曽我部絵日記

曽我部昌史の写真絵日記

兵庫県加西市

2006-06-23 | インポート

6月16日(金曜)



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田んぼがとてもきれい。


兵庫県の加西市に行く。
巨大な雨雲が東京に向かってきていたので、前日の最終の新幹線で大阪まで入っておいた。そのため、予定より早く加西市に到着(新幹線は止まってたようだから正解だったみたい)。加西(北条町駅)までは新大阪から高速バスで1時間ちょっと。高速道路を降りると、田植え直後の美しい風景が広がっている。
午前中のうちに到着したので、まずは、北条町駅周辺で情報収集。古い寺社建築とか古代の石仏とかウダツの町並みとか、いろいろな名所に恵まれた長い歴史をもった街みたい(その他にも、近々移転予定のサンヨー創業地があったり、海軍鶉野飛行場跡っていう細長い空地とかもある)。




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田んぼと林の中を走り抜ける。ため池も多い(高松よりも多いと思う)。ちょっとした幻想のような風景。


待ち合わせの時間まで少し余裕があったので、北条鉄道に乗ってみることにした。全8駅の単線で、走っているのは1両編成。両端の駅以外は全て無人駅だ。
車両の先頭を陣取って観察+写真撮影。ほとんど乗り物系おたくだな。割とスピードは速くて、田んぼと林の中を不似合いなスピードで走り抜けていく。先頭で見ているせいか、浮世離れした雰囲気が広がる。あまり起伏が無いので自転車で走っても気楽で楽しいだろうなあ。
あっという間に終着駅の粟生(あお)に到着。ここで、ゼミの学生・滝沢くんと合流して、北条町駅へ引き返す。



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名物「どろ焼き」。ちょっと腰の強いのもんじゃを、スプーンですくってダシにつけて食べるというようなもの(実物の写真もとったんだけど、ちょっとグロいので掲載自粛)。



駅前で名物「どろ焼き」というのを食べたあと、市役所の人につれられて市役所へ。市長にいろいろな話を伺う。
中川加西市市長は、某超大手ゼネコンの開発部でいろいろな大規模開発に携わっていた人。やり手だったに違いない。その頃のノウハウなども生かしつつ、市の運営をドラスティックに改革しようとしているらしいのだけれど、その発案のひとつひとつがおもしろい。役所の人というよりは、起業家的な感じ。
市の特徴的な場所などについて一通りの説明を受けた後、夕食をとりながら意見交換をすることを約束して、街へ。


秘書課の人の運転で市内をくまなく探索。黒塗りの公用車だったんだけれど、そこから怪しい坊主頭と若者が降りては写真を撮って立ち去るわけだから、事情を知らない人にとっては、結構、怖い風景だっただろう(事情なんて、当然、誰も知らないわけだが)。



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播磨横田駅。雑木林の中に駅をつくったわけではなくて、ホームの上だけが雑木林化している。



興味深い場所がたくさんあったんだけれど、その中でも北条鉄道での体験は、とても楽しいものだった(他にも新しい体験はいろいろあったんだけれど、ここで全部触れるのはちょっと無理)。


北条町駅側から順番に南に下っていったのだけれど、はじめの駅が播磨横田駅。ここはホームの上が雑木林化している。周りは水田だから、駅だけジャングルみたいな感じ。
百年くらい前にできた鉄道だっていうことだから、駅ができたばかりの頃に軽い気持ちで植えた植え込みが、ものすごく育っちゃった、っていうことだろう。



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長駅。手書き看板。この手作り感、駅に対する思いにあふれてる。ただきれいなだけのサインじゃ、こうはいかない。


北条鉄道では、新社長(=市長)の発案で、無人駅の駅長を公募したのだそうだ。給料は無いけれど毎日通勤する必要もない。制服は支給され、北条鉄道は乗り放題。なによりも、駅の活用方法を企画し実行したりできるらしい。
ぼくもどっかの駅長やってみたいなんて思ったが、それはともかく、既にいろいろなタイプの人が応募していて、それぞれの駅長さんのアイデアをもとに、個性あふれる、かつ自分たちの手で作り上げる駅となる、っていうわけだ。
北条鉄道には駅舎のない駅もあるんだけど、駅舎はなくても駅長はいて、その駅を愛着をもってプロデュースする。ウマい手だ。で、次の駅は長(おさ)駅なのだけれど、長駅の駅長は長駅長(上から読んでも下から読んでも・・・市長談)。



