消費税を上げるけど社会保障は充実させる、という野田政権。
しかし、現実には、増税方向は進むけど、他の部分は、党内の反対などで後退する傾向がありあり。
貧困・格差対策の柱となるものとして、
パート従業員が正社員と同じ厚生年金や健康保険に入れるようにして、
将来、少しでも多く年金が受け取れるようにする、
という制度。これも、心もとない。
理由は、パートを多く雇う小売りや外食などの業界が、
人件費が増えると反対のロビー活動を進めたことによるらしい。
自公政権以下になるのか、今の政権は。
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●厚生年金:非正規労働者へ適用拡大、経済界反発で慎重論 対象縮小や法案見送りも
毎日新聞 2012年2月22日
税と社会保障の一体改革案の目玉の一つ、短時間労働者への厚生年金、健康保険の適用拡大を巡り、民主党政権内で慎重論が強まっている。非正規雇用労働者の待遇改善策に掲げながら、保険料負担の増える経済界が反発するや一転、党幹部らがたじろぎ始めたからだ。拡大対象の縮小や、今国会への関連法案提出見送りを迫られる可能性も出てきた。【山田夢留、鈴木直】
21日午後。民主党厚生労働部門会議座長の長妻昭元厚生労働相らは適用拡大に消極的な同党の前原誠司政調会長と国会内で会談。しかし、「一体改革に盛り込まれているのに政調会長が否定的なことは言わないでください」と求める出席者に前原氏は「慎重に判断しないといけない」と述べるにとどめた。
現在、週の労働時間が約30時間未満の人は事業主も保険料を払う厚生年金や企業健保に入れず、全額自己負担で給付も不利な国民年金、国民健康保険(国保)に加入している人が多い。そこで政府は一体改革で加入要件を「週20時間以上」に広げ、正社員と非正規の格差是正を図る方針を打ち出した。
厚労省は「従業員301人以上の企業で働く年収80万円以上」の人約100万人を加入させたうえで、段階的に基準をなくし対象を約370万人に広げる意向だ。だが、この案だと企業負担は最終的に5400億円増える。パートの多い流通、小売業界などが同党に反対の陳情攻勢をかけ始め、経済産業省も後押しに乗り出した。
その結果、今度は党側もぐらつきだした。前原氏は20日の役員会でも消極的な姿勢を示したほか、樽床伸二幹事長代行も推進派議員に慎重な対応を求めている。一方、推進派も業界の説得に動かず、16、17日に慌てて業界団体を訪れたのが実情。厚労省は企業への財政支援なども模索するが、これには財務省が警戒を強めている。経済界の不興を買い、肝心の消費増税に影響したらまずい、との考えもあり、今や推進派は厚労省と一部関係議員、という四面楚歌(しめんそか)の状況になりつつある。
「非正規労働者のバックアップは必要だ」。小宮山洋子厚労相は21日の記者会見で改めて適用拡大に意欲を示した。それでも孤立感は否めず、民主党の推進派議員は「全国民を一つの年金制度に一元化する」とした新年金制度案に触れ「非正規労働者を入れることすらできないなら言い訳が立たない」とこぼす。
●パートの年金―現役支援はうそなのか
朝日 2012年2月25日(土)付
パート従業員が正社員と同じ厚生年金や健康保険に入れるようにし、将来、少しでも多く年金が受け取れるようにする。
野田政権が進める「社会保障と税の一体改革」で、貧困・格差対策の柱となる政策だ。
ところが、民主党内で反対論が噴き出し、前原誠司政調会長も「慎重に対応」と腰が引け始めた。
パートを多く雇う小売りや外食などの業界を中心に、人件費が増えるのを嫌う経営者が強く反発しているからだ。
法案の提出は予定した3月中旬に間に合わず、「一体改革」といいながら、増税法案と切り離されそうな雲行きだ。
いま、サラリーマンの妻以外のパートは、国民年金と国民健康保険に加入し、保険料は自分で払わないといけない。
未納が続けば、低年金になるし、医療の「無保険」は命にもかかわる。社会のセーフティーネットが破れやすい部分だ。
改革案は、正社員と同じ社会保険に入る対象を、「週に働く時間が30時間以上」から「20時間以上」に広げる。新たに100万~370万人のパートが加わることを想定している。
保険料は労使が半分ずつ負担するため、雇い主には全体で年間数千億円規模の負担増だ。最初から、強い抵抗に遭うことは予想されていた。
そこを粘り強く説得し、調整するのが政治のはずだ。
パートの加入拡大は、一体改革のなかで現役世代を支援する政策の目玉である。
高齢者の年金には加算するのに、パート年金のほうはあきらめる。そうなれば、「全世代対応型」という一体改革の看板は偽りとなる。
