曽我部絵日記

曽我部昌史の写真絵日記

寒い! 冬のBankART妻有

2006-12-25 | インポート

12月20日(水曜)


もともと、寒い期間に一度は行かなくっちゃって考えていたんだけれど、
授業も終わり、年の終わりも差し迫ったところで、冬のBankART妻有に行くことになった。


目的としては、トリエンナーレも終わって冷静になったところで
建物の状況を確認することと、古いタイプの農家の寒さ体験と、
3年生のゼミ学生とプロジェクトの打ち合わせを兼ねた、一応、一石三鳥の企画。
いや、懇親っていうか飲み会も兼ねてるので(っていうか、それが主か?)、一石四鳥。


建物のある桐山ということろは、松代からさらに山を登ったところにあって、
冬の最盛期にはかなり雪が深くなる地域。そうなると、スタッドレスに履き替えたとしても、
FRのぼくの車にはかなり厳しい。ということで、レンタカーで向かうことにした。
学生が多いから(三年生だけで、しかも自由参加ということで数名の欠席者がいたのに、総勢15人。
二年後には修士2年もそろうわけで、そうすると、3、4年+修士1、2年合計で50人!
大型バスにも納まらないか)車は3台。


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まずは、レンタカー屋さんでチェーンの講習。


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キナーレ(原広司設計)の温泉によってから向かうつもりが、定休日。窓から無理矢理中をのぞく学生たち。


途中、買い出しをして、妻有トリエンナーレ関連作品をいくつか見学したりしながら、
夕方になって現地に到着。玄関には、網戸しか付いていなかったんだけれど、
ベニア板で塞いである。ドライバーでねじを外して中に入ると、あの懐かしい黒い空間。


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R&Sie建築事務所の作品(2003年)


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BankART妻有の玄関。ベニアがビスでとまっている。貼ってあるドライバーは、鍵っていうか、これで開けろ、ってこと。


食事(鍋と酒)をしながら、まずは来年の上勝(徳島)プロジェクトの報告を聞く。
実は、先週現地での構想発表会のようなものがあったのだけれど、
ぼくは熊本に行かなければならず、学生たちが現地に行って発表をしてきていた。
その発表の様子の映像をサカナに飲むという企画だ。
ここで十分酒がまわり、長谷川くんの個人的な映像作品などを堪能したところで、ぼくはダウン。

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元々のこの家の持ち主である、小山さんから差し入れの白菜。


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やっぱ鍋だな。奥にあるのはシーツのスクリーン。



12月21日(木曜)



寒くて目が覚める。ストーブが消えたとたんに急激に冷え込むようだ。
雪に埋まった風呂とか、ぼくたちが撤収した後に増設された作品を発掘したりしながら、
建物内外をうろうろしていると、なぜか靴下がところどころに干してあるのが目に留まる。
どうやら、ぼくが寝た後、いろいろあったらしい。3時くらいまで盛り上がってたみたい。
で、高校のころなら朝まで寝なかったはずなのにって、年をとったことを嘆いていた。ま、いいか。


朝ご飯を食べて、午前中は防災展のシェルター企画のミーティングをやって、
建物をもとにもどして、集合写真(!)を撮って、帰路に。
途中、mvrdvの農舞台や、手塚さんたちのキョロロによりつつ(昼ご飯を食べ損ねながら)、
小川次郎さんのマッドメンを見そこね(場所を間違えた)たものの、無事に横浜に戻って来たのでした。


今回は全く運転せずにすんだ。実際には、雪はそれほど厳しくなかったから、
ぼくの車でも全然オッケーだったんだけど、ま、こういうのも楽でいいな。


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雪の露天風呂。


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ウッドデッキは予定通り雪囲いに。


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ヤング荘のミニチュアが屋根裏部屋に鎮座。


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ここにも丸山純子さんの花が。


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松本秋則さんの呼び鈴(?)


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壁に絵が描いていある(額縁も絵)。誰の作品かは不明。


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いにしえの木製がちゃがちゃ。


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朝ミーティング。防災展シェルター企画のブレスト。


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農舞台の屋上。




モクバン発表会

2006-12-19 | インポート

12月16日(土曜)

くまもとアートポリスの関連イベントで「次世代モクバン実施設計を囲む討論会」っていうのが行われた。
昨年行ったコンペで、藤本壮介さんの案が選ばれ、一年かけて実現のための準備が続けられていたのだが、
今日は、その着工前を目前に控えた発表会。
アートポリスコミッショナーである伊東豊雄さん、アドバイザーの桂英明さん、
末廣香織さん(あと曽我部も)、球磨村の森林組合長である犬童義一さん、
そして藤本壮介さんが一堂に会しての討論会。


