曽我部絵日記

曽我部昌史の写真絵日記

バローでの一週間

2007-12-26 | インポート

熊本経由(?)で、イギリスの北の方にいってました。まともに全部書くと大変なので、軽~く行った先の紹介など。


12月8日(土)

前日から、またまたくまもとアートポリス関連で熊本。


この日は、もくばんR2の最終審査。3段階にわたる大変なコンペだったんだけれど、1回目から選ばれ続けている、設計室の渡瀬正記さんと永吉歩さんの「Wooden Lace」が選ばれました。

このところのアートポリスはかなり盛り上がってます。新たに、小学校のプロポーザルが二件同時に募集されます(みかんぐみでやりたいくらいだけれど、当然ながら審査員は出せない)。

ワークステーションで設計を進めている体育館がそろそろ着工(来年秋竣工)、藤本壮介さんのもくばんもそろそろ着工(ゴールデンウィーク前に竣工)、西沢立衛さんの駅前広場も設計が始まって、これに渡瀬さん達のもくばんR2。たのしみです。で、懇親会を遠慮させてもらって、この日の内に成田。(熊本は写真を撮り損ねました)


12月9日(日)


朝の早い便で、パリ経由マンチェスター行き。そこから電車で2時間半弱。工業都市バローに到着。夜11時に宿についてひと休み。寝てたら、夜中に事務所からの電話で起こされた。

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電車の切符がこれ。CHEAPってのは普通席ってことみたい。言葉の感覚がちょっと違う。


12月10日(月)

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電話のせいか時差ぼけもなく普通に起床して街にでるものの、暗い。朝は9時前にならないと明るくないし、夜は4時前には暗くなる。南中高度もとても低い。写真は朝8時半の街一番の繁華街の様子。

今回Art Geneはっていうアートイニシアティブ的な機関の関係で、この街のテラスハウス相手に団地再生的なことを考える、っていうリサーチプログラム。みかんぐみのメンバー4人が順番にやってくる。本当は2週間強の予定だったんだけれど、さすがにいろいろまずいことになりそうなので、無理矢理1週間に変更。それにしても、Art Geneって、同姓同名がイギリスにあるんですね。

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定食屋(?)的な場所で食べたポテトとひき肉のパイ。Art Geneのスチュワートは、子供の頃の食事を思い出すらしい。いろいろ食べたけれど、これが一番好きだったかも。マニュエルにはレンガみたいだったらしい。っていうか食べ物にあまり期待しちゃいけないところみたいだ。


12月11日(火)

この日はなぜか、Art Geneを運営しているもう一人、マディの企画した、子供相手の現代建築巡りに同行してマンチェスターに。フリースクールの子どもたちを対象とした建築教育のためのツアー。いままでは大人相手にやっていたのを、これからは将来に期待して子供に教育をするんだとか。

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こういうのとか(ジェームス・スターリングが亡くなる直前に手がけていたとか)

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こういうのとか(リベスキンド)を駆け足で見学する中で、興味深かったのがこれ。


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典型的テラスハウスのリノベーション。道路側の外壁だけ残して、屋根も中の床も何もかも全部新調。日本でも歴史的建築のファサードだけを残す「これでいいのか?」っていうリノベーションがあるけれど、これは相手が相手だけに、さらに衝撃は大きい。

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看板のパースがこれ。中庭側の真ん中の通路部分を駐車スペースにして、テラスを2階レベルにあげている。煙突はキッチン用のトップライト。もう販売の済んでいるブロックもあって、価格を忘れたけれど、1億に近かった。それが、即日完売だったらしい。考えさせられるなあ。

そんな話をしていたら、テレビ番組を録画したDVDを貸してくれた。技術的地域的時代的な根拠無く、懐古趣味的な様式にみんなが向かってしまっている、っていうことを読み解こうっていう壮大な企画。長崎のオランダ村とかも出てきてちょっと恥ずかしいが、イギリスも同じ病魔にやられてるってことか。


12月12日(水)

この街の最大の問題は食べ物。朝、9時よりも前に開いているところは、マクドナルドとサブウェイしかない(でも、マックの朝食は週に1度)。

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マクドナルドは椅子がヤコブセン。日本だと似せて作ったやつだったりするんだけれど、さすがに近隣国だからか本物だった。

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並びの不動産屋でテラスハウスの値段とかも見てみた。街中の平均的なタウンハウスはこんな値段(7万ポンドくらい)。リノベーションが必要なのだと、もっと全然安い。10年くらい前、町中の雰囲気が遥かに悪かった頃は、10分の1くらいの値段だったらしい。

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僕たちのスタジオ。とても広い。中二階もある。このくらい余裕のあるスタジオはうらやましい。日本でも、遠くにいけばいいんだろうな。