自公政権は07年、厚生年金の加入を拡大し、新たにパート10万~20万人を対象とする法案を提出した。
このとき、野党時代の民主党は、「抜本改革でない」と反対し、廃案に追い込んだ。もし成立していたら、昨年9月にスタートしていたはずだ。
今回の案は、年金だけでなく健康保険も対象だ。新たに加入対象となるパートの数も大きく増やした。「抜本改革」により近いのに、今度は「企業負担が重すぎる」と尻込みしては、筋が通らない。
民主党が先日、試算を公表した新年金案ではどんな短時間のパートも正社員と同じ年金に入る。今回の案もまとめられないなら、実現性はさらに薄れる。
何も決められないままでは、民主党政権は国民から本当に見はなされるだろう。
●年金切り離し これで一体改革なのか
東京 2012年2月25日
政府は会社員の厚生年金と公務員などの共済年金の一元化法案を、社会保障と税の一体改革関連法案から切り離すと決めた。重要な年金改革を先送りするとは、やはり一体改革ではなかった。
厚生年金と共済年金の一元化法案を消費税増税の法案提出から遅らせるという。
だが「社会保障の改革をするので消費税増税を」が政府の説明する一体改革だったはずだ。
消費税増税の前に公務員人件費二割削減などやるべきことがあるが、必要な社会保障改革もせずに増税だけするのでは話が違う。
年金制度は社会保障の大きな柱だ。しかも特権的に優遇されている共済年金を厚生年金と一つにすることは、公平な制度にする最も重要な改革である。それを小宮山洋子厚生労働相は「消費税増税と直接関係ない」とは理解に苦しむ。
国家公務員、地方公務員、私立学校教職員の共済年金はその優遇ぶりが問題視されている。
厚生に比べ、共済は保険料率が低いのに給付額が月約二万円増額される。定年後も働き続ける場合、双方の年金とも賃金に応じて減額されるが、共済はケースにより減額が少ない。
夫を亡くした妻が受け取る遺族年金は、厚生だと妻限りだが、共済だと条件を満たせば他の家族に受給権が移る。
一方、共済の財源には国や自治体から税が入っている。もとの軍人への恩給制度のなごりだ。こうした優遇の是正には、厚生との一元化が必要である。
先送りの背景には、身を削られる官僚が抵抗しているという事情があるようだ。だが、この場面こそ政治主導の出番だろう。
それができないのでは、民主党が掲げる年金の完全一元化などできるはずがない。
非正規労働者の厚生年金と健康保険への加入拡大も先送りされそうだ。改革案は働く時間を「週二十時間以上」など規定を緩めて、将来三百七十万人を加入させる。
ところがパートを多く雇用し保険料負担が増える流通・小売業界の反発ぶりを見て、民主党内から慎重論が出た。
これまでも負担を求める改革案は党内の反対で後退してきた。
政治主導を発揮せず、負担を求める議論から逃げる姿勢では、政権与党の責任放棄ではないか。
社会保障改革は消費税率を上げる口実だったという一体改革の正体が見えたといっていい。
●社説:年金適用拡大 腰砕けは許されない
毎日新聞 2012年2月24日
ようやく税と社会保障の一体改革の大綱がまとまったと思ったら、早くも暗雲が漂い出した。パートなど非正規雇用労働者の厚生年金、健康保険の適用拡大で民主党内に慎重論が強まっているのだ。こんなことでまともな国会論戦ができるのか。
非正規雇用労働者は全被用者の35%を占めるが、週の労働時間が約30時間未満だと事業主と保険料が折半の厚生年金や企業健保に入れない。全額自己負担の国民年金、国民健康保険に入らざるを得ず、未加入者の増加を招く一因となっている。
改革案は「週20時間以上」に対象を拡大し、従業員301人以上の企業で働く年収80万円以上の従業員(約100万人)を加入させる。その後、段階的に基準をなくし対象を約370万人に広げる予定だ。
夫が厚生年金や共済年金に加入している専業主婦(第3号被保険者)は保険料を払わなくても基礎年金が受給できるのでパートの主婦の中には第3号被保険者でいるために勤務時間を制限している人が多い。女性の就労意欲を阻害する要因とも指摘されている。適用拡大はこうした課題の解決にもつながる。
ところが、経済界には反対論が根強い。厚生年金に入る人が増えると事業主負担も増えるためだ。今回の改革では最終的に企業の負担は5400億円増えるとしてパート従業員の多い流通や小売業界から反対が強まり、民主党幹部らに加入対象の縮小を模索する動きが出てきた。
国民年金などを夫婦ともに払っている自営業者から見たらどうだろう。大型店舗の進出によって廃業に追い込まれる自営業者は多い。事業主負担のないパートを雇用して経費を節約できる企業に対して不公平を感じても不思議ではない。非正規雇用者の生活不安を軽減し、将来の無年金・低年金を減らし、女性の就労を後押しするため、企業に社会的責任を果たすよう政府・民主党は説得すべきではないのか。
