曽我部絵日記

曽我部昌史の写真絵日記

先週は飲んでばっか

2006-05-29 | インポート

5月18日(木曜)
ワインとチーズとパンとオリーブ



みかんぐみの事務所が入っている北仲ホワイトという建物は、今年の10月末までの期間限定(北仲ホワイト自体、かなり面白いところなんだけど、その辺りの紹介はいずれあらためて)。その後の移転先を考えなくっちゃ、ということで、いろいろと画策をしているのだけれど、今日はその一環で、佐々木龍郎さん(1階に設計事務所の分室を開設)と城戸崎和佐さん(3階に設計事務所開設)とぼくの3人で戦略会議。

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赤い壁の城戸崎事務所。左から佐々木さん、城戸崎さん、小林さん(城戸崎事務所スタッフ)、松本さん(城戸崎事務所アルバイト)


20時から城戸崎事務所で、の約束だったのが、大学での作業がのびて、少し遅刻して到着。到着したんだけれど、城戸崎事務所のとなりにあるキュレータ山野真悟さんの事務所で何やら飲み会が催されていて、廊下や階段にはみだして飲んでる。そこでつかまって、通過に多少手間取り、結局、30分以上遅刻。すいませんでした。

城戸崎さんがワインとチーズを用意してくれていて、こっちも盛り上がってる。途中で、みかんぐみや佐々木事務所からお酒を補充して、さらに西田司さん(3階に設計事務所開設)も合流して、後半は宴会モード。
建物内をうろうろしてるだけで、いろいろな人に遭遇する環境って、かなりすごいことだな。


帰って、更新したてのアートジーンのサイトを見てみる。
日記形式なのはぼくだけなのに気づく。「そっか日記じゃなくてよかったんだ」と思ったけれど、日記形式でありながら、かつ更新ごとの共通テーマもある、っていうのに挑戦しようと決意(すぐに揺らぐかも)。



5月19日(金曜)
焼酎お湯割りと焼き鳥



住宅特集(新建築社)で「住まいをめぐる言葉」っていう特集があるそうで、その監修者である奥山信一さんのインタビューを受けるため、東京工業大学に行く。
土建棟(昔はこういう激しい名前だったんだけど、今の正式名称は緑が丘一号館。つまらん)はルーバー+耐震補強による改修が完了していて、現代風のきれいな建物に変身していた。H型鋼によるただの耐震補強で終わらせないあたりがニクい。大学施設とかだと、安けりゃいい、っていう傾向が強いんだけど、これからの時代はそうじゃないよなあ、ってあらためて思う。


奥山研究室では、建築の表現に対するスタンスについての話で盛り上がり、インタビューは無事終了。
対話を通して、いろいろと新たに考えることなどもできたし、これまで考えてきたことの整理もできた。奥山さん、はなしの振り方がうまいなあ。千葉学さんや小川次郎さんは原稿を書くらしいのだけれど、ぼくや伊東豊雄さんは奥山さんのインタビュー。ぼくが決めたわけではないけれど、原稿をかくより、ずっとまとまった話になったんじゃないかと思う。


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さいとうの焼き鳥を前にビールを握りしめる奥山さん。


奥沢の「さいとう」に焼き鳥を食べにいく。
ぼくの頭の中では、幅30センチくらいの長?いテーブルが数本並ぶ、薄暗い怪しい立ち飲み屋っていうイメージだったんだけど、全然違う。どこか別の店と混同してるんだろう。焼き鳥うまかったからいっか。
ここではぼくがインタビュアーとなり、大学や研究室の戦略的運営方法について、奥山さんの話を伺う。




5月20日(土曜)
一部:ペリエとチーズとローストビーフとパンとサラダとケーキと・・・
二部:ノンアルコールビールと生協の寿司とか
三部:ビールとお湯割りとパテとタコス
四部:中華と紹興酒
五部:おでんとビール



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田中元芸大助手(手前)を中心に、団地メンバーたちが集合。研究室にて。

団地が舞台になっている日本映画の研究を一昨年から続けてきた。その集大成として、GIFアニメDVDをつくったのだけれど、昼は研究室でその上映会。研究メンバーが大勢集まって、昼ご飯を食べながら映像を確認。
多くのメンバーはこの春から就職をしているのだけれど(そのうちの一人は、曽我部研究室のアシスタント)、忙しいなかを集まってくれたことに感謝。
チーズやいろいろなパンがおいしかった。ペリエが白ワインだったら、さらに幸せだったのは間違いないけれど、アシスタントに止められ断念。まあ、直後が学科会議なので当然ではある。誕生日のお祝いまでしてもらっちゃった。

