三日坊主日記

本を読んだり、映画を見たり、宗教を考えたり、死刑や厳罰化を危惧したり。

代替医療(3)

2024年04月20日 | 問題のある考え
 ⑧ 代替医療の3つの中心原理
・自然
代替医療の信奉者は、通常医療では許容できない副作用がある人工的な薬を出すが、代替医療は自然の薬を出すと説く。
代替療法の薬(レメディなど)は自然のもので作られているから副作用もなく安全だ思っている人がいる。

自然だからいいとは限らないし、自然ではないから悪いともいえない。
自然界にはヒ素、コブラの毒、放射性元素、地震、エボラ・ウイルスなど有害なものが存在する。
ワクチン、眼鏡、人工股関節などは人間が作ったものだが有用である。

ジョー・シュワルツ「物質の性質は分子構造によって決まります。由来ではありません。効果と安全性を評価する場合、物質が人工的に合成されたか、天然かは全く関係ありません」

私たちは人工の中で生きているのに、人工だからと否定するのはどういうものでしょう。

・伝統的
通常医療は常に変化するが、代替医療は何百年、何千年も変わらずにいるから信頼できると信じ込んでいる人がいる。

2世紀の古代ローマの医学者ガレノスは医学の集大成をし、その説はルネサンスまでヨーロッパとイスラムの医学で支配的になっています。
ガレノスの言葉です。
この治療薬を飲めば、誰でもたちどころに治ってしまう。これが効かず、どのみち亡くなる者以外は。それゆえにこの薬が効かないのは不治の病人だけであるのは明らかだ。
古代の治療師は物事に対してより明解で、より賢い見解を持っていたわけではないようです。

中世のヨーロッパでは20歳まで生きて成人できたのは約半数。
18世紀までの西洋医学の治療は主に瀉血で、モーツァルト、ジョージ・ワシントンのように瀉血で死んだ人のほうが治った人より多い。

伝統的な治療法だからといって、すべてがいいわけではない。
漢方も数千年の伝統があり、自然のものだから副作用がないと思われています。

・全体論的(ホーリスティック)
ホーリスティックとは、心身の健康を全体としてみていくという医療へのアプローチ。
近代医学は全体を細分化して部分しか見ないし、精神性を欠いて技術的だが、代替医療はスピリチュアルで深い意味を持つと考える人がいる。

しかし、通常医療の医者も、患者の生活習慣、年齢、家族の病歴、遺伝的要因などを頭に入れて、ホーリスティックな治療を行なっている。
医療に標準とか代替とか、補完とか統合とかホリスティックといった区別があるわけではない。
効く医療と効かない医療があるだけだ。

 ⑨ 代替医療からの科学に対する非難
・科学は代替医療を検証することができない
科学はさまざまな治療法が及ぼす影響の測定方法を開発してきた。
追試をして結果を再現することで、その治療法が安全で効果があることが証明される。

しかし、代替医療の場合、一度きりの臨床試験や、データを公開しないなどで、効果があるかを示すことができない。
だから、科学は代替医療の主張に懐疑的なのである。

・科学は代替医療がわかっていない
ある治療法のメカニズムがわからないからといって、効くかどうかわからないわけではない。

17世紀にレモンが壊血病の予防できると知られるようになったが、なぜかはわからなかった。
ビタミンC不足が壊血病の原因であることがわかったのは20世紀になってから。

・科学は代替医療に偏見を持っている
現代科学はガリレオたち反主流派によって築かれている。
科学は反主流派すべてを否定するわけではない。
だからといって、反主流派がすべて偉大な科学者とは限らない。

 ⑩ 代替医療による科学の利用
代替医療は科学を批判するのに、主張に信憑性を与えるため科学を利用する。
エネルギー、波動、共鳴、あるいは患者の電磁回路や体をデフラグするといった科学的と思わせるが意味のなさない言葉を使う。

科学的にみえる装置を使用する。
電磁放射から守ってくれる銅のブレスレット。
ヒーリング力があるクリスタル。
体から毒を排出するフットバス。
体から毒素を排出させる(デトックス)電気式の装置など。

 ⑪ 代替医療による金儲け
代替医療を支持する人には政府、製薬会社、医師は薬を売るために結託していると考える人がいます。
しかし、代替医療こそ高い治療費を要求し、健康食品や健康器具を売りつけて金儲けをしているのです。

代替医療や反ワクチンの本が定価2千円として、印税が10%なら、1万部売れると200万円、10万部なら2千万円です。
講演会の参加費千円で聴衆が千人来たら100万円。

大製薬会社も積極的に代替医療ビジネスに参入している。
代替医療は全世界で数兆円規模の市場に成長しているといわれる。
2018年度の世界のビタミンや栄養補助食品マーケットの売上は約1140億ドルで、アメリカが291億ドル、中国が231億ドル、日本が110億ドル。
https://boueki.standage.co.jp/supplement-overseas-market/
2007年、481万人のアメリカ人がホメオパシーを使用し、レメディーの売り上げは29億ドル。

サイモン・シン、エツァート・エルンスト『代替医療解剖』とポール・オフィット『代替医療の光と闇 魔法を信じるかい?』を読み、代替医療の手口はインチキ宗教や悪徳商法と似ているように思いました。
ムチ(脅し)で不安にさせ、とアメ(解決法)を与えて金をむしり取るのが基本です。

中には、治療が効くという信念を持つ人、人々を救う大発見をしたと信じる研究者、だまされて代替医療の広告塔になる科学者や著名人もいます。
これもインチキ宗教や悪徳商法と同じ。
しかし、悪意はなくても、人を惑わすという点では罪作りです。
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