曽我部絵日記

曽我部昌史の写真絵日記

建築学科の卒業設計

2007-03-21 | インポート

毎年このシーズンになると、いろいろな卒業設計の審査会に呼ばれます。
今年は、自分の大学(神奈川大学)と、京都っていうか関西のいくつかの大学の合同審査会(DiplomaxKYOTO)と、日大理工学部(AD賞)と、熊本のいくつかの大学の合同審査会(DA5展)と、千葉工業大学と、レモン画翠(学生設計優秀作品展)の6つ。


レモン画翠のは5月だから、それ以外の5つを、日程的にはすこしさかのぼりますが、簡単に紹介。



2月13日(火)14日(水) 神奈川大学建築学科卒業研究発表会


ぼくがつとめている神奈川大学の建築学科での発表会。15日(木)もあったんだけれど、この日は大学院の発表。ぼくのゼミはまだできて一年なので、修士の卒業生はいません。ということで、ぼくのゼミの学部の作品をいくつか紹介します。(写真は、制作者本人からもらいました)


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●草ヶ谷くん: うねうねな集合住宅。一見、変わった形を目指したかのようだけれど、実は、内部的な心地よさと外部的な心地よさのそれぞれを究極までつきつめて、それらを組み合わせることで一戸の住宅になるという仕組みになっている。パッと見、イケイケ造形系なんだけれど、実は細かい。


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●加藤くん: 西新宿の超高層ビルが得ている床面積は、周辺の同程度の広さのブロックに建つ低層ビル群の床面積とほぼ同じ、という事実に注目して、都市建築のより良い形を構想したもの。10%だけボリュームがある。ずーっと昔、構造家の木村俊彦さんのプロジェクトでこういうのがあった。避難計画とか動線の効率化とか広告面積の新しい確保のしかたとか、いろいろな工夫が満載。


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●瀧澤くん: 先の二人とうってかわって、家具的なスケールでの建築空間の思考を繰り返しできた、新しいクライテリアでの建築空間のありかたを提示している。ただフラットに広がってるから、どこにでも椅子を置くことができるという自由と、段差や天井高や窓位置などが、ある場所に椅子を置きたくなってしまう自由。建築の質を考えるきっかけとなるプロジェクト。


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●矢口くん: 黄金町の元ちょんの間街を舞台に、向こう数十年の年毎の変化をふまえた都市化の計画。よく考えられた秀作なのだけれど、残念ながら建築としてのとりまとめが部分的に未完。実は、審査に先立っての全教員での採点ではかなりの高得点だったのだけれど、建築的に未完である以上、賞の対象にはできなかった。でも、とても現代的な問題をきちんと受け止めた、気持ちのいい作品。


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●新井くん: 色だけで空間(空間の分節)をつくる、っていう壮大なっていうか、明らかに工学部系建築学科に不向きのテーマを突き詰めた作品。当初は、実物大でつくるって言い張ってたんだけれど、図面枚数などの規程があるこの大学向きに、建築設計の提案として、建物の隙間を敷地にしたもの。


2月24日(土) DiplomaxKYOTO


京都にある建築系大学の合同講評会。ちょっと前までとは枠組みが少し変わったようで、今回参加しているのは、京都大学、京都工芸繊維大学、奈良女子大、立命館大学など関西の8大学。で、講評というか審査をするのは、佐々木陸朗さん、西沢立衛さん、宮本佳明さんとぼくの4名。いろいろあって、4作品を選ぶこととなりました。いくつか紹介。



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●夏目奈央子さん: 山間を流れるリボンが絡み合って空間をつくっている。模型や図面での表現も美しいし、関連して作られていた絵本もきれいだった。最終の選考でぼくも投票していたんだけれど、建築としては実体に結びつける困難さがあって、僕の意識では2位。選考では、その辺をきちんと話をした方が良いと思って、一番強くおしていた立衛さんと議論。でもまあ、得票数も一番多くて、議論を通して問題点も十分確認できたと思うので、これが最優秀ということでみんな了解。こういうことをきちんと議論しないと、公開審査している意味がないし。


