ブログ うつと酒と小説な日々

躁うつ病に悩み、酒を飲みながらも、小説を読み、書く、おじさんの日記

2011年12月12日 | 社会・政治

 清水寺が毎年年末に発表する今年の漢字。
 今年はだそうです。
 私はという語感に嫌悪感を持っています。
 なんだかいかにも安っぽく、オツムの弱い不良少年が振りかざす語のように感じるからです。
 
 というと、私は米国の社会学者で、ジェンダー論や文学論を専門にしていたイヴ・コゾフスキー・セジウィックが80年代半ばに発表した
男同士の絆―イギリス文学とホモソーシャルな欲望」(原題:Between Men)という論考を思い出します。

 シェイクスピアからディケンズまで、英国の19世紀までの文学を取り上げて、なかなか興味深いものです。
 ジェンダー論でありフェミニズム論でもありながら、あえて文学作品に見られる男社会、あるいは男同士の関係を追究することで、女性や同性愛者など、ジェンダー面での社会的弱者の存在を浮かび上がらせる、という面白い方法を採っています。

 男社会には、同性愛への欲望と、それとは逆に同性愛嫌悪があって、それが縄のように連なっているとします。
 そしてまた、女性への欲求とともに、女性嫌悪とでもいうべきものが男社会には存在する、と指摘します。

 それは多分、男社会という社会的単位のみならず、男性個人の中にも、同性愛への欲求と同性愛嫌悪、女性への欲望と同時に女性嫌悪が存在すると私は感じています。

 それは言わば、性的な絆すべてに対する欲求と嫌悪と言ってよいでしょう。

 女性差別や同性愛者差別を告発するというフェミニズム論の方法は、逆説的ですが、女性や同性愛者たちを社会的弱者として固定化させてしまう、という指摘はなかなか見事ですねぇ。

 それがため、男性社会の在り様を探ったというわけです。

 発売当時、私は高校生でしたが、理論書としては抜群に面白い、エンターテイメントを読むような感じでしたねぇ。
 フェミニズム論やジェンダー論を専門にするおっかないお姉さまたちにも多大な影響を及ぼしたと聞いています。

 でもそれが英国文学というのが意味深ですねぇ。

 国民性ジョークというのがあります。

 
男二人と女一人が無人島にたどりついたら?
  イタリア人⇒男二人は決闘する。
  フランス人⇒仲良く3Pを始める。
  ロシア人 ⇒女は放っておいて男二人でウォッカを飲む。
  日本人  ⇒どちらが女とくっついたらよいか本社に確認する。
  ドイツ人 ⇒なぜこんな状況に置かれたのか哲学する。
  英国人  ⇒女は放っておいて男同士でいちゃいちゃする。

  と言いますから、英国文学を題材に採ると、必然的に男同士の話になっちゃうのかもしれませんねぇ。

 わが国の男女の性愛と男色を平等に取り上げた「色道大鏡」なんかをフェミニズム論の立場から論考してもらったら、面白いでしょうねぇ。  

男同士の絆―イギリス文学とホモソーシャルな欲望
Eve Kosofsky Sedgwick,上原 早苗,亀沢 美由紀
名古屋大学出版会
色道大鏡
藤本 箕山,新版色道大鏡刊行会
八木書店

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韓国海上警察官、中国違法漁船乗組員に殺される!

2011年12月12日 | 社会・政治

   えらいことになりました。

 韓国領海内で違法操業していた中国漁船を取り締まるため、韓国の海上警備艇から海洋警察官がゴムボートで中国漁船に乗り込んだところ、中国漁船の船長とみられる男が激しく抵抗、割れたガラス片で韓国海洋警察官を刺し、韓国海洋警察官のうち一人が死亡、一人が負傷したというのです。

 中国漁船は拿捕され、中国人乗組員は韓国海上警察に逮捕され、韓国に移送されたとのことです。

 わが国の海上保安庁の船に中国漁船が体当たりしてきたことが大きなニュースになったのは記憶に新しいところですが、今回は死人が出ています。
 中国政府がどういう言い逃れをするのかまだわかりませんが、大きな問題になることは間違いないでしょう。

 まあいきなりドンパチが始まるということはないでしょうが、自国の警察官を殺されたとなれば、韓国政府としても穏便に済ますわけにはいきますまい。 

  中国人乗組員を韓国内で韓国の法律によって裁かなければなりません。
 それに対し中国政府がいちゃもんをつければ、ややこしいことになります。

 それでなくても中国漁船による違法操業は、韓国でもわが国でも問題になっており、今後日韓が協力して中国漁船に強い態度で臨もうと話し合ったばかり。
 今回の事件が中国人乗組員が激高して起きたものではなく、中国政府の密命を受けて、わざと強く抵抗したのだとすれば、ことは簡単ではありません。

 いずれにしても、韓国政府はかつて中国漁船の違法操業に対し穏便な姿勢を取り、世界の失笑を買った前科があります。
 わが国と似た状況にあるわけです。
 これ以上ことを穏便に済ませようとすれば、中国はますます図に乗るでしょう。

