曽我部絵日記

曽我部昌史の写真絵日記

妻有アートトリエンナーレな日々 その一

2006-07-27 | インポート
北仲OPEN2006


北仲OPEN2006開催!昨年に続いて二度目ですが、この建物は今年の秋までの期間限定利用。なので、今回が最後の北仲OPENになります(たぶん)。中での活動が見れる最後のチャンス。イベントもいろいろあります。来てね。
http://www.kitanakaopen.com



「妻有アートトリエンナーレ」については→こちら


7月18日(火曜)/新幹線ミーティング

淀屋橋での打ち合わせを終えて、新大阪からBankART池田さんに連絡をすると、
西春(名古屋芸術大学の最寄り駅)にいて、今から横浜に帰るところとか。
ちょうど名古屋で合流できそうなことが判明し、帰りの新幹線でミーティングすることに。
(効率よくて)ラッキーなのか、(休めなくって)アンラッキーなのか。30分くらいミーティングして、
残りは睡眠にあてるはずが、気がついたら新横浜。あ゛?。



7月19日(水曜)/セブンイレブンで会う人。

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真っ黒く塗装中。部屋中オイルステインのにおい。


早朝(っていうか夜中?)出発して、朝8時過ぎに妻有に到着。
松代のセブンイレブンに寄ったら、お客さんの女性に声をかけられる。アートフロント関係者だったっけなあ。たしか。前回のトリエンナーレ以来、3年ぶりに会った。ってことで正しいだろうか・・・。

打ち合わせとか作業とかで、あっという間に夜。芝峠温泉(近所)が定休日なので、ちょっと脚を伸ばして松之山温泉へ。帰りに再びセブンイレブンによったら、またまた声をかけられた。今度は国士館大の学生。建築学科の三村先生の奥さんが参加作家だった。ちょっとびっくり。



7月20日(木曜)/ウメとヨシ


土間にあった井戸を埋めることになり、簡単なおはらいをすることになった。地元の習慣に従って、
通気のパイプをつけて(これはどこでもやるが)、井戸の中に梅と葦(ヨシ)を入れ、お神酒をいただく。
ウメトヨシ(梅と葦)→ウメテヨシ(埋めて良し)。ということらしい。だじゃれだ。まあ、そういうもんなんだろうな。


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井戸に梅と葦を入れる。そのへんの茂みで取ってきた感じではあるが、問題ない(だろう)。


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ポンプ車が近くまで来れないので、ポンプ車がすごいことになってる。



7月21日(金曜)/ガラスの建具

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ガラス取り付け。超開放型の風呂。ガラスのコーナーにシャワーがつきます。


ガラス屋さんがガラスを入れに夕方くることになっている。そのために、枠用の木材を注文しておいたんだけど、到着が遅れて製作時間がパツパツ。

ツーバイフォーの木材を切ってビスでとめるだけのものなんだけど、相手がガラスだけに、なかなか気をつかう。ちょっと待たせてしまったけれど、何とかガラスを入れてもらうことができた。
それにしても、簡単のはめ殺し窓ではあるけれど、建具を自分でつくったのははじめてだ。ちょっと気持ちがいい。



7月22日(土曜)/オープニング前日

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1升炊きの炊飯器に、大幅に容量を超えた米をいれてつくったご飯。アルデンテ。

ぼくたちのプロジェクトは、もともとオープニングに間に合わせるスケジュールじゃないんだけど、やっぱり、オープニングに合わせて見に来る人もいるだろう、っていうことで、それなりに仕上げようと努力。作業人数もかなり多い。

みかんぐみやBankARTのスタッフや、神奈川大、熊本県立大、新潟大(この日はいなかった)の学生たちに加え、今日から東北芸工大の学生も参加。寝る場所とか布団とか、数的には破綻してるけど、何となくなんとかなるもんだ。食事も、1升+5合の炊飯器二台セットのキャパを越え、無理矢理たくさんつくったため、アルデンテご飯。



7月23日(日曜)/中締めBBQ

すごく朝早く起きてみんなで掃除+片付け。朝食後、ぼくと池田さんでオープニングに出席するため出発し、いろいろな人に会う。で、昼からは中締めってことでBBQなので早めに戻る。
ちょうど、新井くんが看板を書いている。仮設用に書いといて、ってつもりだったんだが、たまたま彼が書道の有段者。こりゃすごい。本人は、自分はもっとうまいので書き直させろ、っていっているが、きっとしばらくはこのままだろう。風呂予定位置にはおもちゃの湯船があるので、そこでビールや果物や野菜やヤクルトを冷やしてある。容量がでかすぎで中々冷えないが、見た目は壮観。でっかい土間兼でっかい風呂場なわけだけど、こういうスペースはかなりいいな。


夜になって、風呂関係でいろいろあって、ドラム缶+薪釜で風呂焚き実験をすることに。火が安定するまでがなかなか大変だけれど、ちゃんと沸いた。佃くん(ゼミ一番のチャレンジャー)が初風呂体験。ドラム缶の掃除があまくて、ちょっと油が浮いていた。大量の肉と酒を残して、なんとなくお開き(っていうか、ぼくは先にリタイヤ)。

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オープニング会場のキナーレで。北川フラムさんを囲んで建築関係者で記念撮影。

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湯船の代わりに子供用プールを設置。
今日は冷蔵庫代わり。

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新井くん(曽我部ゼミの4年。書道は有段者らしい)の
手による看板。

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薪の釜で沸かすドラム缶風呂実験じゃなくて体験。


7月24日(月曜)/雨

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屋根裏でみつけた竹で、フェンスの準備。

雨の音で目が覚める。昨日はすごく晴れていた。妻有に入って10日くらいになるけれど、あんなに晴れたのははじめて。すばらしいBBQ日和だった。で、今日から雨なわけだ。昨日以外は、ほぼずっと雨だ。

みかんぐみのプラン(屋外に健康ランドをつくる)は全然進まない。屋外の設備工事が進まないから、その後にしかできないみかんぐみのプランは、まったく手がつかないってわけだ。困ったもんだなあ。無理矢理できることを進めるものの、どうにも・・・。




サバグリ!????

