曽我部絵日記

曽我部昌史の写真絵日記

取手&御宿&神戸

2008-05-29 | インポート

5月24日(土)

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今年で10周年を迎えるTAP(取手アートプロジェクト)のプロデューサー兼アーティストをみかんぐみで引き受けることになった。その関係で、久しぶりに取手(前に教員をやっていた東京芸大先端芸術表現科っていうのは取手にある)。ここは、今回のTAPの舞台となる井野団地。

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敷地の中央にある、井野アーティスト・ビレッジ。商店ゾーンの一部(一棟)を若手アーティストのアトリエとして転用している。芸大を卒業したばかりの人とか、中には現役の学生も。駅でばったり遭遇した知り合いの学生も、ここに入っているとか。

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この商業ゾーンには、このほかにもう一棟あって、そこにはパン屋、薬屋、理容店などがはいっている。スーパーはデイケアセンターのようになっていた。団地にパン屋の組み合わせで、小説「みなさん、さようなら」を思い出した。あれはケーキ屋だったか。

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アトリエの一つが活動拠点。はじめに、渡辺好明先生が今年のTAPを解説。井野団地ができて、一気に人口が増え、取手は市に昇格したんだそうだ。今でも二千戸以上あるのに、9割は埋まっている人気の団地。


それにしても、先端を離れてから、最初の年は横浜トリエンナーレで川俣正さんと一緒、去年は上勝アートプロジェクトでたほりつこさん日比野克彦さんと一緒、で、今年は渡辺さんと一緒。時々、先端の先生たちと活動を通してご一緒できるのはうれしい。今回は、知っている芸大の学生とも会いそうだ。


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それにしても、かなり大きな団地。中に公道が3本と川が1本流れている。真ん中を貫くジャングルは、桜並木。一度期にできた団地なのだそうだけれど、作った会社が混ざっていたとかで、建物の形式にはいろいろなタイプがある。

それに応じてなのかどうか判らないけれど、植栽の取り扱いもエリアごとに特色があって面白い。

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自己紹介的レクチャーを頼まれていたんだけれど、掲示板に案内が張ってあった(下の段中央)。屋外の掲示板に張ってあるのって、ちょっと新鮮だった。

プロデューサー的側面はみかんぐみで、アーティスト的側面はみかんぐみメンバーが関わっているそれぞれの大学がフォロー。今日は、神奈川大学曽我部研究室M1たちと探索。有志なんだけれど、M1はほぼ全員いた。午後から雨ってことだったんだけれど、もったみたい。よかった。

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ゲストアーティストの「生意気」。ちょうど彼らも現地に来ていて、自己紹介レクチャー。最近は植物に興味が向かっているらしい。やっぱり。こういうことって、なんだかシンクロしているような気がしてくるのが面白い。

もう一人のゲストアーティストの「Port B」とは、前日の黄金町バザールの会議で遭遇。かれらも僕も、今年の秋は、取手と黄金町の往復になりそう。去年の、上勝(徳島)と加西(兵庫)の往復よりは楽だな。

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学生たちとか地域の人たちとかが懇親会をやっている裏で、事務局の人たちと事務的な打ち合わせ。終わってから、アトリエとして活用している人の場所を見せてもらったりしてこの日は終了。雨が降り始めてました。


企画書見てるだけだと頭で考えるだけなんだけど、やっぱり現地に来るといろいろ感じることがあって面白い。


5月25日(日)

みかんぐみスタッフの結婚式で、朝から御宿に向かう。みかんぐみで誰かが結婚すると、スタッフ企画の出し物がかなりすごい。以前、BankART NYKで結婚式をしたときには、新郎を含めたみんながゲームのマリオのコスプレになって、最後はみんなが海に飛び込んだ。今度はどうなるのか。

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いろいろ芸が細かくて、まず出てきたのがこの箱。箱からはスタッフの一人が登場し、新郎にもの(着替え?)を渡して、なぜかプールに飛び込む。おそらく、多くの列席者は「なんだ、意外と地味な出し物?」って思ったに違いない。