 ここはわが国も韓国と同調して中国に当たらなければならないでしょう。

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人外境通信

2011年12月12日 | 文学

 中井英夫といえば、大長編ミステリー「虚無への供物」が有名ですが、私はむしろ短編にこそ、この作者の面目が現れていると思います。

 そこで、「人外境通信」を昨夜読みました。
 独立した短編が編められ、最後には最初の作品と同じモチーフに戻っていく、という心憎い手だれによる至芸です。

 そのモチーフは、薔薇。

 まず、「薔薇の戒め」というタイトルで、薔薇にまつわる不思議な物語が展開します。
 その後の短編でも三角関係の悲劇を椅子の視点で描く「笑う椅子」、金色の瞳を持つ青い猫に魅せられた女性の奇妙な経験を描いた「青猫の惑わし」など、まさにこの世ならぬ人外境の出来事を描いて読者を幻惑します。
 最後は「薔人(ばらと)」

 薔薇というモチーフがどの作品にも流れています。

 人工的に彩られた、どこかに存在する影の王国、人外境。
 そこに彷徨い込んだ時、人はそこが人外境とは気付かぬまま、奇妙な経験をするのです。

 しかし私たちの日々の生活を思う時、奇妙な事件やくだらぬいさかいが頻発し、理想的な人間社会が存在すると仮定してみると、こここそが人外境なのではないか、という疑念に捉われます。

 「人外境通信」「とらんぷ譚」の三作目を構成しており、1として「幻想博物館」、2として「悪夢の骨牌」、4として「真珠母の匣」があります。
 それぞれ面白いのですが、なんとなく1作目、2作目は狙いすぎてあざとい感じがしますが、「人外境通信」「真珠母の匣」になってくると、肩の力が抜けて良い感じになってきます。

 この世ならぬ世界に遊びたい時、何度でも読み返せる珠玉の短編群と言えましょう。

幻想博物館 新装版 (講談社文庫 な 3-9 とらんぷ譚 1)
中井 英夫
講談社
とらんぷ譚2 悪夢の骨牌 (講談社文庫)
中井 英夫
講談社
新装版 とらんぷ譚3 人外境通信 (講談社文庫)
中井 英夫
講談社
新装版 とらんぷ譚4 真珠母の匣 (講談社文庫)
中井 英夫
講談社
新装版 虚無への供物(上) (講談社文庫)
中井 英夫
講談社
新装版 虚無への供物(下) (講談社文庫)
中井 英夫
講談社

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三無事件

2011年12月12日 | 社会・政治

  もうあまり知っている人もいないでしょうねぇ。
 1961年の12月12日、旧日本軍の元将校らが画策していたクーデター計画が発覚、関係者34人が逮捕された事件のことを。
 
 称して三無事件

 三無とは、
 
 
無税 - 官公庁の大幅人員削減による財政収縮と公社公団の民営化
 無失業 - 大規模な公共事業の実施による失業者吸収
 無戦争 - ミサイルや宇宙兵器の開発による外国からの侵略の阻止
 
 を目的とするそうです。

 クーデター計画はかなり本格的なもので、

 
1.開会中の国会を占拠、総選挙の実施
 2.閣僚を監禁し逃走者は射殺
 3.報道管制の実施
 4.自衛隊には中立働きかけ
 5.戒厳令を敷き臨時政府の樹立

 というものでした。

 1960年代といえば、安保闘争や安田講堂事件 、連合赤軍事件と、主に左翼を中心とした政治の季節。

 しかし右翼の側も、左翼運動の台頭に危機感を抱き、クーデターを計画をしたものと思われます。

 左翼の運動は、ただ騒ぐばかりの児戯にひとしいもの。

 それにくらべて、旧軍の将校であっただけに、三無事件の首謀者はクーデターのポイントを押さえています。
 しかしこの計画には、決定的な欠陥があります。
 それは2.26事件などと同様の欠陥。
 皇居を占拠し、天皇一家を監禁する、という計画が抜けていることです。

 わが国で革命やクーデターを成功させるには、錦の御旗を手に入れるのが一番手っ取り早いのです。
 明治維新を見れば明らかですね。
 時の天皇がそれを拒んだなら、銃で脅し、どうしても屈服しなければ暗殺して言いなりになる宮様を天皇に立てれば良いのです。
 天皇はアンタッチャブルだと考えていては、クーデターなど成功するはずもありません。

 三無事件には現職の自衛官も深く関与していたのではないか、との疑惑がもたれていますが、表向き自衛隊は関係ないことになっており、今も防衛省幹部はこの事件について口をつぐんでいます。

 風聞ですが、自衛官によるクーデター未遂事件は数え切れないほど起きていると聞き及びます。
 それらはすべて自衛隊内部でもみ消され、国民に知らされることはないとか。

 怖ろしいですねぇ。

 文民統制に従うべき自衛官が暴力で政治に口を出そうとするとは。
 自衛隊の体質は旧日本軍時代からあまり変わっていないのでしょうか。

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