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神奈川大学食堂の2階。スイーツに群がる1年生たち。


午後は、学科会議の後、神奈川大学建築学科のFOC。新入生にどんな学科なのかを紹介する、というもの。
既に予想以上の(っていうか覚悟以上の)加速度で進行している、ぼくの研究室の活動なども紹介。締めは、学食の上の大きな部屋で懇談会。
研究室の活動に興味をもっているという新入生たちと、いろいろな話をする。ほとんどみんな未成年なので、お酒はなし。先生は飲んでもいいんじゃないか?って一瞬思ったけど、ノンアルコールビールで寿司。

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BankART NYKで。なぜか写真家の藤井さんも一緒に。


夜は学生たちと進めているプロジェクトについて、BankARTで打ち合せ。
黄金町の旧ちょんの間を、アーティストのためのスペースに改修する、というもの。
ビールを飲みながらの打ち合せで、パテとかタコスとかつまみながら、飲み物はお湯割りに移行。十分のんで、打ち合せから雑談にシフトしたところで食事にいくことに。

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清香楼でBankARTの人たちと中華。ほんとにうまい。

BankARTの人たち+ゼミの学生がタクシーに分乗して清香楼に。野毛の真ん中にある中華料理屋。
十分飲んでいたはずなんだけれど、春巻きとかニラ玉とかがすごくウマいものだから、紹興酒が進む。あるいは、ノンアルコールが続いたことへのリバウンドか。もう止まらない。BankARTの人たちの日常ネタなどで盛り上がる。

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おでんのKENZO。今度ここでライブをやるらしい。ウッドベースはどこに立つんだ?

さらに、おでんのKENZOへ流れる。
なぜか、人数は減らず、ヤング荘の二人が加わったりして、どちらかというと増えてる。店内にはジミヘンのポスターが張られ、後ろではマイルスの枯葉(キャノンボール・アダレーのアルバムのやつ)。
シブい。マスターの雰囲気もまたシブい。気楽な雰囲気だけどかっこいい。
ともかく、おでんを食べながらビール。野毛周辺での生活などについてで盛り上がる。

この日はここで終了。



5月21日(日曜)
ビールとワインとBBQと焼うどん


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BankART前の共同炊事場食卓。みかんぐみの作品です。


昼くらいまで前日の酒が残っていて気分が悪かったんだけど、BankART Schoolの説明会・懇親会があるので、頑張って向かう。
途中、自宅の現場に立ち寄るつもりだったが、気力不足で断念。説明会直前まではお茶しか飲めない感じだったのが、説明会が終わってみると、ビールがウマいモードに切り替わってた。
懇親会は共同炊事場食卓を活用したBBQ。これは、去年の秋に行われた「BankART Life」展のためにみかんぐみがつくった作品のひとつ。
説明会の参加者たちと話をしてみると、最近まで美術との接点が無かった人が案外多いことがわかった。今回が、美術との関係のスタートっていうわけだ。多くの人は、自分の新たな可能性を見つけてみたいと考えているみたい。
最後は研究室の学生の人生相談に乗っていて終電。



ともかく、飲んでばっかりだったわけだけれど、それだけ、いろいろな人と話をしたってことだ。
飲んでないと話をしないってわけではないけれど、やっぱ、飲んでるときは、話の量がむやみに増え、話題のマニアック度もむやみに深くなるので、ちょっと違った感覚がある。なんというか、意識の拡張感みたいな。
今週は特に、久しぶりの人やはじめての人と話をすることも多かったから、いろいろな頭の使い方をした。間違いなく、脳のリフレッシュというか、リセットになったと思う。
たまには、3、4日、こういう日々が続くって言うのも悪くないな。ただ、週の頭なのに、体力的なダメージが大きい、っていうのが問題ではあるが・・・。





我が家の上棟式

2006-05-22 | インポート

5月10日(水曜)



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上棟した様子。

実はいま、妙蓮寺に自分の家を建てているのだけれど、それが今日、無事に上棟(建物の構造体が組み上がること)した。昼休みに学生を連れて見に行った時に、既にほぼ立ち上がっていたのだけれど、夕方には無事に上棟したらしい。
夜、少しお酒が入った感じの深沢さん(工務店の社長)から、「やりましたよ!」って電話が入った。かなりうれしそう(当然、ぼくもうれしい)。


敷地は、本体部分が三角形を歪ませたような超変形型で、しかも北側に向かって傾斜している。その上、ながーい旗竿までついているのだ。
そんな「住宅地の悪条件はみんな任せろ」みたいな敷地なものだから、建物自体も、ややこしい外形の難しいものになることが宿命づけられていた。これまでにも、学生が模型を何度か作ってくれたけれど、きちんと完成した感じになったためしがなかったし、大工さんは不安になって、作業場に二分の一(!)の巨大な平面を起こしていたほどだ。


