルギーという意味で使われているようです。
ウィキペディアの「波動 (オカルト)」によると、物理学での波動はwave(波)の訳語ですが、オカルトや代替医療における波動はVibrationの訳です。
「振動」と翻訳すべきところを「波動」や「エネルギー」と訳すことで、物理学の裏づけがあるように思わせているわけですが、科学的な根拠はありません。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B3%A2%E5%8B%95_(%E3%82%AA%E3%82%AB%E3%83%AB%E3%83%88)
ちなみに、気功も波動だそうです。

気功の「先生」にそこまでボロクソに言われても、絵門ゆう子さんはなぜ通い続けたのでしょうか。

なぜ通い続けることになったのか。それは、施術の度に西洋医学を糾弾する言葉巧みな彼の話に感化されていったのと、症状が安定している時も「この施術の効果かもしれない。やめて急に悪くなったらどうしよう」と、やめることが怖くなっていたからでもある。


痛みに耐えきれず、2002年12月26日、聖路加病院に行く。
「がんなんて簡単ですよ。すぐに治りますよ」と安易に言った民間療法の「先生」たちと違い、聖路加病院の先生たちは決して「治る」という言葉は使わない。

しかし、絵門ゆう子さんは民間療法の「先生」たちの呪縛から解き放たれたわけではありません。
病院に行かず、玄米菜食、自然療法だけで乳がんを治そうとしている女性の考え。

がんには「私のところに来てくれてありがとう」って感謝すればいいの。私は最初からそうしてきた。がんは、心の持ち方とかいろいろその人の悪かった点を教えてくれるありがたいものなのよ。そういう声に耳を傾ければ、必ず治る。


聖路加病院に入院する前日、その女性は「病院になんて行って、水を肺から抜いたりいたらダメになるわよ。原点に戻って、きっちり玄米を炊く生活をしてやり直した方がいいと思う」と言った。
草の根療法の「先生」が玄米菜食を否定しても、絵門ゆう子さんは玄米菜食への愛着があったようです。

その女性の言葉はその後、何度も頭の中で反響した。
助言に従わないことに罪悪感を感じる。
肺の水を抜いた後も、心は揺れていた。
不安が頭をもたげ、「ほんとうにこれでよかったのか」と葛藤する。
針生検をしたが、針によってがんが刺激され悪化する、怖いものという思いがあった。
間違った知識や情報、極端な思い込みでがんじがらめになっていた。
一度刷りこまれた「怖い」という思いからすぐに解放されるものではない。
行きつ戻りつ考え方が変わっていく疑心暗鬼の状態に陥った。
これは一種の洗脳です。

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民間療法と健康器具・食品のアヤシさ(2)

2023年02月20日 | 問題のある考え

乳がんになった絵門ゆう子さんの民間療法と健康器具・食品体験記である『がんと一緒にゆっくりと』を読むと驚くことばかりです。

がんに良いというものに対して、湯水のごとく使うようになった。
買ったグッズの中で最も高価だったのは100万円の布団。
宇宙エネルギーを取り込むことができるという触れ込みだった。
宇宙エネルギーとは何か、それが布団を通してどう体に取り込まれるのかを勧めてくれた女性に質問した。
すると、「詳しいことは私も難しくてよく分からないの。だからセミナーに行ってみて」と誘われ、布団を販売している会社のセミナーに行った。
開発者の講演、体験者のスピーチ、ビデオ上映が行われた。
布団のパワーについての開発者の講演は、素人には分からない専門用語が多用され、結局「すごいものだ」としか分からなかった。

科学で証明しにくい話は、いつも私に対して妙に説得力を持ってしまう。(略)分からないぶん、いつまでも魅惑され続けてしまうのだ


がんを治すグッズには宇宙エネルギー、ピラミッドパワー、波動など、いろいろなパワーが使われる。
1.5mほどのステンレス・パイプ8本を組み合わせて作るピラミッドは15万円。
中に布団を敷いて北枕にして寝ると、寝ている間にそのパワーががんを治す。