一体改革の中では厚生年金と共済年金の一元化作業も停滞している。共済年金には厚生年金にはない職域加算や、遺族年金に「転給」という仕組みがある。死亡した夫の遺族年金を受給していた妻が亡くなると父母や子や孫に受給権が引き継がれる。改革で転給は廃止する予定だが、公務員労組の抵抗は強く、総務、文部科学、財務の関連各省も消極的で具体的な作業は進んでいない。
物価スライドでお年寄りの年金支給額を減らすことだけが実施され、企業や公務員にマイナスとなる改革を見送るようなことが許されていいのか。民主党は40年先の夢のような新年金制度に固執する前に、目の前の重要課題に全力を挙げるべきだ。
●暮らし/<集めて分ける 社会保障と税・格差編> 個人の資産 年代で開き
中日 2012年2月2日
国や自治体の財政が危機的な日本だが、一方で強みの一つは巨額な個人の金融資産。ただ、高齢世代が大半を持っており、家計に余裕がない若い世代との「世代間格差」は著しい。税や社会保障の分野でも、この格差を縮めていく政策が急務になっている。 (白井康彦)
「相談の傾向は、世代間で大きく違う。三十~四十代は住宅ローンを組めるか、保険をどう見直すか、など切実なものが目立つが、高齢者は資産の増やし方に関するものが多い」
こう説明するのは「家計の見直し相談センター」の東京オフィスに所属するファイナンシャルプランナー(FP)山田和弘さん(43)。
高齢世代には、収入が乏しいために生活保護を受けている人も多い。しかし、金融に関する情報提供・啓発をしている「金融広報中央委員会」(東京都中央区)が毎年実施している家計についての世論調査を見ると、他の世代に比べて平均の貯蓄額の多さが際立っている。
二〇一〇年の全国の二人以上の世帯の平均の金融資産(預貯金、保険、株式など)残高は、七十歳以上は千七百万円余りで、三十代の約三・二倍もある。
貯蓄の多い高齢者は(1)退職するまで給料が右肩上がりで増えた(2)十分な退職金をもらった(3)住宅ローンの返済が終わった(4)子どもが独立した(5)親から相続で財産をもらった-といった有利な事情に恵まれたケースが多い。
今の若い世代も年齢を重ねるごとに順調に貯蓄が増えればいいが、FPらは「今の退役世代のようには順調に増えない」と予測する。会社勤務者の正社員比率が低くなったことや、年功序列型の賃金体系が崩れてきたことなどが理由だ。若い世代には、年金制度の将来への不安も強い。
この調査で一九九七年と二〇一〇年の平均貯蓄額を比べると、七十歳以上は7%減でとどまっているが、四十代は32%もの大幅減。FPの山田さんは「子育て世代の家計は、消費税が5%増税されると支出が月二万円以上も増え、いよいよ余裕がなくなるだろう」と話す。世代間の経済格差は今後、一段と広がりかねない。
◇
「高齢者の余裕資金を世の中により多く出回らせ、若い世代の経済力を向上させないと、少子化がさらに進んで日本経済は衰退してしまう」。経済分析をするエコノミストの世界では、こうした意見が目立ち始めている。
日本銀行によると、日本の個人金融資産の残高は、昨年九月末で千四百七十一兆円。その六割以上は、六十歳を過ぎた人たちのものといわれる。高齢者らは、家計に余裕があっても消費はそれほど活発でなく、貯蓄はあまり減らない。その一方で、四十代までの若い世代は家計に余裕がなく、思うように消費を増やせない。
誰でも思いつく打開策は、高齢の親から子や孫への資金援助。ただ、同じ人に年間百十万円を超す贈与をすると贈与税がかかる。
そこで、政府・与党は贈与税を緩める政策を推進。社会保障と税の一体改革の素案には、「相続時精算課税制度」の対象を「子」から「子と二十歳以上の孫」に拡大する案などを盛り込んだ。この制度を選ぶと、計二千五百万円までなら無税で生前贈与ができる。実現すれば、祖父母は子だけでなく孫にも贈与をしやすくなる。
高齢者らの貯蓄が多いことに目を付け、資産への課税を強化して税収を増やそうという案もエコノミストらから出ている。
社会保障の分野でも、高齢者から若い世代に金を移動させる施策はさまざまに考えられる。第一生命経済研究所(東京)首席エコノミストの熊野英生さん(44)は「例えば、介護サービスの利用者負担を増やして、サービス提供者の報酬を増やす考え方もある」と説明。「高齢者らの気持ちを推し量って施策の実現をあきらめる『忖度(そんたく)政治』をいつまでも続けてはいけない」と強調する。
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