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伊東豊雄さんによる、はじめの挨拶。壁には原寸断面図。


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床には原寸の平面図。熊本大学桂研究室製作。新聞紙に赤ペンキ。


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会場に送られていた、全プロセスの模型。小さいのから大きいのまで、発泡スチロール製から木製まで、さまざま。


会場には、藤本事務所から大量の模型が届いていて(たぶん、この輸送料金だけで設計料はなくなってるんじゃないか?)、それだけでも圧巻。
一見みんな同じに見えるのだけれど、眺めているとその差異の背後にあるプロセスが思い出される(といっても、ぼくたちが知っているのは、そのプロセスの一部分)。

床には、新聞紙にペンキで描かれた平面図が敷かれ、壁には同様につくられた断面図がかけられる。ただの会議室に原寸が納まるサイズの建物なのだなあ。

原寸部材(段ボール板でつくった模型)や、実物のカットサンプル(といっても、35センチ角で長さが50センチくらい)もさりげなく置かれている。


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部材の原寸模型。段ボール板製。なんとなーく置いてあるのだが、このサイズ。


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右が実物のカットサンプルで、左が最終模型。


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模型による内観。


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部材を整理するのに用いたと思われる模型。



藤本さんの経緯説明にはじまり、みんなのコメントを重ねながら、
少しずつどういうことだったのかが明らかになっていく。
サイズが一回り小さくなったとか、ガラスの納まりが発明されたとか、
人が中で何人寝られるのかとか、いろいろなことが行われたわけだが、限られた時間のなかでは
その具体的な対応については触れられず、ちょっと残念。しかしながら、逆に言うと、
一つ一つを詳細にまで踏み込めない程、いろいろなことが行われたということだ。

犬童組合長からは、どのような判断で、どのように腹をくくったのかが語られ、岩下建築課長からは、
この建物がどのようにして建築基準法に適合しているのかが、その苦労とともに解説された。

さらには、構造を担当した佐藤淳さんが、なぜか子ども連れで会場にいて、
そのまま構造的な苦労というか、建築家がいかに構造設計者の
「これだけはやめてくださいね」という願いを無視するのかなどが、深い愛とともに吐露されたりもした。
もちろん、藤本さん自身のなやみというか判断というか、決断のタイミングみたいなことも語られ、
この建物をとおして、考え、悩み、解決して来たさまざまなことが、確認された。
サイズは小さいけれども、深いドラマを刻んで来た建物の一部始終が、
たくさんの証言で再現されたような会だった。


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構造設計を担当した佐藤淳さんが子ども連れで会場に(!)。構造的な工夫というか困難さについてコメント。


会場からの質問もいろいろ幅広くあって(最近のこの手の会では、あまり質問は出ない)、
聞いていた人たちも、このドラマに引きづりこまれていたんだなあと実感。
最後の伊東さんの総括では、伊東さん自身が感極まって涙ぐむ場面もあったりして、
いろいろな意味で感動的な会でした。

アートポリスの新しい時代が始まりそうなかんじです。

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会場からの質問も、最近のこういった会としては、かなり積極的。手前は、1年程前から熊本大学の先生になった、田中智之さん。


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シンポジウムの後は、同じ会場で意見交換会(いわゆる懇親会ですね)。藤本さんを囲む、地元熊本の学生たち。




ワークショップ×2

2006-12-01 | インポート

 11月25日(土曜) 


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会場となった九州デザイナー学院。入口には製作途中のお菓子の家がたくさんあって、甘~い匂いが立ちこめている。


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講師控え室は、子ども教育に関することを学ぶ教室の転用。


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プレゼンのひとつ。ロボットになる車止めの提案。マリオネット型の原寸大模型でのプレゼンでした。案の密度はともかく、そのプレゼンのインパクトが特徴的。


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ブレスト中。テーブルを囲んでいるのが塾生(=今回の受講者)で、後ろの人たちがオーディエンス。話し合っている様子を観察してます。



FUKUOKAデザインリーグという福岡市が支援をしている活動があるのだけれど、それのデザイン塾というものの講師で今日は一日福岡。午後一から夕方までのちょっと長めのレクチャーでした。


会場は九州デザイナー学院。FUKUOKAデザインリーグ関係だと、数年前に建築塾の講師で関わったことがあるんだけれど、デザイン塾の方ははじめて。

そもそも、こっちは、建築っていうよりは、グラフィックとかプロダクトとかインテリアとかよりで、社会人対象みたいなんだけれど、数年前の建築塾に参加していた学生が、今度は社会人として参加していた。