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新郎は着替えはじめ、その間に、ホイッスルの合図に合わせてやってきたのが、この単管式お神輿。新郎の地元の裸祭りにちなんだものらしい。新郎が乗ったお神輿が、まっすぐ海に向かう。衣装も、この祭りのものに合わせているのだとか。

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で、みんなが腰くらいまで海に浸かったところで、突然、お神輿が傾き、新郎が落ちる(っていうか飛び降りる)。新郎は、海で何かを探している様子(結構離れているので詳細は見えない)。

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再びお神輿で戻ってきた新郎は、頭のハチマキにイセエビを挟み、おなかのサラシにマダイを差し込んでいる。これを、式場の料理長が受け取り、両手にもって調理場に走り、刺身になったのをもって戻ってくる、っていう趣向。鯛が少し大きくなっていたような気がするのは、料理長の腕か。

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披露宴に出席していたみかんぐみスタッフは、新郎と同期かそれより先輩だけ。なので、大半のスタッフはこのイベントのためだけにやってきていたわけだ。披露宴にでていたみんなも、安全管理のためこのイベントが終わるまで、アルコール抜き。気合いが違う。で、仕事を終えたみんなは、なぜか海に向かって…。それにしても、回を重ねるごとに大変になっていっているような気が…。


5月26日(月)

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神戸大学の遠藤秀平さんに呼ばれてレクチャー。いろいろな学科の人が混ざっている建物の中に遠藤さんの部屋はある。これはエレベータ前のロビー(2層ごと)。

遠藤研究室の4年生の課題を見たり、レクチャーをしたり、インタビューを受けたりで、4時間以上なにかやってた。関西弁の「イチビリ」が、僕の活動を解く鍵になるとかいう話に(意味はよくわかってない)。

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美々卯でご飯をたべて、建築家御用達なレストランでさらに飲む。座ったら、目の前にこんな人のサインが。心臓に悪いなあ。右はじの方のサインがきっかけで、こういうことになったとか。おなかはいっぱいなので、ワインとワインとワイン。

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ぼくたちはこっち。手塚貴晴+由比さんのには、別の人からの吹き出しコメント付き。ぼくも端に、小さく書いてきた。帰り際に、店の主人がブログを書いているっていうので見てみたら、どうやら遠藤さんの「森の10居」のクライアントみたいだ。言ってくれればいいのに(見せろ、っていわれるのを恐れたかも)。

店主のブログはこちら

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建築みやげコーナーもある。建築のことだけでなく、建築家の内情にも詳しそう。話し好きの店主なので、現代建築、モダン家具、植物、イタリア料理が好きな人には、特におすすめです
ということで、この日はおしまい。

ということで、まったく違う三日間でした。(車以外の移動が多いと、ブログが進む)

* * * *

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実施コンペ公開ヒアリング×2

2008-05-22 | インポート

5月10日(土)

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くまもとアートポリスで熊本駅西口駅前広場のコンペがあって、その公開ヒアリング(2次審査)。

さすがに駅前だけあって、注目度が高い。この日の熊本日日新聞朝刊一面最大面積。こんなこと、初めてじゃないかなあ。

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テレビも来ていた。結果はニュースでも報道されていたとか。「審査員席に座ってる姿がテレビに映ってました」って連絡まできた。こんなことも、アートポリスに関わるようになったから初めてのことだなあ。

結果は佐藤光彦案の圧勝。これまで東口側しか開かれていなかったわけなので、新幹線の開通にともなって新設される西口はいってみれば裏側(裏というと地方ではマイナスイメージがあるらしいけれど、そういうことじゃない、ね。裏~~で成功しているのは、そういう特徴をうまく力として活用しているもの)。そういう独特なロケーションを積極的に生かしたアイデア、難しい周辺環境の中での存在感に対しての説得力、駅前広場が引き受ける具体的なアクティビティに対する建築的対応、構造やディテールに対する検討など、だれもが不安感を抱かず、かつ、新しい広場への期待が高まるものだった。プレゼンもうまい。さすが。

それにしても、末廣さんが推していたのが、研究室の後輩の作品だったのには驚いた。とある飲み会で、こういうコンペでは、近い教育(経験)を受けている人が残っていることが多くなる、っていうような話をしてたら、すごく近い教育を受けてる人(割と有名な建築家)が、いつも出してるけどいつも残らない、って言っていた。まあ、そういうこともある。