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●藤田桃子さん: ぼくと宮本さんはこれを最優秀に強くおしていた。キャベツの葉が巻き付くようにできた集合住宅の空間。一つ一つの住戸の整理がキレイで、こういったタイプにありがちな、ダイアグラム的平面構成の発見でおしまいになっていないところがよかった。立体駐車場とか商業用のスペースとか、確かに余計なものも計画に入っていて、そこが反対派(っていっても、どっちを1等にするか、っていう議論だけれど)のつっこみどころだった。気持ちが揺れ動いている部分が計画を弱いものにしていたか。ということで、最終的には二等。


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●荷福怜くん: このDiplomaxKYOTOの代表もやっている学生の作品。実際に、軽トラの後ろに建物(?)を作って、都市を観察・記録しながら移動し、そのドキュメントを作品化。案の定、最初の選考で、ぼくしか投票してなかったんだけれど、まあ、試みはおもしろいものの、ものとしての完成度は低かったから(本人はそんなことないです、って強調していたけれど)しかたないか。建築学科で、こういう美術的やり方での提案を試みることは興味深いのだけれど、この手のがいつも、美術的なクオリティで見るとレベルが低いのが問題。ともかく、こういう作品で卒業認定を出した京都大学の懐の深さに感服した。


3月2日(金) AD賞とAD+賞(日大理工学部建築学科)


これは、もう10年くらい前、その当時の日大の非常勤だった、アストリッド・クラインさん、今村雅樹さん、小泉雅生さん、佐藤光彦さん、杉千春さん、西沢立衛さんらと立ち上げた、日大の卒製賞。当時は、大学側が最優秀として選ぶ作品(桜建賞)に納得ができなくて、こんなことじゃだめだ、っていって、非常勤だったぼくたちが勝手に賞を作ったんだけれど(賞品もぼくたちがお金を出し合って買っていた)、最近では予算化され、さらに、受賞作品も大学が選ぶものと、それほど大きく変わらなくなってきた。今村さんも佐藤さんも、いまや日大の常勤教員だから、あたりまえか。存在意義を再考する時期かも(写真は、助手の大西正紀さんからもらいました)。


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●小野志門くん: 下町に残る木造住宅の密集地は、卒業設計で取り扱われるネタとしては定番の一つ。しかし、こういうアプローチははじめてみた。彼のアイデアは、残っている建物を型枠として外側にコンクリートを打設し、ホテルとして活用する、というもの。ホテルの内観には、古い木造建物の姿が写し取られるわけだ。路地的空間の取り扱いとか、敷地面積に対するプロジェクトの規模等にツメの甘さが残るものの、十分にインパクトのあるものだった。ただし、建築の完成度としてはまだまだだっていうことで(ぼくは良いと思ったんだけれど)、AD奨励賞っていうのが新設され、それになった。


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●山田明里さん: 大学院の作品としては、それなりの存在感だった。隅田川に浮かぶ歌舞伎の劇場。普段は5つくらいに分解されていて、それぞれ小さなギャラリーやカフェなどとして活用されているのだけれど、年に数回の歌舞伎座興行時には大劇場になるというもの。まだまだ詰められるところはあるものの、逆に、これからデザインを詰めていきたくなるようなポテンシャルがあった。一番デザイン的にアグレッシブな作品が、意匠系ではなくて計画系の研究室の作品っていうところが、現代の大学教育の状況を示しているかも。


3月7日(水) DA5展


今年はじめてできた、熊本県内にある4つの建築系大学(熊本大学、熊本県立大学、崇城大学、九州東海大、八代高専)の合同発表会。講評するのは、ぼくのほかに、構造家の佐藤淳さんと、熊本大学で教鞭をとる田中智之さん、崇城大学の西郷正浩さん。


