ブログ うつと酒と小説な日々

躁うつ病に悩み、酒を飲みながらも、小説を読み、書く、おじさんの日記

追悼 安岡章太郎

2013年01月29日 | 文学

 安岡章太郎が死去したというニュースが飛び込んできました。
 92歳。
 第三の新人と言われた一群の作家の一人でした。
 今思うと、三島由紀夫よりも年上だったのですね。

 安岡章太郎というと、第二の太宰なんていう人もいました。
 しかし太宰治ほどの物語作者としての才能には恵まれず、その代わり太宰治には無い乾いたユーモアがありました。

 中学生から高校生の頃、私はこの人の作品を愛読しました。
 「ガラスの靴」「悪い仲間」は青春を描いて瑞々しく、しかもそこに気負った感じがなくて、何度も読み返したものです。

 作者が中年になって、「海辺の光景」という、海辺の病院で狂気に陥った母親を看取る作品を発表してから、重鎮扱いされることになりました。

 私は若い頃には彼の初期の作品を頭の隅に置いて、主に女性関係で悪い遊びに耽りました。

 そして退屈だと思っていた「海辺の光景」に深く感じ入ったのは、昨年の3月、父を亡くした時でした。

 親の死という耐え難い事態を、彼はドライに描きつくし、それは父を亡くすという一件から未だに脱出できずにいる私を驚嘆させる醒めた筆致であるということに、改めて気付かされたのです。

 私はひねくれ者なのか、一般に失敗作と言われる作品に惹かれる傾向があります。
 例えば三島由紀夫「鏡子の家」

 安岡章太郎で言えば、「舌出し天使」ですかねぇ。

 思うに失敗作と言われる作品には、作者の思い入れが深く、それゆえに作者の特徴がよく現われるような気がします。

 私にとって安岡章太郎は、同じ第三の新人と言われた遠藤周作吉行淳之介とは全く異なり、その作品の良し悪しは別にして、深く心に響く作品を書く小説家でした。

 そしてまた、三島由紀夫石川淳渋澤龍彦などのきらめくばかりの才能を感じさせることも無い、なんとなく親しみの持てる作家でもありました。

 今まで私を魅了してくれたことに感謝しつつ、ご冥福を祈ります。

ガラスの靴・悪い仲間 (講談社文芸文庫)
加藤 典洋
講談社



海辺の光景 (新潮文庫)
安岡 章太郎
新潮社



鏡子の家 (新潮文庫)
三島 由紀夫
新潮社



舌出し天使 (中公文庫 A 39)
安岡 章太郎
中央公論新社

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研修

2013年01月29日 | 仕事

 午後は職場の研修の一環として受講している放送大学の今日のメンタルヘルスの単位認定試験のため、幕張の放送大学へ行き、直帰しました。
 試験自体は簡単で、試験時間は50分なのですが、30分経過すると退出してよいということで、早々に退散しました。

 平成12年度から14年度までの三年間、私は放送大学に勤務していました。
 文部科学省所管の機関のなかで、放送大学は激務として怖れられ、全国から放送大学に集められた職員たちは、人さらいにあったと言っていました。

 放送大学では単位認定試験と通信指導と呼ばれる中間レポートの事務を担当していました。
 教員に問題作成を依頼し、印刷のうえ30万人もの履修者に通信指導を送付して返送されたら科目ごとに仕分けし、マークシートの科目なら機械で採点し、記述の科目なら教員にダンボールで送付し、採点してもらいます。
 通信指導に合格した者には単位認定試験の受験票を送付し、全国に点在する放送大学学習センターで試験を実施し、学習センターから答案を回収して採点、という流れになります。
 これを約60人の主婦や学生を臨時雇用し、職員は私一人だけが作業場にはりつき、指示を飛ばすのです。

 苦しんだのは、マークシートの誤記入。
 学生番号や科目番号が間違っているとエラーがでるため、これを一つ一つ潰していきます。
 100枚のうち10くらいエラーがでるので、30万で3万のエラー。
 クリーン日と呼ばれる採点最終日はエラーを完全に無くさなければならず、エラー潰しで大抵徹夜でしたね。
  スケジュールがあまりにタイトなため、他の部署とスケジュール調整をするのがまた大変。
 わずか半日をめぐって、攻防を繰り広げるのです。


 これが夏と冬、2回あります。
 通信指導と単位認定試験を合わせて4回。
 年4回、財務担当で言う年度末決算みたいな山場が存在するというのはハードなものでした。
 
 土日のサービス出勤も多く、健康ランドで風呂に入っているところを呼び出されたり、土曜日の夕方一杯やっているところを呼び出されてタクシーで駆けつけたり。
 でも考えてみると、呼びつける職員もサービス出勤しているというわけで、問題が発生したと知っていながらこれを放置することは人情としてできません。

 その上学生は年配者が多く、我がままなクレームが多くてこれにも苦しめられました。

 今日はその嫌な思い出が詰まった場所に行ったわけですが、その時幸いだったのは人間関係が良好だったため、今となっては懐かしい思い出です。

 当時を思えば、今は遊んで給料をもらっているようなものです。
 お気楽な職場です。
 今の職場で忙しいなどと寝言をぬかしている輩をみると、人さらいにあって鍛えなおしたほうがいいんじゃないかと思います。

 不思議なことに、その時はメンタルをやられることはありませんでした。
 その代わり、いつも怒っていましたね。

 若かったんでしょうねぇ。

  ただ、直属の上司はうつ病で倒れました。
 その部署では私がその上司の次の立場であったため、まともに上司の穴埋めをしなければならず、いつも不機嫌でした。

 他にも十二指腸潰瘍になる者、アパートも車もそのままに失踪してしまう者などが頻出する怖ろしい所でした。
 山形大学から人さらいにあって失踪した人、十年以上たつのにまだ行方知れずです。
 どこでどうしているのやら。

 でもまだ昔の激務を懐かしんでいる場合じゃありませんね。
 定年まで17年もあるし、その間にはもう一山二山あるでしょうから。
 明日から気を引き締めて職務に精励したいと思います。

今日のメンタルヘルス (放送大学教材)
石丸 昌彦
放送大学教育振興会

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プロジェクト0

2013年01月29日 | ホラー・サスペンス・SF等の映画

 昨夜はずいぶん安っぽくてグロテスクなホラーを鑑賞しました。

 「プロジェクト0」です。

 麻薬撲滅のために進められる密かな計画。
 それは、使うと衝動的に自殺してしまったり、衝動的に殺人を行ってしまうという麻薬、ベイビー・ブルーを麻薬の密売人に流し、ジャンキーたちに流布させる、というものです。

 ドラッグ・パーティーの最中、友人がベイビー・ブルーを使い、自殺してしまいます。
 そこで仲間たちはドラッグを絶つべく、荒野の一軒屋に入り、ドアノブを破壊して外に出られないようにしてドラッグ中毒から抜け出そうとします。
 しかしそこはジャンキーたち。
 最後に派手にドラッグ・パーティーを開こうと、大量の麻薬を持ち込んでいます。
 その中にはあのベイビー・ブルーも。

 ここまで書けばどんな内容かは想像がつくと思います。

 残虐な映画が撮りたかったのか、麻薬撲滅のために非情な計画を実行する政府の横暴を描きたかったのか、どちらにしても中途半端な作品に終ってしまったのは残念です。

プロジェクト・ゼロ [DVD]
ミーガン・ハッチングス,ケヴィン・ウォーカー,マイク・ウェブスター,シャミール・アンダーソン,タラ・ジョーシ
トランスワールドアソシエイツ


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