5月11日(日)

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審査の後、打ち合わせ+懇親会で熊本泊。翌日、帰りの飛行機に乗るとき、空港のボーディング・ブリッジに、八代の博物館の写真が飾ってあった。懐かしくて、ちょっとうれしい(伊東事務所での担当作品。あのときぼくは、住民票的にも熊本県民だった)。

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羽田空港からBankART NYKに直行。みかんぐみ設計で改修工事が進んでいる。丁度、既存の床や階段の解体が終わりつつあるところで、ちょっと空っぽな感じ。

そこで現場見学会をやって、そのまま、現場の中でシンポジウム。異常に寒いが、司会という立場上アルコールは無し(車だし)。照明は投光器。

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ハンガートンネルは、建物の屋上に移動。きっとこの先は、ここで、ヘチマとかエンドウ豆とかゴーヤとかキーウィとかが育つに違いない(人が来るわけじゃないので、朝顔とかジャスミンとかじゃないと思う)。



5月17日(土)

間のウィークデーに誕生日を挟んで(事務所と大学とでお祝いしてもらった。どうもありがとう。どっちもイチゴのケーキ。そういうイメージなんだな。46になりました)、今週末も公開審査。大学での新入生歓迎の会(ジュースで乾杯)を最初の30分だけ出席して、そそくさと伊那へ出発。


5月18日(日)

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朝、審査の前に、ほぼ竣工している伊那の小学校に。教室は既に使われ始めている。

ガラスの衝突防止用に、加藤朋子さんデザインの「ジャンケンマーク」のシールが張ってあるんだけれど、2年生のゾーンに張ってあった手書きの壁新聞には、「…こんど、それとたいけつしてみたいとおもいます」って書いてあった。ほほえましい。

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どの教室にも、子どもたちの絵が並んでいた。担任の先生がそれぞれテーマを決めているみたいで、桜の木がずらーっと並んでたりする。

このクラスのテーマは重機。ちょうど、既存校舎の解体中で、大小さまざまな重機がある。図書室の窓から、ずっと重機を見ている子もいるらしい。楽しいだろうなあ。

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仮設の連絡通路。既存の解体が終わって、新しいのができるまではこれ。こういうのを見ると、なんでも川俣さんに見える(すいません)。

どんな建物になったのか、ってことについては、新しい連絡通路ができて、解体後の周辺の修景が終わって、遊具の移設などが終わったら公表します。秋くらいかな。

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で、澄心寺庫裏のコンペの公開2次審査。法堂(ハットウ)の仏様の前にスクリーンをたてて審査会。

オーディエンスの多くは、檀家の皆様。建物はこの写真の正面左手にできる。庫裏って要は住宅なんだけれど、みんな、ものすごいエネルギーのプレゼンテーション。どれができても意義深い。

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庫裏から西側を臨む風景。気持ちがいい景色。しかし、厳しい冬もまっている。そういうことに対応しながら、これからのお寺が引き受けるべき公共性への意識も問われる。


ヒアリングを終えて、実際にこの建物を使うことになる人たちも審査に加わり、意見交換。最終的には、宮本佳明案と小川次郎案の二つにしぼられ、さらに議論。まったく方向性の異なる案だったこともあって、こういう多様な判断基準が混在する建築の審査では、かなり悩む。最終的には建物を使う人たちの気持ちも強く反映された判断となった。

最優秀(とは言わないで、第一優先交渉者、って呼ぶらしい)は、宮本佳明さんのコンクリート製の100年保つ巨大屋根案。これまでの寺が引き受けてきた性格を、今日の状況に翻訳して、さらに将来につなげようという物語。いろいろな関わりが建築を変えていくようなものになりそう。プロジェクトの進捗がかなり楽しみ。そういえば、宮本さんのプレゼンも絶妙だった。勉強になるなあ。

ということで、気が重くも結構楽しく、とても勉強になるコンペの審査会ですが、二週連続っていうのは初めての体験。こんどは自分が出す側で頑張らなくちゃ。


* * * *

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