前日に通常の講評会が、地元の建築家の方などによって行われていて、二日目のこの日は、佐藤さんとぼくが加わって、作品をネタに卒業設計のさまざまな側面について議論をする、というものだった。最近、卒業設計イベントがすごく多くなっているけれども、審査をやっていて実感するのが、短時間で計画を見た時に伝わってくる、建築に対しての美学や手法的な新しさが、ことのほか大きく評価され、半年とか一年とかかけて深められてきたであろう、その人の建築に対する考察の独自性が、どうしても埋もれてしまうという状況。そういう意味では、どれが一等かを選ぶのではなくて、このタイミングで卒業設計を通して考えたことの議論をきちんとしようというのは、とても新鮮だったし、本来、とても大事な、というか、当たり前のことのように思った。


ということで、一つ一つの作品にそれぞれが個人的にコメントをし、その後で車座の議論。一等を選んだりはしなかった。写真はどれが誰のか判らなくなったんだけれど、いくつか紹介。



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3月14日(水) 千葉工業大学建築学科講評会


千葉工業大学の学部と修士合わせて12作品があらかじめ選ばれていて、それについての講評。講師は、石山修武さん、横河健さん、新建築社の橋本純さんとぼく。藤本壮介さんも来る予定だったけれど、何でもコンペのヒアリングに残ったとか。うらやましい。


ここでも一等などを選ぶのではなくて、一つ一つに講評をする、というもの。いろいろな作品があったけれど、総じて辛口の講評がつづく。審査でなくて講評だからっていうこともあるし、石山さんが一緒っていうこともあるかもしれないけれど、ちょっといいたくなっちゃう作品が続いたように思う。


夜、飲んでいる席で、石山さんから、前に卒計講評を一緒にした時はふにゃふにゃ言ってたけれど、今日はなかなか良いことを言っていたと、ほめられた(?)。さらに、みかんぐみはアメリカ市民主義的建築って(10年以上前に書いた、非作家性の文章を引きずってるんだとおもうが・・・)突っ込まれたり、大学横断型の共通課題講評会の企画などで盛り上がった。


レモン画翠での講評会は5月。ということで、2006年度、卒業設計関連イベント報告でした。






河原町商店街

2007-03-09 | インポート

3月7日(水)

熊本県内の建築系5大学の合同卒製講評会DA5展のために熊本に。
卒製のことについては、もう少し先に、いろいろな卒製ネタをまとめて紹介します。
で、今回は、せっかく熊本にきたのでってことで、シャッター街大学化研究にからんで、
河原町商店街の見学に行ってきたので、その報告。


河原町文化開発研究所についてはこちら



ちょっと前にネットで調べていて、河原町商店街っていうのが、
何か特別なことをやっているらしい、っていうのが判った。
そういえば、前に、熊本で活躍している建築家の長野聖二さんに会った時、
河原町商店街で何かをやってるって言っていたような記憶が脳裏をかすめたけれど、
ろくに準備もせず、その河原町ってのがどこにあるのかの確認もしないまま、熊本に到着。



シンポジウムみたいな感じで、佐藤淳さんらと、
卒業制作にまつわる
いろいろな話をしていたのだけれど、
その時の質問に答えるかたちで、研究室での活動を少し紹介した。
そのなかにシャッター街大学化計画もあって、聴衆の中にいた長野さん
(前日の講評会のクリティークの一人だった)が、
シンポジウムの後の懇親会で
「シャッター街、って言えばね」って話しかけてきてくれた。
「ぼくも長野さんの話を聞きたいと思ってた」って話はつながり、
懇親会後、打ち上げまでの空き時間に、長野さん、田中智之さん(熊本大学)、
西郷正浩さん(崇城大学)と僕の4人で見学に行くことになりました。



