曽我部絵日記

曽我部昌史の写真絵日記

くまもとアートポリス

2006-08-29 | インポート

 8月21日(月曜) 


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藤本さんをはさんで、左端が桂さんで、右端が末廣さん。で、奥のが前の案で、手前のが新しい案。


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内部のようす。食器まである。(7月末にみかんぐみで打ち合わせた時の写真です)


熊本県が進めている事業に、くまもとアートポリスというものがある。1988年、細川元首相が県知事だったころに磯崎新と組んではじめた、大プロジェクトだ。

一時期(といっても、10年くらい前まで)は建築の関係者なら誰でもしっている一大事業だったのだけれど、不景気のあおりを受けたりしてプロジェクトの数が激減したせいで、知名度が下がってきているみたい。同世代の建築家から「え、あれってまだやってるの?」などといわれるほどだ。まあ、アートポリスの後を追って、類似プロジェクトが他の県でも行われていたのだけれど、アートポリス以外は全て数年で終わってしまっていることを考えると、20年近く続いているということ自体が驚きだ。


現在は伊東豊雄さんが3代目コミッショナーをつとめていて、ぼくは、熊本大学の桂英明さん、九州大学の末廣香織さんとともに、アドバイザーっていうのをやっている。アドバイザーっていうのの職務が今ひとつ判りにくいかもしれないけれど(ぼくも正確には判っていない)、アートポリスの今日的な可能性をみんなで構想すべく意見交換をしている、というところだろうか。ともかく、関係があるってことだ。


さて、そのアートポリスのここ最近の目玉といえば、昨年行ったオープンコンペ「モクバン」だ。

このコンペ、参加資格を35歳以下に限定して行ったので、名前の売れてない建築家の登竜門になるだろう、って思っていたら、最優秀案、つまり、実現することになったのは藤本壮介さんの案。プロジェクトの数がきちんとあった時代ならば、コンペに応募しなくとも藤本さんには依頼をしていたんじゃないかと思うけれど、まあ、ともかく、この、もしかしたら史上最小じゃないかって思う実施コンペをとったのは藤本さんだったわけだ。

総工費400万円を目指して(林業組合主催なので、木材は支給)、案を詰めに詰めてきたわけだけれど、今日はその(ほぼ)最終ミーティングだ。実現に向けての調整がいろいろと大変で、設計料なんてものは、とっくに交通費で消えていることだろう。
減額調整でサイズがかなり小さくなっているのだけれど、むしろ、アイデアの密度感が増したようにみえるし、プロポーションもきれいになった。明らかに良い案になっている。さすがだ。

大断面の材木を積んだだけ、っていうのがこの案の特徴なんだけれど、それを実現するために、暴露実験をしたり、変形に追従するガラスの納まりを考案したり、いろいろな工夫がつまっている。いや、犬童林業組合長の決断がつまっている、というべきか。そういった諸々のことが結実したわけだ。
こういった工夫や特徴の詳細はかなりおもしろくて、ここで紹介できるといいのだけれど、この日、カメラを忘れてしまったし、まだちょっと早いな。いずれまた。

12月16日には、そいういった、このプロジェクトをめぐる様々なことをつまびらかにする会(発表会+シンポジウム+懇親会)が熊本市内で行われる予定なので、興味のある人は熊本へ(ちょっと遠いけど、たまには、馬刺と米焼酎と辛しレンコンとラーメン、ってことで)。
(写真は7月末にみかんぐみで行った事前ミーティングのときのものです)




 8月23日(水曜) 


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000studio海の家外観。


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屋根がかかっているのは、全体の半分くらい。


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ディテール。積層するようにつくられている。


このモクバンコンペの次点となったのが、000studioの案だったのだけれど、この案をもとに、材木座海岸に海の家をつくったというので行ってみた(くまもとアートポリス関係者に報告をすることを約束されられたのだ)。

着いたのがちょっと遅くて、少し休んで、じゃない、一応、建築関係者らしく少しゆらして強度を確かめてみたり(見た目より遥かにしっかりしている)、ディテールの写真を撮ったりしていたら、あっという間に真っ暗になった。暗さと、格子を透けて見える風景や光の様子がとてもムーディーで、鎌倉の海にぴったりだ。重厚な熊本の山よりも軽快な鎌倉の海の方が適しているような気もしてきた。

条件的にも、海の家が

(1)日差しを遮るのが主な機能。
(2)風が抜けると気持ちがいい。
(3)濡れた水着のままで入ってくる程、内外の区別が希薄。
(4)目隠ししたくなるものも周りには少なくない。

というものなのに対して、熊本の山荘では

(1)ともかく風雨をしのぐ。
(2)ときどき来る台風は、爽風じゃなくて爆風。
(3)内外の区別はあまり無いが、水着のままにはかなわない。
(4)風景はすばらしい。

となる。とはいえ、個人的には、こっちのバンガローも熊本にできるといいなあと思うんだけれど。


この海の家、8月末まであるそうですが、このブログがアップされる頃にはなくなってるかなあ。夜遅くまで空いているようなので、みなさんも是非。由比ケ浜側がどういうわけかリトルバンコクみたいになってるのも、ちょっと楽しげでした。参考まで。