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大きなギャラリーもある。会期は終わってたんだけれど、都心の文脈をテーマにした展覧会の作品が残ってた。そのなかの一つ。ラップとかタバコとかパッケージの箱から文字情報を削除した大量の箱。乗り物のようだったり建物のようだったり。

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スチュワートがつくったムール貝。おいしかった。そのまま飲みながら彼の作品をみる。今は、むやみに巨大なリモコンとかダーツとかをつくってるけど、言葉の意味を問題にした作品群とか、ちょっと批評的な映像作品群とか。多彩。


12月13日(木)

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街の関連施設見学にまわる。これは、ドック・ミュージアム。古い造船のドックの上に屋根をかけて作った資料館。街の歴史を紹介する映像が6本。

で、判ったのは、割と近くに大きな修道院の廃墟があるものの、基本的には鉄鋼業に始まる工業都市。日本の工業都市は、何らかの歴史があったところが工業に軸足を移す、ってことだと思うけれど、ここは、数件の漁村が突然工業都市になったらしい。そういわれてみると、街も機械の一部のように見えてくる。

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BAE SYSTEMSっていう潜水艦の工場。長く各国の軍事用潜水艦を製造していて、今は原子力潜水艦をつくってる。でかくて街のどこからでも見える。どうしようもない感じの存在感。

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でも、図書館に飾ってあるのは潜水艦とか潜水艦工場とかの絵だし、

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スーパーに付属している食堂に飾ってるのは、昔の造船工場の写真とか。

みんな、戦艦を作って来た街としての歴史を誇りに思っているので、潜水艦工場の巨大さも嫌いじゃないんだろう。戦艦三笠をつくったのもここで、映像では日本にはそれにちなんだ三笠公園がある、って紹介していた。


12月14日(金)

だんだん街の骨格とか背景とかがわかってきた。

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街の中心部には、工業都市として作られた当初のテラスハウスが建ち並ぶ。道路に面した正面側には車が並ぶ。できた頃には車はそんなになかったし。

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裏側の路地。典型的なイギリス式のテラスハウスで、この路地部分がフェンスで閉じられているところもあった。


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街の北の方には、少し高級なテラスハウス。これもかなり古くって、工場の経営者クラスの人たちのためだったとか。工場の匂いや音の感じられないところにつくったんじゃないかっていうことでした。庭もある。

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その北のエリアから、さらに東に入ったり北に行ったりすると、割と最近の高級住宅エリア。芝生の庭付き。まるで戸建てみたいなセミデタッチドハウス。

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南に行くと海なんだけれど、細長い島があって、そこにも最近の住宅エリアが広がっている。90年代前後(らしいが、聞いた相手もプロじゃない)の建て売り住宅。絵に描いたようなセミデタッチドハウス。

ということで、社会階層ごとに割と判りやすいエリア分けがあって、しかもその全部が歩いていける範囲にある。


12月15日(土)

おまけ。

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Peter Green Wayっていう道。シャレか、って思ってスタジオの人に聞いたら、シャレだって思ってるのはここにいる数人で、普通にPeter Greenさんにちなんだ道らしい。そりゃそうか。

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外を歩いていると寒くって、ケンタッキーフライドチキンでコーヒーを買ったら、砂糖とミルクが三つずつついて来た。いれすぎだろ。

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木製仮設フェンスの基本ディテール。ちょっと厚手の木を重ね張りしてる。

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スーパーマーケット付属のレストラン前にある、カート入れ。清算の終わったものをカートごとここに置いておいて食事して、その後に駐車場にいく、ってことだ。

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図書館のカウンターには飲み物の販売機がある。

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おむつ替えの場所は、「Baby Change」。ちょっとびっくりするネーミング(知ってる人には当たり前なんだろうけれど)。


ということで、1週間の滞在が終わり。16日の12時の電車で出て17日の夜に到着。帰りも結局時差ぼけなしで普通の毎日。そういうもんかな。




週末の地方巡業のつづき

2007-12-06 | インポート

11月16日(金)

この週末は、アートポリスの公開審査会と、大阪で小学生のワークショップ。くまもとアートポリスの打合せのため、夜熊本県庁に。


11月17日(土)

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朝早くから、熊本駅前広場の指名プロポーザルの公開審査会。よく知っている建築家がたくさん参加しているプロポーザル。公平に議論するのは当然なんだけれど、いろいろと気を使うもんだ。結構、大変。夕方、西沢立衛さんを設計者として選定。明日のために、夜の便で大阪に。


11月18日(日)

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宿泊したのは、アーティスト藤浩志さんの部屋。バードロッジと銘打って、全国のいろいろな場所に拠点を作っていて、プロジェクトの関係者に開放してくれている。ここはその大阪ブランチ。南に、淀川ごしの梅田の街を臨む。