座ると体に良い波動を出すという5百円玉くらいの大きさのメダルが頭の部分に埋め込まれている電動マッサージャーは、手で振るよりはるかに強力な波動を出す。
このマッサージャーをピラミッドの中心にぶらさげて、先端が乳がんの真上10cmのところにくるようにして、仰向けにして寝る波動療法。
波動のメダルが十数枚も縫い込まれているランチョン・マットくらいの大きさの波動マットは17万円。
寝る前に乳がんの上に置くだけで威力を発揮する。

びわの葉に含まれているアミグダリンという成分が染み込んでいるシルクの掛け布団は20万円。
寝ているうちに体の悪いものを出して治していく。

布団の下に敷く遠赤外線のマットは17万円。
ピラミッドパワーの温灸器は15万円。
寝ている時に乗せておけば、ビワ温灸の7倍の効果がある。

宇宙エネルギーを取り込める戸棚は普通の戸棚の十倍は超える値段。
この戸棚の中に入れた食べ物は体に良いものに変わる。

マイナスイオン清浄機は30万円。
普通の空気清浄機の数百倍のマイナスイオンが出る。

浄水器は浄水の方法がいろいろあり、次々と買い換えた。
他に、遠赤外線のサウナハウス、電気足湯器、黒田式光線機など。

健康食品は勧められる時、「副作用は全くない。良い食事を摂ることと同じ」という説明を受ける。
健康食品は天然の原材料で、化学物質が一切含まれていないので安全。
多く摂り過ぎた場合は尿から排出されてしまうので大丈夫。

しかし、飲んでみて結果を実感できなかったら、飲み方が足りないと言われる。
飲みすぎて肝臓が腫れるといった副作用が起きたこともある。
「それは好転反応なのだから、もっと続けていれば効果が出てくる」と言われた。
好転反応とは、症状がよいほうに変わる前に一時的に悪化することです。
それで、続けていればよくなると言われるわけです。

健康器具は一度買えばいいですが、健康食品はなくなれば買い続けないといけません。
健康食品は1か月分が10万円以上するものがざらにあった。
がん患者は「値段が高いから良い結果が出るかもしれない」という思考回路がある。

絵門ゆう子さんは乳がんの告知から9か月後の2001年5月、ある民間療法に出会いました。
これがなんともすさまじい。

天然の草(薬草)の粉をお湯で溶いたものをリンパ腺上に貼り付け、それを毎日取り替える。
草の粉療法の「先生」は初めての面談の時、「がんは簡単ですよ」と言った。

何日かすると草の粉を貼っているところに点々とニキビのようなものができてくる。
さらに続けると、ニキビのようなものから白い膿が出てくる。
膿が出る穴は日を追うごとに大きくなり、膿の量も増え、膿が全て出切ってがんは完治するというもの。

草の粉を貼るだけでなく、薬草のジュースや粉、野草茶などを飲まないと成果は出ない。
個人差はあるが、指示されたとおりにすると、だいたい4か月で結果が出る。

悪いものを出していくためには、タンパク質をどんどん摂取して新しい筋肉を作っていかなければならないという考えのため、動物性の食品をたくさん食べるように指示される。
つまり、これも毒素を出すというデトックスです。

玄米菜食は徹底的に否定する。
絵門ゆう子さんは断食、玄米菜食をしていたのに、それを否定されてもおかしいとは思わなかったようです。
つまり、考え方が違っていても、民間療法なら何でも信じるわけです。

膿が出るために、あちこちに開いた穴は大きいもので直径1.5cmになり、とにかく痛かった。
痛みが強いのを治っていく手応えのように思う。
草の粉療法を始めてから4か月、「もう、がんは心配ありませんよ。完治してます」と言われた。
しかし、胸のしこりは残っていた。

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