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法華口駅の待合室は自転車のための場所。この自然な感じの並び方が、自転車が人格をもっているかのような雰囲気をつくっているのかも。


長駅を離れ、巨大なシンボルツリーの播磨下里駅(立地の雰囲気はぴか一)を経て、その次が法華口駅。ここは特におもしろい駅だった。
ここは駅舎のある駅なのだけれど、まずびっくりしたのが、駅の待合室部分が駐輪場化していること。自転車が放置された廃墟っていう感じではなくて、人格をもった自転車が休憩している感じ。

そしてホームに出てみると、花壇が一列に並んでいる。ここの花壇は地域の人たちによる責任監修方式。みかんぐみの作品「音符の庭」と同じコンセプトだ。枕木で囲まれた1メートル角くらいのスペースが一人分で、ひとつひとつ表札(?)がついている。10ロットくらいあるんだけれど、それぞれ特徴があるだけでなく、例外無く全部きちんと管理されている。

最後にとどめをさしたのが、たまたまやってきた電車を下車した高校生二人の帰宅ルート。
電車を降りるなり、当然のようにホームから線路に飛び降りて、線路を歩いている。まるで、スタンド・バイ・ミーだ。途中、線路とあぜ道の交差点を右折していった。


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ネームプレート付きの花壇。イングリッシュガーデン風もあれば、キャラクターグッズ系もある。

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線路を歩いて帰る高校生二人。



田原駅にはベンチに囲まれたベンチがあったり、網引駅にはものすごい巨木があったりと、何気ない風景の中に、ちょっと楽しいところがちりばめられている。こういう楽しさって、絶妙な自由度と、関わる人みんなのちょっとした気配りや知恵で成り立っているのだと思う。その結果、場所や環境の生かし方というか見立ての技術としては、かなり高度なものになっている。見た目のゆるさとは裏腹だ。
普段、東京で利用しているような、スペック重視型な判断基準でつくられた鉄道駅では、絶対に得られることのない楽しさ。こういう環境って、とても贅沢だ。
画一化したものをうらやましがるよりも、そこにしかない特徴の生かし方を考える方が、いろいろな水準でずっとしあわせになれるんじゃないかと思う。周りの田んぼも、信じられないくらいに美しいし(関係ないか)。


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ベンチに囲まれたベンチ。

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これだけ大きな木があれば、ホームに屋根はいらない?かも。





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市長と記念撮影。
かなり飲んだ後なので、酔っぱらってます。


夕方には宿について、温泉につかって、マッサージチェア(地元サンヨー製。無料で使える)を堪能してから、市長と晩ご飯。
市長が内緒で持ち込んだお酒(米も水も加西産。醸造元も加西市内)や紫黒米入りのご飯などはとてもおいしかったし、みんなで部屋で見た北条鉄道のテレビ番組(バラエティ系)もおもしろかった。そして何より、話がいろいろと盛り上がって、とにかく楽しかった。
この市長は、今日的な社会状況への理解が深い上に、発想も革新的。実現を躊躇しない実行力もありそう。
これからの加西市、ひょっとすると、ひょっとするかも。





大学の先生

2006-06-16 | インポート

みかんぐみの作品に触れたら、大学の先生としての活動にも触れないと、片手落ちですね。
この間の3月までで、5年間関わってきた東京芸大先端芸術表現科を離れ、4月から神奈川大学建築学科で教えています。今週は大学での日々の活動を紹介したいと思います。




6月5日(月曜)
建築デザイン輪講1


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街のネタを探せ。
提出場所は、ドラかみかんかぐ(みかんぐみの作品。ドラえもんカラーのかみかんかぐ)の上。

神奈川大学の建築学科は、デザインコース、環境コース、構造コースの3コース制。
ぼくはデザインコースの教員なのだけれど、建築デザイン輪講1は、デザインコースの全教員が順番に担当する演習系の授業。3年生必修の即日設計みたいなもの。