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用事は、松井山手ということろで、小学生相手の基地作りワークショップ。地元の学生たちのチームが協力してくれていて、今回は、学生たちが、子供がカスタマイズしやすいように工夫をしたフレームをあらかじめ考案し用意する、っていうことにした。こういうのとか、

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こういうのとか。基本は、身近にある素材をもちいて基地をつくる、っていうことなので、フレームもなるべく、身近なもので。

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始めるなり、フレームを解体したり移動したりして、三つ分まとめて制作するグループなどが出現。こういう、当たり前のようにアグレッシブなことをできちゃうのが面白い。

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お父さんによると、かれは日常的にこういうものの制作を頑張っているとか。名前が僕と同じ(漢字が)らしい。

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必ず窓をつくろう、ってことにしたんだけれど、こういう覗き穴とか、どれにも独特の窓がついている。

爆風に煽られて倒壊する家(基地?)も出たけれど、そういったハードルも克服しつつ、無事完了。会場を片付けて、学生たちと打ち上げで飲んでから、藤さんのバードロッジへ。熊本と大阪の週末が完了。


11月22日(木)

この週末(3連休)は日本文化デザイン会議。授業を終えて、最終の飛行機で神戸に。研究室の学生たちは、昼のうちに到着している。


11月23日(金・祝)

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単管足場のシステムを用いた、避難所の拠点施設のモデルを制作するのが初日の仕事。朝8時、現地に学生たちが集合し、部材の搬入に立ち会い。このアングルで定点観測をしようと思ってとったのがこの写真。


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100円ショップの水平器でレベルをとりつつ、ベースの高さ調整。くさび形のジョイントで組み上げるシステムなので、素人でもかなりスピーディーに制作が進められる。快調。

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計画をしたのは神奈川大学曽我部研究室と武蔵工業大学手塚研究室。制作は神戸大学、大阪工業大学、神戸芸工大の学生たちも手伝ってくれた。

で、この写真が朝11時前。この日の写真はこれが最後。というのも、昼食直後に突然の嘔吐と下痢と手足の震えで全く機能しなくなった。ただ、日本文化デザイン会議のためにも取材の対応だけはしなくっちゃと思って、4時すぎまで頑張って、あとはホテルに戻ってダウン。朝まで室温最大に設定して爆睡。定点観測はできませんでした。


11月24日(土)

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横浜に戻るかどうか迷いつつ、朝ホテルのロビーで馬場璋造さんに症状のことを話したら、とても心配をしてくれつつ「そういえば先週わたしも同じような症状で、そのままドバイに行ったんだけれど、ドバイの2日目でなおりましたよ」っておっしゃっていて、そうか、もうちょっと様子をみつつ頑張ってみよう、と思いなおした。

ところでこれは、会場にあった、包丁とかはさみとかでつくった鷲(?)。怖い。

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水没コンペ公開審査会場。今回の日本文化デザイン会議の会場は、遠藤秀平設計のビーンズドーム。巨大な防災拠点施設で、普段はテニスコートが9面の体育館。その、テニスコートで様々なプログラムが行われる。段ボールを敷いて座布団の椅子で審査会っていうのは新鮮だったけれど、体の不調はどうにもならず、どっちかっていうと、早く帰りたいなあ、っていう気持ちばっかり。

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夕方まで、コンペの審査前半→デザイン会議開会式→シンポジウム「生き残り建築家」パネラー→コンペの審査後半&表彰式、と順番に続き、何とか持ちこたえて、この日の役目は完了。歓迎レセプションとか、翌日の式典関係その他のプログラムを一式失礼させていただいて、帰路に。次の日も含めて、結局、50時間くらい何も食べなかったら元気になった。週末だけで解消しているのが、うれしいような残念なような…。


最後に、足場システムで作ったものを紹介。被災時に活躍する、汎用品の足場システムを利用したシェルターをつくる、っていうのが目標。曽我部研究室は、拡張可能な防災拠点システム。


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これが曽我部研究室のシェルターの全体像。情報ラウンジ(休憩場所)を中心に、調理スペースや授乳室などが放射状に取り付く。外周はキャンチ型の足場を利用したベンチ。

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外周のベンチでお弁当を食べる親子。斜めに引っ掛けた足場板が背もたれになっている。

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座敷のスペースもあって、ここで弁当を食べる人も。「ぐらぐらタウン」っていう防災知識育成ボードゲームを体験できることにしていたんだけれど、集客にちょっと失敗。

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情報ラウンジ。テーブルもベンチも足場。HPシェル型の屋根がかかっている。

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一応、手塚研究室のものも紹介。巨大な回廊になっていて、なかでイベントができる。回廊を走り回ったり上ったりする子供も。回廊に並んで弁当を食べる人たちもたくさんいたみたい。