ついたのは夜の8時くらい。ほとんどの店は閉まっていて、
ところどころ照明は点いているものの、特ににぎわいはない。
もうちょっと早めにこなくちゃだめみたいだ。通りに直行して数本の通路が面していて、
商店街自体は面的に広がっている。以前はもっと広い範囲に広がっていたらしいけれど、
今では、南側は駐車場に、北側はマンションになっている。長野さんの話によると、
昭和32年に一体の大火事で消失した跡地に、翌33年、
このコンクリート造2階建ての商店街が生まれたそうだ。



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夜の商店街内部。ほぼ全部閉まってます。2階に電気がついているのは、何か作業でもしてるんでしょうか。


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繊維街の風情が色濃く残っていて、まるで映画のセット。



もともとこの辺りは繊維問屋街で、この河原町商店街にも
繊維関連の店が軒を連ねていたのだけれど、最近は閉店した店が目立ちはじめ、
典型的なシャッター街化が進んでいた。そこに数年前から、アジア系の雑貨屋さんだとか
美容室だとかレゲエレコード専門店だとか設計事務所だとか
今日的なショップが増えはじめたのだそうだ。



そういうわけで、昔ながらの問屋街的な雰囲気と、
現代的でカジュアルでセンスのいい雰囲気とが同居している。
こういった商店街で、古い店と新しい店が混然一体となっているケースは時々あるけれど、
ここが特徴的なのは、二つの別々の価値観が、
対立しているわけではないけれど基本的に不連続で、
それが同時に存在していることだ。
時間的にも、朝から夕方前までが問屋街関連で、
午後から夕方までが最近の店。
午後4時くらいが一番活気があるらしい。



暗闇のアーケードを歩いていると、スワロウテイルの世界のような、
不思議なアジア的雰囲気につつまれる。50年の月日が、
公共空間のカスタマイズっていうかたちで記録されているかんじ。
突然出現した、別の世界の風景。問屋街が華やかだった頃の看板は今でもそのまま使われていて、
その下に、新しくできたカフェの看板がぶら下がっていたりする。


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手作り用品店と昔ながらの繊維問屋。


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紳士服屋の看板の下に、アフリカ雑貨の店の看板がぶら下がっている。



先週見た東急桜木町駅跡は、真っ暗な階段を上ると明るい一場が出現する、っていう、
千と千尋の神隠しのイントロみたいな、典型的な通過儀礼的演出があったんだけれど、
ここでは、角を曲がったらいきなり違う世界に入っていた、っていう感じ。



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2階への階段と古い看板とおっきなベスパ。


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随分前のことなんだけど、まだ帰ってきてない?



一通り探検をしてまわり、最後は長野さんの事務所「間建築探検處」に入ることになった。
商店街の通路側を大きな木製扉と大ガラスに入れ替えてあって、中での様子がうかがえる。
屋上までつなぐ鉄骨階段とかも追加されている。
いろいろ手を入れてあるけれど、買った家具のほうが高かったようだ。


1階は開放的なファサードと壁面の棚と真ん中にあるステンレスのテーブルだけ。
楽しそうなミーティングスペース。白い階段を上ると2階が作業スペースで、さらにあがると屋上にでる。
こういう屋根の上での生活が舞台の、中国映画があったなあ。



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長野さんの事務所。商店街案内図によると「人間建築探検處」っていう事務所名らしい。


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事務所の内部。一階は開放的なミーティングスペース。大きな扉を開くと、商店街の通路とも一体化できそうなつくり。


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二階は仕事場。コンクリート部分の雑な塗装がかっこいい。



ということで、河原町商店街見学は終わったわけですが、今回も、翌朝早起きをして、
空港に向かう前に、明るい時間の商店街を見学してきました。


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朝の河原町商店街。赤と穴空きコンクリートブロックのコントラストがカッコいい。


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トップライトが気持ちいい。二階の出窓のプロポーションもいい。


8時前なのに、作業着とかの用品屋さんが商品を並べていたり、
何よりもびっくりしたのは、シャッターをあけて、小学生が出てきたこと。
ここにはいろんな時間があるみたいでした。





