三日坊主日記

本を読んだり、映画を見たり、宗教を考えたり、死刑や厳罰化を危惧したり。

ポール・オフェット『反ワクチン運動の真実』(1)

2024年04月29日 | 問題のある考え
麻疹(はしか)の感染者が増えています。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240312/k10014388191000.html
ヨーロッパでは百日咳が流行しているそうです。
https://news.yahoo.co.jp/articles/41ade315148a70ca32da31dd76e859552ef68da6
ワクチンの接種率が低下しているからです。

代替医療の治療師は有害な治療法やサプリを勧める一方、ワクチンや抗がん剤といった効果が検証されている治療を否定し、それらを使う医師を非難さえします。

知人がフェイスブックでシェアしている記事に「日本のがん治療の総本山【国立がんセンター】が抗癌がん剤が効かないことを認めた」と書かれていました。
https://dailyrootsfinder.com/gan-center/

まさかと思って検索したら、産経新聞(2017年4月27日)の見出しは「抗がん剤、高齢患者への効果少なく 肺がん・大腸がん・乳がんの末期は治療の有無で生存率「同程度」」です。
記事を読むと、ガンの種類によっては「末期(ステージ4)の高齢患者」には「明確な効果を示さない可能性がある」のであって、抗ガン剤はあらゆるガンに「効かない」とは書かれていません。
https://www.sankei.com/article/20170427-D6AE3ZZEDZIKLKQ5VOLLDKCPBI/

また、「厚生労働省は毎年35万人癌でなくなっていると発表しているが、80%の28万人は癌ではなくて、抗癌剤の他の副作用によって亡くなっている」というのもウソ。
厚労省のHPには「化学療法を受けた患者さん784名のうち、18名、2.3%が抗がん剤による副作用により死亡したと考えられております」とあります。
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001vp67.html

このサイトに「遠隔浄化(ヒーリング)を通じて、本当の自分になる。自由になる。情熱的に生きる。思考が現実化する」とあります。
知人がこんなのを信じているのかと驚きました。

新型コロナウイルスのワクチンを打たないと言ってた知り合いがいます。
ワクチンを打てば5年以内に死ぬとか、不妊症になるといったデマを信じてたわけではないでしょうけど。

ポール・オフィット『反ワクチン運動の真実』によると、反ワクチン運動は1850年代に種痘とともに始まったそうです。
現代の反ワクチン運動のすべての特徴、スローガン、メッセージ、影響までも過去の運動にルーツを持っている。

1867年、法廷予防接種法がイングランド議会を通過した。
この法律が反ワクチン運動を発生させた。
1866年に反法廷予防接種連盟が設立された。

種痘で牛のようになる、白人の子どもが黒人になる、種痘が原因の死者は天然痘の死者より多い、種痘でジフテリアやポリオになるなど。
反種痘活動家は、種痘は反キリスト教的で、悪魔崇拝の一種で、子どもを反キリストに変えると説いた。
役人は自分たちに指図する権利もないし、子どもに何を接種すべきか指図する権利などないと考えた親の怒りは政府に向かった。

1810年から1820年の間に種痘のおかげで天然痘の死者は半減したにもかかわらず、1900年までにはイギリスでは200の反種痘連盟が作られた。
なぜ種痘に反対したのでしょうか。

ワクチンのおかげで多くの病気は完全に、あるいはほとんど消え去った。
予防接種が始まる前、ヒブ感染症で毎年2万人の子供が髄膜炎、血流感染、肺炎になり、1000人が死亡し、生き残った子供たちには深刻な脳障害が残った。

百日咳は1940年代にワクチンが使われる以前は、アメリカで毎年30万人が感染発症し、7000人が死亡していた。
近年はワクチンのおかげで死亡する子供は30人以下。

麻疹ワクチンが1963年に使われる以前は、アメリカの子供は毎年400万人が麻疹にかかり、500人が死亡していた。

ジフテリアで1万2000人が死亡。
2万人の赤ちゃんが風疹のために障害を持って生まれた。
ポリオで1万5000人が身体マヒになり、1000人が死亡していた。
B型肝炎ワクチンが認可されるまで、アメリカでは毎年20万人が感染し、そのほとんどが10代、20代だった。

「unicef news」vol.281(2024年春)に「子どもの命と未来を守るため ユニセフの予防接種活動」という記事があります。

天然痘は1950年代に2千万人が罹患し、400万人が死亡したが、1980年に絶滅が宣言された。
1990年に年間1250万人だった世界の5歳児未満の死亡数は、2021年には500万人に減少したことに、ワクチンの開発と普及が大きく貢献した。

ところが、新型コロナウイルスの世界的大流行により、多くの国と地域で子どもの定期予防接種が中断し、2019年から2021年にかけて、6700万人の子どもが予防接種を完全に、または部分的に受けられなかったと推定される。

ポリオは2019年から2021年までの3年間をその直前の3年間と比較すると、ポリオによって麻痺を生じた子供の数は8倍に増加。
10年以上感染者が出ていなかった国々で症例が相次いでいる。

はしかも過去2年間で発生件数が2倍以上に増えた。
2023年には30か国以上で流行した。
https://unicefnews.jp/feature/immunization2024/

それなのに、『反ワクチン運動の真実』によると、反ワクチン運動は今も活発です。

数年前、パキスタンで、ポリオの予防接種を受けた子どもたちが病気になったという偽の動画がソーシャルメディアで広がり、数百万人の子どもたちに予防接種をおこなう全国規模の長年の取り組みが頓挫したと、「unicef news」vol.281にありました。
反ワクチン運動は殺人や傷害と変わらないと思います。
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