先週が担当の回だったんだけれど、先週木曜が、同じ3年生がやっている設計製図の課題(建築デザイン2)の提出だったので、こちら(建築デザイン輪講1)の作品の提出を今日までのばしていた。
課題は「街のネタを探せ」みたいなフィールドワーク的なもの。本当だったら一緒に街を歩きながら議論するのがいいんだけど、7,80人の学生を連れて歩いたら、大変なことが起こりそうなので断念。この辺が私立大学の難しいところだ。
まだ見ていないのだけれど、目から鱗の提案があるといいなあ。





6月6日(火曜)
建築都市論

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先端芸術表現科の建物の屋上からの風景。日本っぽくない風景。

東京芸大の時の授業(講義科目)が一コマ残っていて、火曜の朝一はその授業。でも、今日は事情があって休講。

大学を移ったことによる、つなぎの対応のために担当している授業なのだけれど、これが大変。
先端芸術表現科というのが、茨城県取手市にあるというのが大変さの最大の理由で、1コマの授業のために、朝6時半過ぎに家を出て、横浜に戻ってきたら昼御飯時をとうに過ぎている。内容的には、毎年テーマを決めて(今年のテーマは「防災」)、そのテーマに即したゲストに話をしてもらうというもので、はじめての人に会えたりするのは、とても楽しいのだけれど・・・・。毎週朝6時は体力的につらい。他の仕事に影響が出ないように、朝一の授業にしたのが失敗だったかなあ。今年限りかなあ?限りだなあ、きっと。

で、今日は、研究室で進めているBankART桜荘の打ち合せや、研究室で協力している妻有トリエンナーレなどについて、大学でミーティング(ゼミでの活動の大半はミーティング)。





6月7日(水曜)
都市計画特論1+ゼミ



大学院の授業。ぼくの前任者の専門の関係で、都市計画特論っていう名前になっている。
ぼくがやっていることも、まあ、その枠の中のことといえなくはない。今年のこの授業のテーマも「防災」。厳密にいうと、とあるところで震災後の2、3日を考えるというテーマの展覧会が計画されているのだけれど、その内容を深めるためのアイデアをみんなで探る、というゼミ形式のもの。いくつかの視点での検討が平行して行われている。
その後、いろいろな打ち合せを挟んで、夕方からはゼミ。ゼミで進めているいろいろなプロジェクトについて、担当者からの報告とその確認。それぞれのプロジェクトが割と忙しい時期なので、今日は最低限の確認のみでゼミは終了。
打ち合せの合間を縫って、明日のショートレクチャー用のパワポを作成した。おのずと、研究室でやっている仕事の紹介が中心に。


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教員個人の部屋になっていたところをPC作業室に開放、というか、設計事務所仕様。

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残りの半分はミーティングスペース。
ほとんどはこっちにいる。となりの小さな倉庫の片隅を個人スペースにしてはいるが・・・。




6月8日(木曜)
建築デザイン2+附属高校一日神奈川大学生

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講評会。
模型を眺める伊藤寛さんと、図面を眺める西田司さん。

年に一度、附属高校の高校生が一日神奈川大学生としてやってくることになっているらしく、今日がその日。
受験を目前に控えている3年生が来るのかと思ったら、高校に上がったばっかりの1年生。建築学科の見学に来たのは8人。8人が多いのか少ないのかは不明だけれど、とても熱心に聞いている。

午前中、簡単に大学での活動を紹介して、午後からは、3年生の第一課題の講評会に参加してもらう。たまたま今日が講評会で、ちょうど良かった。課題は、野毛の丘の上にある中学校を建て替えるというもの。この大学の3年生の課題では、割と学生のガッツが入っていて、模型の迫力もあるし図面も多い。下手な卒業制作よりも密度があるかもしれない。
高校1年生たちの反応は、総じて「すごーい(あんな事自分たちもできるようになるんだろうか・・・、というニュアンス)」。不安にさせてしまったかも。