むかしから続いていること

2007-03-06 | インポート

2月27日(火)



BankARTで行われている展覧会「ランドマークプロジェクト2」での、みかんぐみのお題は「高架下」。
横浜にはたくさんの高架下があって、それの活用を考えよう、っていうものだ。
以下は、そのチラシのために書いた文章。
(メンバー4人が、一人ずつ書いたのだけれど、その中の曽我部が書いた文章)。



ガード下がアツい。って、ここ何十年もアツい気がするが、このところ、
ガード下の活用バリエーションがすごく広がってるんような気がする、っていう意味で特にアツい。
渋谷ではグラフィティだったり、有楽町では焼き鳥屋だったり、

三ノ輪辺りだと韓国料理屋だったり、って、この辺までは伝統的なガード下活用だけれど、
最近では、祖師ケ谷大蔵のガード下に保育園ができたり、
北野(八王子)では整然と社宅が並んでいたり、ディズニーランドの舞浜駅では
ホテルがぶら下がったりしていて、もう、なんでもあり。



何ができるかは、その街の特徴っていうか傾向が現れてるみたい。
だから、横浜の中心にある東急や京急やJRのガード下がどんなふうに使われるのかは、
街のイメージにもかかわる大問題。ここでの一手に、むこう何十年も引っ張られるんじゃないかなあ。
ということで、ガード下が問題なんです。あんまり安直に使い方決めちゃまずいって。
(ここまで)



ええっと、つまり、単なる有効活用っていうことじゃなくて、ある意味、
街の裏シンボルみたいなものだから、心して使い方を考えよう、っていうことだ。
だから、考えるのも楽しいはずだし、そこを十分楽しまないと誰にとっても、もったいないな。
で、前置きが長くなったけれど、今日は、このプロジェクトの関係で、
旧東急東横線の高架下を視察にいったのでした。しかも、その様子を映像にまとめるという企画。



待ち合わせは事務所のある本町ビルの前。そこにあったのは、2台のヴェロタクシー。
「10時に見学を始めるので9時半に集合でおねがいします。車用意しときますから」って言われてて、
随分、時間に余裕をみるなあ、車なのに。みかんぐみ遅刻が多いからだなあ、
って思ってたんだけれど、これで行くからか。



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事務所のある本町ビルの前からスタート。


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ヴェロタクシーからみる北仲ホワイト。赤いひもは、箱乗り用じゃなくて、開放的すぎて怖い(危ない)人用。



撮影部隊が並走しながら、ドキュメントをおさめていく。
ヴェロタクシーは意外と早いので、みんな大変そう。ぼくたちはどういうわけか観光モード。
路駐している車を越える時がちょっと怖いけど、横浜ではヴェロタクシーの運行が始まったばかりなので、
周りの車やタクシーは、クラクションを鳴らすなんてことはなくて、物珍しそうに眺めていく。



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自転車で並走するBankART代表池田さん。メール送信中?


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ドライバー。漕ぐのはそれほど大変じゃないらしいけれど、道を覚えるだけでなくて、街の歴史とかを覚えるのが意外と大変らしい。楽しそうだけれど。上り坂用に電動アシスト付き。


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駐車中のヴェロタクシー。車体の広告収入で運営されているらしい。乗車料金は、経営的にはそれほど重要ではないってことだ。


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天井も透明なのでかなり開放的。


20分くらい走っただろうか。高島町あたりの高架下に無事到着。
東急の方と横浜市の方と合流して、ここからは歩きで視察。
っていうか、ここまでは映像用で、ここからが大事なところですね。


中は、コンクリートの存在感が特徴的な予想通りのいい雰囲気。単線から複線化するときに、
高架の巾を広げたらしく、新旧のコンクリートディテールが並んでいるのもおもしろい。
型枠の形も彫刻的。また空間構成も、おもしろいものになっている。