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敷地図(赤い部分が敷地。数字は地盤の高さ)


そういう大変な(=やりがいのある)仕事だったのだけれど、今日の順調な建方(建物の構造体を組み立てること)で、これまでの準備がうまくいっていたことが確認できたわけだから、当然、みんなうれしい。

誕生日まではあと二日あるけれど、人生最大&前倒しのプレゼントだったかも。



5月12日(金曜)



44歳。
事務所ではシュークリームと紅茶、kandada(中村政人さんのところ)では乾きものとビールで乾杯してもらった。
ありがとうございました。





5月13日(土曜)



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建物の四隅をお清め。ぼくは塩を担当。


今日は上棟式。
しかしながら天気予報通りの雨。しかも寒い。小雨なのがせめてもの救いだ。
職人さんたちが、雨風をしのぐため、ブルーシートで仮設の屋根とか壁をつくって、場所を囲んでいく。テーブルは、材木の上に敷いた合板。椅子は、その両サイドに並べた材木。いつもの上棟式仕様だ。どちらもすごく低いのだけれど、その分、参加者の一体感が強まる。体ごとぶつかりながら飲んでいるかのようになるこのスケール感がいい。この家の屋上テラスには、このスケール感で場所をしつらえてみようか、って少し思ったりした。
で、つまみとか、飲み物とかを並べたりして直会(なおらい。=宴会)の準備ができたら、まずはお清め。深沢さんと棟梁とぼくとで、酒と米と塩を撒いて四隅を清める。
この家は、大雑把に見ると三角形、厳密に角を数えると八角形という特殊形状なので、四隅ってのがどこか悩むところだけれど、それなりな四隅を選んで、つつがなくお清めは終了。



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手前から名和さん、深沢さん、ぼく。

参加者は、工務店関係の方々のほか、ぼくの家族、両親(割と近所に住んでいる)、共同設計の丸山さん(まあまあ近所に住んでいる)、構造設計の名和さんと皆川さん(遠い)、みかんぐみチーフの嶋田夫妻(電車で30分くらい?)、大学(かなり近所)の研究室の助手と学生たち、飛び入りでオープンデスクの学生(週明けには北九州に帰る)といった面々。合計20人くらい。

乾杯と挨拶や紹介を経て、宴会に突入。建方の時の苦労話に始まり、棟梁が「軸組模型を見るまでこの家がつくれるかどうか自信が無かった」とかっていったり、ぼくは「2分の1の図を描いているって聞くまで、本当につくってくれるかどうか不安だった」っていったりして、今だから言えるけどシリーズで盛り上がる。大工さんたちの間では、この建物には棟木(屋根の最上部の部材)がないし、カネ(直角であること)もないということで、ムネもカネもないおんな、などといわれていたらしい。
正確には、ムネもカネもないけど魅力的なおんな、の意味だろう。きっと。


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ヒーロー田中棟梁。



4時間くらい飲んで、最後はなぜか手締めを二回やって終了。
ちょっと寒かったけどすごく楽しい宴会だった。
深沢さんも、結構酔っぱらってたなあ。あーあと、記念撮影わすれた。





筑前深江アーツキャンプ

2006-05-17 | インポート
しばらくここでブログを書くことになった曽我部昌史です。
みかんぐみという共同主宰の設計事務所での活動が中心ですが、個人でもいろいろとやっていて、大学で教えていたりもします。美術系ワークショップへの参加なんかも多くなってきました。

さて、先日まで、福岡県の糸島というところで行われていたワークショップ・筑前深江アーツキャンプに講師として参加してきました。記念すべき第一回は、その時の話などを書きたいと思います。

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砂浜へのアプローチには藤浩志の作品(こいのぼり)が。

5月5日
午後1時くらいに、荷物とか寝袋とかイヌとかと共に現地に到着。
大量の荷物を抱え、中心施設となる海の家「見晴荘」(講義会場と参加者の宿泊場)の横を通り過ぎ砂浜に出ると、テントが約10張り。これが講師宿泊室だ。
全室いわゆるオーシャンビュー。しかもお花畑フロント。
浜には大きなスタードーム(九州フィールドワーク研究会が開発した竹製ドーム)が転がっていて、360度開放型のバーラウンジ。
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講師宿泊室。お花畑フロントandオーシャンビュー

思い切ったというか、いたずらっぽくて、でも絶妙な雰囲気作りは、もうほんと、天才的。肩肘はって頑張った感は全く無いのだけれど、とてもスペシャルな感覚。そこでゆっくり飲んだりしているうちに、ゆるゆると参加者が集まってきた。