6月9日(金曜)
BankART桜荘


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現地でミーティング。
狭いのでサッシを外してる。

神奈川大学のぼくのゼミでやっている「BankART桜荘」の定例会。先週紹介した、カフェ「soboro」はみかんぐみとの共同なので、研究室単独ではこれが初の具体的プロジェクト。
黄金町のちょんの間をアーティストのためのスペースに改修するという計画なのだけれど、デザインの余地もあまり無いし、予算もわずかだから、施工体験としてちょうどいいか、っていうのではじめたもの。いや、正確には、学生がどうしてもやりたい、っていうので、やることになったプロジェクト。
で、これが、はじめてみたら、予算規模も要望も大きくなっていて、つまりは、作業量も責任も飛躍的に拡大していて、仕事としてのやりがいはあるのだけれど、みんないろいろな意味でギリギリ。とてもドキドキしながらのお仕事。学生たちはみんな寝不足。
で、毎週金曜は、地域の人たちや区役所の人たちも参加する、現地での定例打ち合せ。今日は警察の人との顔合わせもあった(地域柄、そういう打ち合せも必要)。大学に戻ったら夜10時。そこからとりまとめのミーティングをやって、お開き。予定の50倍くらい負荷がかかってきてるなあ。




6月10日(土曜)
総合講評会


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総合講評会の聴衆。ゲストで非常勤講師の山田良さんが撮影した写真をいただきました(ぼくは撮り忘れた)。

朝一で学科(3コース全体)の会議。昼食挟んで、引き続きデザインコースの会議。その後は年に一度の総合講評会。
昨年度の課題の優秀作品を、1年生の課題から3年生の課題まで通しで講評する、というもの。

ぼくは、ここでの教員を始めたばかりで(非常勤講師もやっていなかった)、去年の作品のことは全く知らない。全作品はじめての体験だった。今日は、新鮮な気持ちで講評を眺められる最初で最後のチャンスだっていうのに気がついたので(来年以降は、大半の作品を知っているはずだから)、客観的観察に徹することにした。
大雑把には3年間で大きく成長している様子が見て取れたわけだけれど、より詳細には、いろいろ傾向に気がついた。この分析をどう生かすかが問題だ。大変革を試みてみようかなあ。いややっぱり、節度ある大人の対応の範囲をちょっと越えるくらいがいいか。いや、でも・・・・・・。
ともかく、本日来てくださった、特別ゲストの乾久美子さんや丸山美紀さん、非常勤で関わってくださっている建築家の方々に、心から感謝。



ということで、みかんぐみの一週間に続いて、今週は大学の先生としての一週間を追ってみました。
実際には、両方を平行してやっているわけですね(いろいろなところで混ざり合ってますが)。振り返ってみると、今週は大学関連イベントが多い週だったな。





みかんぐみのお仕事1:建築設計編

2006-06-08 | インポート

そういえば、ブログをはじめて一ヶ月になろうっていうのに、みかんぐみの仕事にあまり触れてなかった。
みかんぐみはぼくを含めた4人が共同で主宰する設計事務所。割と(かなり?)広いレンジで仕事をしています。今回は、日々のみかんぐみ仕事を紹介します。




5月29日(月曜)
横浜の保育園



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保育園の外観。


竣工を目前に控えた、横浜の保育園の現場へ(大学から車で20分でついた)。直接担当して関わっていたわけではないので、現場に行くことはあまりなかったのだけれど、竣工するのはいつもうれしいもので、現場では、コンペの時にこだわった、道路や地面の高低差と、建物内の床レベルの関係が、割とうまくいっているのが確認できた。現場の途中で気になっていた内装の問題もキレイに解決してる。奇を衒ったものではないけれど、とても気持ちのいい建物になっていた。中央アーキ(今回の協力事務所のひとつ)の外構計画が縮小されちゃってるのが、心残りではあるけれど。
たまたまだけれど、ぼくを含めてみかんぐみ関係者の大半が、上が緑で下が黒なコーディネート。この建物の門柱のタイルとフェンスの色もグリーン(地面はアスファルトだから黒)。ものすごい偶然だったんだけど、施主の前だっただけに、緑色記念撮影は断念。



5月30日(火曜)
北九州イノベーション・ギャラリーの家具(北九州デザイン塾)