具体的には、道路側のゾーンは古い時代の壁状の橋脚によって、たくさんの部屋に分節されていて、
奥のゾーンは柱だけで構成されているので壁的なものはなく、連続的に空間がつながれている。
道路側から部屋に入ると、奥ではそれぞれがつながっている、というわけだ。


15年くらいまえ、新しい集合住宅の平面プランの例として、廊下側に個室がならんでいて、
外からの出入りは個室の扉から行い(1住戸あたり3、4個の扉がある)、
個室から廊下の反対側にでると、リビングとかキッチン等の共有スペースが並ぶ、
というものが話題になったけれど、ここでの空間構成の型は、まさに、それ。
偶然できちゃってるわけですね。



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東横線旧高島町駅付近。二度に分けて作られている。右が先で(つまり古い)、左が後っていうことだったけれど、型枠のディテールからすると、きっと逆だと思う。


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部屋のように分割されている。



さらに桜木町方向に歩く。このあたりは数年前から壁面へのグラフィティが話題だけれど、
この壁は土留め壁なのだそうだ。つまり、JRと東急が共同で堤防のような部分を土を盛り上げて作って、
その両サイドを組積の壁で押さえている、ということらしい。
そういわれてみると、壁が土圧で倒れてきてるじゃないか。
ちょっと怖い、っていうか、知らない方が幸せなこともあるってことか。



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東急の高架と、まだ現役のJRの高架の間の隙間。果てしなく長い。


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最近更新した高架下のグラフィティ。公募で作家が選ばれている。



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これ(公募してグラディティを展開するっていうプロジェクト)は実験なんですね。



元桜木町駅にはいり、そこから元線路っていうかプラットフォームだったところにあがる。
真っ暗な、既にちょっと廃墟的なムードを備えた階段をのぼると、突然、
延々に向こうまで広がる細長い広場状のスペースが出現する。ちょっとした感動。
どこでもドア的っていうか、一瞬で訪れる別世界。
レールとか、鉄道だった時の痕跡がないのがちょっと残念だけれど、逆に、それだからこその、
予想と違った場所に驚けたのかも。こういうのって、ちょっとしたミラクルだと思う。



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桜木町駅の階段。東横線で桜木町にくると、ここを降りていたわけだ。なぜか、ダウンライトが全部撤去されている。どっかで使ったのか?


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右隣はJR。どこまででも続いていそうな風景。



で、午後は、神奈川県経営者協会主催の地域懇談会(シンポジウム)に出席するために海老名へ。
二人の代表質問担当者の一人(もう一人は、この協会の会長でもある、高橋日産自動車副社長。
それを知って、何だか大役なんだ、ってはじめて気がついた)。こういう立場ははじめての経験。



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海老名の一風景。全部こんなにカラフルなわけじゃないです。あたりまえですね。



県央にある中小企業の話題を中心に、技術の継承や発展についての意見交換。
一本10億円のレンズをつくっている会社があったり、スパッタリングの超専門企業があったり、
新型新幹線の先端のランプ部分をつくっていたり、身近にすごい会社があるらしくって、結構楽しかった。
こういうことを知っているのと知っていないのでは、何かを考える時の発想の巾が違ってくると思う。
そういう意味でも、こういった技術を子どもたちに伝える作業が大きな意味を持つんじゃないだろうか。


東京女学館大学の金子先生の寄木細工の話もおもしろかったんだけれど、
なんだか今日のブログは長過ぎだし、きっと、別の形でこの話はできると思うので、後日。
ということで、午前も午後も、タイプは違うけれど「継承」について考える一日だった。



そうそう、海老名ははじめてだったんだけれど、なんだか不思議な街だった。
何だか絵に書いたような印象。はじめは、大型商業施設が多いからか、とか、
外資系チェーン店が多いからか、とか思ったけれど、しばらく歩いて気がついた。
きっと、色が多いんだと思う。色の選び方も独特なんじゃないか。
今度、色別で街を見比べてみようか。ゼミでやっている商店街問題にもつながりそうだ。