晩ご飯はカレー。
近所に住む人たちの家庭の味が約10種類集められていて、好きな種類のカレーを好きなだけ、竹を割った器に取っていただくという趣向激辛のもあれば、ジャガイモたくさんのや、挽肉のカレーとかもある。味も鍋のかたちもいろいろ。うまいなあ、味も演出も。
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夕食のカレー。「山田家」とかって表示してある。

この企画は、地元のPTA有志(深江小学校と二丈中学校)の人たちが企画・準備をしているらしいのだけれど、場所作りも、食事とかの運営も、本当にハッピーで楽しい。

食後、地元アーティスト藤浩志さんが進行役となってレクチャーをしたり、飲みながら話をしたりして、2時半くらいに就寝することにしてテントに向かう。横になって落ち着いてみると、外で吹いている風が強くなっていっているような気が・・・。少し不安。
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講師控室。右から、森司(キュレイター)藤浩志(美術家)柳幸典(美術家)。左端が中村政人(美術家)

そうこうするうちに、テント自体がどんどん変形していくのを目の当たりにして、さらに不安が高まる。ついには、建っているのが不思議なくらいまで変形してきた。外からは爆風に掻き消されながら「・・・避難かぁ・・・」などのささやき声が聞こえてくる。
不安とか恐怖とか騒々しいとかで眠れない、って思っていたのだけれど、いつの間にか爆睡。


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暴風に負けなかったテント2張り。

5月6日

翌朝テントを出てみると、浜に建っているのは、藤さんたちのテントと、ぼくたちのテントの2張りだけ。
変形に耐えられなくなったテントが次々と倒壊し、残ったテントの人たちも、それを知り夜中の撤収となったそうな。藤さん夫妻は、撤収のフォローをしたり、うちのテントのペグを打ち直してくれていたらしい。のうのうと寝ていたのは僕たちだけ・・・。
みなさんほんとに申し訳ありませんでした。僕たちのテントは、藤さんたちのフォローに加え、サイトの風上側に小さな丘があったことに助けられ、飛ばされずに済んだようだ。

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講義室(海の家)でのミーティング。

「さすが建築家」とかって、皆さんからお褒めに預かったんだけど、残念ながら、テントはあらかじめ建てられていたものでした。

で、朝食を食べて、参加者たちと神社に行って神主さんの話を聞いたり、参加者たちの話し合いを眺めたり、温泉行ったり、海の幸BBQを堪能したりしているうちに、あっという間に深夜。翌朝からの発表に備え、グループ毎の熱いディスカッションが続く。みんなは朝まで強いテンションで議論を続けていたみたいだけれど、ぼくは12時くらいにダウン。
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海の家の外壁は、缶の蓋と底。

なんだか申し訳ないなあ、とは思ったものの、体がついていかなかった。寝てばっかり(睡眠不足はかなり解消)。

ところで、この元海の家、外壁は缶ビールの蓋や底の部分で覆い尽くされ、屋根は全面光天井仕様。明確な意図を感じる。どんなオーナーだったんだろう。

5月7日


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公会堂で発表会。町長もオーディエンスとして参加。

いよいよ最終日。
車で公民館の講堂のようなところに移動して各グループの企画発表会+講評。どの案も、多様で、楽しくて、意外性のあるものばかりだった。とても、このわずかな期間で組み立てられたとは思えないくらい。結局、実行案を一つ選ぶということにはならなかったけれど、二泊三日の、ゆるゆるしている感じの割には内容の濃い、不思議なワークショップが無事閉幕した。スタードームでビールを飲んだのが、すごく昔のことのようだ。
それにしても、今回の対時間あたりのクリエイティビティの高さは、すごい。これは、このワークショップのために用意された「場」全体が、とんでもなく創発性の高いものだったっていうことの証明でもある。

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撤収。

2ヶ月程前、みかんぐみを含む共著で「POST-OFFICEワークスペース改造計画」(TOTO出版)という本を出版したのだけれど、この本で目指していたことも、新しい(あるいはおもしろい)ことを考えつくには、どんな環境をつくればいいのか!?っていうことにつきる。ここは、その最良のケーススタディーだった。
うまく言い表せないのだけれど、大家族と独立国家の中間のような、例えば、映画スワローテイルに出てくる、荒野の廃材屋のような雰囲気。ちょっと違うか。ともかく、環境(この場合、場所だけでなくて、関わっている人たちとか、そういった全体の関係とかも含む)って大事だ。藤浩志さんが住まいに選んだ場所だけのことはある。藤さんがいることも含め、筑前深江、おそるべし。
温泉いったり、片付け手伝ったり、残り物食べたりしてから帰途に。なんとか夜中の12時少し前に帰宅。
ああ、おもしろかった。