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モックアップのひとつ。フェルトとスポンジがサンドイッチされている。


北九州のスペースワールドの隣に、(仮称)北九州イノベーション・ギャラリーという建物が建設中なのだけれど、昨年度、そこで用いる家具を、みかんぐみ+北九州の地元の学生たちのチームで考えてきた。
北九州付近にある大学の、さまざまな分野(デザイン系だけでなくて、文化人類学とか経済とか)の学生たちが集まってつくった混成チーム。このチームで半年かけて議論し考えたことを、共同アトリエの矢野さんの協力を得て、みかんぐみでその実施に向けた設計を行った。こういう建物で使う家具を、簡単にカタログから選ぶんじゃなくて、時間をかけいろいろ考えながら決めていくというプロセスは、今日の建築にとってとても大事なことだ。考えたり悩んだりこだわったりは一瞬だけど、できた建物は僕たちが死んだ後も、きっとある。
で、今日はそれを再確認するため、大学の合間を縫っての打ち合せ。このプロジェクトは詳細な情報を公表できる段階ではないので、とりあえずこんな写真で・・・。



5月31日(水曜)
心斎橋の商業ビル



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斜めに突き抜ける吹き抜け内部。



午前中は、某経産省関連のとある集まり(ぼく以外、みんなすっごい有名な人たちばかり)に出てから大阪へ。淀屋橋の某有名組織設計事務所にて心斎橋に計画中の商業ビルの打ち合せ。
敷地は北側で道路に接していて、その道路際から、南側の上空に向けて、斜めに突き抜けるダイナミックな吹き抜けが特徴。このところ、この特徴を守りつつ、貸し床面積を効率的に確保するために、車のシートの隙間から10円玉を拾い集めるような作業が続いている。チリが積もって山になってきた感じだ。基本的なことがまとまってきたことを見計らって、スタッフに任せて退席。このプロジェクト、ここが一番の踏ん張りどころだな。



6月1日(木曜)
妻有アートトリエンナーレ2006



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露天風呂計画スケッチ。左が木の桶、右が石。


みかんぐみでは、メンバー(共同主宰の4人のこと)全員が集まるミーティングを、最低でも週一回行う。MM(Mikan Meetingの略。そのままですね)って呼んでいるのだけれど、今日の朝は、大学へ行く前にMM。
台湾の某プロジェクトや、昨日の心斎橋のビルに関する打ち合せに並んで、BankARTと共同で進めている妻有アートトリエンナーレ2006の空家プロジェクトをどうするのか、っていうのも、議題の一つだった。大きな家なので、まともに改修していたらきりがない。
で、まずは露天風呂を新設しよう、ということになった。既存の池を利用した四角くてハードな素材の風呂と、新しく木の桶でつくる丸くてソフトな素材の風呂。風景を楽しめるBBQの広場とかもつくりたい。またもやテーマは風呂と宴会か。夏にはここでサマースクールも開講。興味ある人はBankARTまで。



6月2日(金曜)
京都のカフェ「soboro」竣工



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soboroカフェ。場所は、三条高倉の京都文化博物館前。


みかんぐみが、神奈川大学のぼくのゼミによる協力体制の中で進めてきたプロジェクトの第一弾である、京都のカフェ「soboro」が竣工。辰野金吾の建物(京都文化博物館/旧日本銀行京都支店)前というか一部という、とんでもなく緊張する立地だったわけだけれど、無事オープン(屋根が一部未完だったりはしているけれど)。
現地についたら、夜行バスで向かった学生たちは到着していた。準備で忙しそうな店の人たちを邪魔しないように、建物の確認。デザインは、椅子から屋根まで、みーんな同じような形をしているというもの。辰野式ストライプともマッチしてるし、キレイだっていうことで、評判は上々。良かった。
夜中に梅林克さんと合流したりして、まあいろいろとあったわけだが、最後に店を出た時には、既に朝。明るくなっていた。学生たちにもいい経験になったと思う。克には、とても感謝。



