ブログ うつと酒と小説な日々

躁うつ病に悩み、酒を飲みながらも、小説を読み、書く、おじさんの日記

2011年12月11日 | 散歩・旅行

 お昼過ぎ、近所を散歩していたら、公園で餅つきをやっていました。
 子どもたちとその親が集まって開いた自治会の餅つき大会のようです。
 私が住むマンションは自治会に加入していないので、今日初めて知りました。

 伝統的な臼と杵で、お父さんたちが交代で餅つきに汗を流し、子どもたちは公園の遊具で遊びまわる姿は、平和そのもの。
 わが国で66年続くこの平和が未来永劫続くことを願ってやみません。

 幼稚園の頃、毎年年末に幼稚園の庭で餅つき大会を行ったものです。
 しかし、生来の左党のせいか、幼児の頃から甘い物を好まなかった私は、餅つき大会で食う餅が、いつも餡子やきな粉などで、甘く味付けされて供されることが不満でした。
 できれば磯辺か、あるいは雑煮で食いたいものだと思いながら、義務のように甘い餅を食っていました。

 餅つきといえば年末の風物詩、餅を食うといえば正月などの祝い事。

 百歳の 春も隣や 餅の音    正岡子規

 正岡子規の隣家の婆さんが77歳、喜寿を前に隣家が餅をつく音を詠んだ、正岡子規最晩年の句です。

 35歳、寝たきりで痛みに耐えていた子規にとって、77歳まで生きた老婆には百歳の正月を迎える日も近いだろう、という祝意と言おうか妬みと言おうか、複雑な心境を詠んだ句と見えます。
 この句の背景を思うと、あまりおめでたい気分にはなれません。

 何事も表と裏があるということでしょうか。

 いずれにせよ、今日の子どもたちはつきたての餅に餡子やきな粉をまぶして、旨そうに頬張っていました。
 きっと甘い味付けの餅なんて食いたくない、なんてひねくれ者はいなかったものと想像します。

 甘い物は頑として口にしなかった私ですが、近頃は少しなら好んで食うようになりました。

 頑固な左党が中年になってお宗旨替えをするという話を時折耳にしますが、その現象が私にも現われたようです。

 人様に起こるぐらいのことは、大抵自分にも起こるのだなぁと、妙に感心した次第です。

子規句集 (岩波文庫)
高浜 虚子
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描かない絵画

2011年12月11日 | 美術

 先ほどNHKの日曜美術館で、現代抽象絵画に革命を起こしたとされるジャクソン・ポロックを取り上げていました。
 ポーリングと言われる、絵の具ではなくペンキを縦横にたらして描く技法を生み出した画家です。

 まずは彼の最高傑作と言われる「one」をご覧ください。


 観てお分かりのとおり、一見、適当に描いた偶然の産物のように見えます。

 しかしポロックは、「私は偶然を否定している。ペンキの線の一本一本をコントロールしている」と語ったそうです。
 一方で、「絵の中にいるとき、私は何をしているのかわからない」とも語っているそうです。

 筆を握るとトランス状態に陥ってしまうのでしょうか。

 タイトルの「one」は、1という意味ではなく、ポロックと絵が一つのものになっている、という意味だそうです。


 抽象画ではピカソが最も偉大な画家ですが、少なくともピカソの絵には形あるものが描かれており、無意識や幻想を形にしようとしたシュールレアリスムの延長上にいます。
 ポロックは若い頃ピカソを超えようとして果たせず、「ちきしょう、あいつが全部やっちまった」と言ってピカソの画集を床にたたきつけたそうです。

 それから20年後、アルコール依存症に苦しみながら、ポーリングという新しい技法で、ピカソの先にあるものにたどり着いたというのです。

 しかし正直、私はポーリングによって描かれた彼の絵画を、美しいとは思いません。
 ただ、怖ろしいほどの精神の混沌が示されていることは感じます。
 シュールレアリスムも無意識下にある人間精神を描こうとした運動ですが、そこには美の探究という絵画が本来的に持つ原則が維持されていました。

 しかしポロックポーリングは、美の探究すら行わず、無意識をむきだしにしようとしているように私には感じられます。

 それはもはや、画家の仕事というより呪術師や霊能者のそれであると感じます。

「№18」です。

 番組で解説していたポロック研究者は、自由な精神だとか勢いだとか言っていましたが、私が感じるのは、人間精神の底知れぬ暗さと、人間の集合無意識が持つ激流の激しさです。

 ポロックは見てはいけないものを観て、描いてはいけないものを描いたのではないでしょうか。

 いやそれは、描くということですらないと感じます。

 トランス状態に陥って、誰かが彼を操っていたのだとしか思えません。

 私はポロックよりも前に活躍したシャガールの絵画を好みます。
 ポロックまで行ってしまうと、美を感じられません。

 去年の九月に東京藝術大学美術館で開かれたロシア・アバンギャルド展に行った時は、多くのシャガール作品を観ることができて幸せでした。
 




 色彩の魔術師と言われるシャガールの代表作2点です。

ジャクソン・ポロック (ニューベーシック) (ニューベーシック・アート・シリーズ)
レオンハルト・エマリング
タッシェン
新版ジャクソン・ポロック
藤枝 晃雄
東信堂
シャガール (ニュー・ベーシック・アート・シリーズ)
インゴ・F・ヴァルター/ライナー・メッツガー
タッシェン

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