最初は、あらかじめ出しておいた課題に対する受講生たちのプレゼンテーション。昨年、BankARTスクールでやったのと同じ課題で、都市の意外な事実を発見してその活用方法を考える、というもの。

某衛生陶器メーカーの人が新しいタイルの形状の提案をしていたり、某マネキンメーカーの人が車止めがロボットになっている提案をしていたり、なんだか本業がうまく活用されているところが今回の特徴でした。


休憩を挟んで、簡単な講義をしてからワークショップ。簡単な講義、といっても、もともと2時間話すつもりのパワーポイントをすっごく飛ばして1時間で納めたんですが、その後で、みんなでアイデアをまとめるワークショップ。

ここからなぜか公開講座ということでオーディエンスがいて(佐藤卓さんの回とぼくの回が公開講座になってました)、講義はともかく、ワークショップの様子までも、後ろから観察。新しい企画だなあ。


で、震災被災直後の2、3日を過ごすためのシェルターをどうやって作るかを考えるという、いま、大学のゼミでも、もっとも旬なネタの一つを、九州で考えてみました。

短い時間ながら、学校の机や椅子を使うアイデアは使える権利を巡って争いが起きそうだからやめようとか、布団とか物干とか普通の家にあるものは数が限られるからなかなか使えなさそうとか、細かいところにも意識を向けつつ、一つの案をまとめることができました。さすが社会人。


で、オーディエンスは聞いてるだけじゃつまらなかったかなあ、と思ってたら、終了後、こんなの考えました、っていう人が数名。みんな積極的でした。


終了後は近所の居酒屋で飲んで打ち上げ。



 11月26日 


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素材の竹とい草。その向こうで、説明を聞いている参加者たち。


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話し合い。まとまらなさそうに話し合っていても、
ちゃんとまとまる。子どもの臨機応変さには脱帽です。


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がんがん作ってます。


朝早いバスで熊本へ。くまもとアートポリスの関連で、小学生対象の家作りワークショップの講師です。近所の山でとれる竹と、八代特産のイグサ(畳表の原料ですね。国産の90%が熊本産です)と、和紙が材料。県建築課としては、はじめての企画で、みんな緊張気味?。

9時半くらいに現地についたら、熊本県立大学(会場はここの体育館)、熊本大学、熊本崇城大学の学生たちスタッフが、すでにミーティングをはじめてました。
みんなは一日建築家だよ、ってことで、どんなことを目標に家を考えるのかを話したりして、さっそく製作スタート。
割と順調に方針が決まっていって、子どもたちは真剣。さらに、学生たちだけでなくて、お父さんお母さんも頑張っていて、どのグループも予想よりもずっと大きなものが・・・。
昼をはさんでどんどん組み上がって行ったものの、さすがに予定の2時には完成できず、2時半まで延長。


最後に、グループごとに特徴とか自慢とか工夫とかを説明してもらって、簡単な講評をして、記念撮影して、無事終了。全部で7グループあったんだけれど、どれもみんなそれぞれの特徴があって、こどものオリジナリティがあふれてました。講評もしやすかった。大学生たちの誘導が良かったのかな。子どもたちもみんな満足気。そりゃそうだろうなあ。家一軒立ったんだし。

で、これは2週間程、県立大構内に展示させてもらえるということになっていて、完成した7つの家を展示場所までみんなで運んで、会場の後片付けをして、ワークショップは完了。

最後に、手伝ってくれた学生たちに、簡単なスライドレクチャーをして(昨日、2時間ものを1時間に短縮っていうか急いだやつを、さらに急いで30分ものに。枚数減らしてないから、4倍早口?)、空港へ。最後はなんだかバタバタでした。



ということで、大人とのワークショップと、子どもとのワークショップ。ワークショップ三昧な週末の報告でした。



ついでの宣伝ですが、12月16日(土曜)、肥後銀行水道町支店にて、藤本壮介さんが昨年コンペで一等となった、次世代モクバンの実施設計お披露目討論会を行われます。藤本さんはもちろんのこと、伊東豊雄さん、桂英明さん、末廣香織さんらが一堂に会しての討論。次回モクバン企画についての発表も行う予定です。建築の冬は熊本、ってことで。



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1班。玄関扉やテラス付き。外壁はい草のみにこだわってる。


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2班。巨大すだれ式で、折り畳んで運べるようになっている。


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3班。細かい工夫満載の家。屋台みたいに運べるようになっている。


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4班。間取りから立ち上げてできた家。間仕切り壁もあります。


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5班。カラフルな三角の家。
外壁の仕上げが面ごとに違えてある。


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6班。外壁はい草と和紙のツートン。
四角いちょっとミニマルな家。


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7班。丸い平面の家。外壁は葉っぱでデコレーション。