6月3日(土曜)
soboro続き



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昼のsoboroカフェ。みんなテーブルみたいな形。



いい天気。明るい時間の様子を見に朝の「soboro」へ。
今日は旧日本銀行京都支店の竣工100周年記念ということで、取材のカメラとかも来ていた。「soboro」もきっとどこかでテレビデビューしたことだろう。
オーナーであるNPOの太田さんがいて、いろいろ話をしていたら、学生たちがやってきた。約束していたわけではないし、ホテルも別々だったんだけれど、朝食をここで食べようってことになったようだ。彼らはこれから京都観光。うらやましい。ぼくは、大学や事務所の用事のため、バタバタと帰京。



6月4日(日曜)
ハンガートンネルとか


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BankART NYKへのアプローチであるハンガートンネル。


事務所でスタッフと打ち合せをした後、BankARTでアーティスト・イン・スタジオの選考など。BankARTの外部アドバイザー(なのかな)としてのお仕事の一環。
ところで、BankARTにはみかんぐみの作品がいくつかある。あ、でも、たくさんあるから、これはこれで一回分のネタだな。話の入口ってことで、アプローチの入口の写真だけ紹介しておこう。


ということで、今週のテーマ、「みかんぐみのお仕事1:建築設計編」はおしまい。近いうちに「2:BankART編」をやりたいと思います。






いろいろな本のおはなし。

2006-06-01 | インポート

5月25日(木曜)
「卒業設計で考えたこと。そしていま2」/彰国社



大学に向かおうと思ったところに、彰国社から本が届いた。
いろいろな建築家たちの卒業設計を紹介するという企画本の第二弾。とても恥ずかしい。この手のものは誰にとっても恥ずかしいはずだけれど、ぼくの場合、すごく変なことをやっていたので、比べ物にならないくらい恥ずかしい。逆に、普通に恥ずかしい程度だったら、取材を断っていたかも。卒業設計をやっていた頃の感覚を思い返してみると、流行っていることをかっこ良くまとめることに対する抵抗感みたいなものがあった。かっこいいのが気恥ずかしいというか・・・。いやまてよ、小学校の頃から今に至るまで、この感覚だけは変わってないような気もしてきた。


3冊届いたので、一冊をさっそく室伏先生にプレゼント(ちょうど、一緒に担当をしている設計の授業が始まるところだったのだ)。ぼくのページの模型写真を見て、一瞬、ちょっと困ったような顔になったのは気のせいだろうか(困った感じにさせているのが、少しうれしかったりして)。
さて、この本は全ページ白黒。カラーじゃないと恥ずかしさ半減なので、この際だから、ここでカラーバージョンを発表します。



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卒業設計の模型写真。派手。それにしてもよく作ったなあ。

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いろいろな高さに床があって、階という概念がありません。あ、今建てている家と同じコンセプト??


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学部3年生の時の課題。建築博物館。あらゆる建築的様式を無効化する外観を目指していたわけだが・・・・・。



5月27日(土曜)
「家のきおく」/インデックスコミュニケーションズ



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お祝いの会場には、これまでの15冊が積まれていました。


「くうねるところにすむところ」という、建築家による子どもたちのための絵本シリーズというのがあって、既に第15巻まで刊行しているのだけれど、この企画の立案者でディレクターの真壁智治さんが、芦原義信賞というものを受賞した。今日はその受賞記念パーティー。みかんぐみは15巻のうちの「家のきおく」という巻を担当(絵は加藤朋子さん)。会場には有名建築関係者がたくさん集合してて、ここが火事になったら、まあ歴史は変わるだろう(建築の歴史だけね)。


ここでアートジーンブログ仲間のブルース・オズボーンさんと遭遇(写真の歴史もかわるな)。書くスピードが速すぎる(笑)と注意を受ける。「はじめだけなんだけど、いっつも」とは言わないでおいた。社交辞令で葉山の家に遊びにきてねと言われたのだけれど、こういう場合、本当に行って驚かせるっていうか、困らせるのがすきだ。で、記念撮影。とても楽しい人だった。


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ブルース・オズボーンさんと。オズボーンさんのパートナー、井上佳子さんが撮ってくれました。


この絵本の僕たちが担当した巻では、とにかく可能な限り少ない数の図(ページいっぱいに1カット。加藤さんの絵だから密度は高い)と、可能な限り短い文章で、家の記憶をたどるようにした。そういう意味では、何か特別な視点を教えているような、教科書的なものではない。この本を手にした子どもたちが、建築に関わる何かを、自分たちなりの視点で考えるようになる、そのきっかけとなるものであってほしい、と考えたのだ(最後に、みかんぐみの住宅作品紹介をしなくてはならなくなったのは、あまりにも図と文が少なかったからだろう)。推敲を重ねて文章を減らしていったことなどを思い出した。小さなお子さんをお持ちの保護者の方々、購入をご検討ください。ものの見方の押しつけみたいなものはありませんから、ご安心を。




5月28日(日曜)
「しまげい2005」/ミュージアム・シティ・プロジェクト
「POST‐OFFICE?ワークスペース改造計画」/TOTO出版



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松代のそば屋の箸袋。「水と空気とそば」実態が希薄なものばっかりだ。


この夏の妻有アートトリエンナーレの関係で、早朝から新潟へ向かう。途中松代で、先に着いていた学生たちと合流して現地へ。書きたくなるネタはたくさんあったんだけど、妻有のプロジェクトについては、またあらためて。今週のテーマ「本のおはなし」にもつながらないし。


で、事務所に戻ったら夜の10時くらい。昨日の内に置かれていたのだろうか、ミュージアム・シティ・プロジェクトの宮本さんから、昨年度の報告書冊子が届いていた。「しまげい」(「アイランドシティ・クリエイティブ推進機構準備会」の略らしい。略になってないが)というのは、福岡につくられつつある埋め立て地「アイランドシティ」に対して、美術がどのように関われるのかを考える、委員会のようなもの。アートジーンブログの初回で紹介した、筑前深江に住む美術家である藤浩志も、その顧問。昨年度はいろいろな人が福岡に行って、勉強会とかセミナーとかをするというシリーズが行われていたようだ。昨年関わった人たちの「しまげい」に対しての一言を集めたのが、今回の冊子。いろいろな人がいろいろなことを言っていて面白い。人選のせいもあるんだろうけれど、このコメント集を読んでいると、いろんなことを考えなくっちゃいけないもんだなあと、変に感心する。本という形式は、こういう、いろいろな人の考え方を一堂に集めるというやりかたに、とても向いている。視覚的に、それぞれのアイデアを関係づけながら考えることができるからだろう。実際、興味のある考え方を組み合わせて、自分なりに考えてみたりして。


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しまげい2005。ぼくの他、山野真悟さん、中原正治さん、熊倉純子さん、森司さんなどと、コメントを寄せている顔ぶれがとても多彩。



最後に、最近のネタとはどうにもつながらないのだけれど、先日出版された本の話。「POST‐OFFICE?ワークスペース改造計画」という本。働く環境や、働く方法について、改めて考えてみよう、っていう趣旨の本だ。以前みかんぐみから出した「団地再生計画」(こちらはINAX出版)と同じく、くだらないアイデア集みたいな形式。この本も、始めのページからずーっと読み続けるようなタイプの本ではなくて、ばらばらと眺めながら、気になったところを読んでみる、というもの。紹介されているネタとネタを関係づけながら、何か新しいことを、読んでいる人なりに考えてみるというスタイルが、この本にも向いているだろう。



最近、雑誌がなくなって、代わりにネットで情報が配信されるようなことが多くなってきたけれど、この考え方はかならずしも正しくないと思う。ネットは、本や雑誌の代わりにはならない場合が多い。本の場合には、本屋という空間構造が、本同士の関係性を作りだし、本という構成が、ページ同士(あるいは情報同士)の関係性を作りだす(そういう関係性をコントロールすることが「デザインをする」という行為なわけだ)。そういう中で、読む人それぞれが、その人なりの発見=関係を築けることが、本の特徴なのだと思う。そういう選択可能性のルーズさみたいなものが重要で、それがネットだとつくりにくいのだ。
ま、そういうわけで、ぼくたちの表現活動にとっても、本という形式はとっても大事なことで、数日の活動の中にも、本が関わることがいろいろとある、というわけでした。