2006-07-24 | インポート

7月17日(月曜)

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奥に見えるのが久しぶりのsoboro。あいにくの雨。

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祇園祭の日だけあって、浴衣姿のカップルも。いやあsoboroに似合うじゃないか。

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準備中の建物内部。辰野金吾の建築って、微妙なやり過ぎ感があっておもしろい。

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サカキマンゴーさん。ここはアフリカです。

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一回目のトーク。客席側をみると、空間の高さのアンバランスさが不思議な垂直感を。

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天井を見上げると、、、濃いデザインだ
(トークに集中しろって)。

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二回目のトーク。「サバグリ」提唱者、甲斐賢治さん。
(トークに集中しろって)。

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エコハウス。一階で農業とか共同風呂とかオープンキッチンとかやって、二階に家族の個室がある。

6月2日のブログで報告をしたのだけれど、京都文化博物館に小さなカフェをデザインした。

正式には「Social Design Cafe soboro」というカフェで、ゴミのことや食物のことなど、環境や社会に関して考えるNPOが運営している。このカフェが企画するイベント、soboro DIALOGUE Vol.01「環境×メディア×アート/持続可能な社会を京都からデザインする」が開催された。
会場は、カフェがある建物の本体、つまり、京都文化博物館(旧館)のホールだ。これがまた、辰野金吾の設計。このところ、辰野金吾づいてる。

前日まで、妻有トリエンナーレの準備で新潟にいて、割と遅くに帰ってきたんだけれど、藤浩志さんが今日たまたま京都にいて昼御飯時なら話ができそうだっていうんで、ちょっと頑張って早めに家を出た(別に、話し合わなければならないことがあったわけではないが)。

京都についたら、なんと、今日は祇園祭の最終日。どおりで外国人観光客が多いわけだ。藤さんや、iop都市文化創造研究所の永田さん(soboroのプロデュースをしている人で、今日のトークゲストのひとりでもある)と昼を食べながら雑談。っていうか、藤さんと永田さんの打ち合わせを思いっきり邪魔した、ってかんじだな。

で、今日のイベントでは、ライブとトークが混ざっていて、一番始めが、サカキマンゴーさん。一人でアフリカの楽器を操り、歌う。とても独りでやっているとは思えないくらい、音が厚い。
ちなみに、ザイール(って言ってたっけなあ)の言葉では、
「こんにちは」を「ハバーリ?」っていうんだそうで、そういわれたら「ム(ン)ズーリ」って返さなくちゃいけないらしい。
曲の途中などで、突然「ハバーリ」とかいわれるが、観客はあまりついて行けてない(そりゃ、ついていけないって)。

ライブが終わったら、一回目のお話の会。
「参加のデザイン、場のチカラ」ってお題で、昼一緒だったiopの永田さん、きょうとNPOセンターの理事などをしている深尾昌峰さん、graf広報の工藤千愛子さんとぼくの4人。市民が参加する街づくり、っていうことの様々な問題を議論する、っていうのが目標(だったのかな)。オーディエンスで来てくれた藤浩志さんからの質問もあって、それなりに楽しい会だった。でも、藤さんからのフリにうまいことリアクションできなかったのが反省、っていうか、個人的にちょっとショックだった。途中で「ハバーリ?」っていってみようと思ってたんだけど、タイミングが見つからず断念(そんなこと考えてるからリアクション失敗するんだな)。

一回目のお話が終わったら、今度はarchipelagoのライブ。アコースティックの心洗われる系の音楽だったけど、講師控え室での話が盛り上がり、今度はほとんど聞かずに時間がきちゃった。

再び今度は二回目のお話の会。
今度のお題は「小さな情報、メディアのカタチ」。話をするのは、ソニーマガジンズ「Lingkaran(リンカラン)」編集長の皆川孝徳さん、NPO法人 記録と表現とメディアのための組織 [remo] 代表理事の甲斐賢治さん、NPO京都コミュニティ放送[京都三条ラジオカフェ]理事の福井文雄さんとぼくの4人。情報の達人の皆さんですね。まあ、明らかに場違い。控え室でもテレビとかラジオとか電波とか雑誌とかメディアとかって言葉が飛び交う。
でも、業種的には違うんだけれど、割と隣接した関係にあるのか、場違いというより、少し新しい知識とか考え方に触れられて、かなりたのしい。
脱資本主義的というか、反スペック主義的な価値判断の体系化のために、メディアは予想以上に使いやすい道具だってことなどを意識することになったりして、収穫も多かった。

一番おもしろかったのは、農業に関わる話で、甲斐さんが提案した「サバ・グリ」には深い共感を覚えた。プレゼンも秀逸だったが(今度ぼくもやってみよう)なんでも、今朝思いついたとか。
サブカルチャーとアグリカルチャーが合体した言葉なわけだけれど、簡単にいうと、都市の隙間で農業、というわけ。それも、特に許可を得て農家として仕事をするっていうんじゃなくて、ちょっとしたスクウォッタで始めちゃって(だけど、作物つくってるだけだし、きっとつかまらない?たぶん??)、スケボーの少年が公園の特性をつかむように作物向きの特性を引き出し、食物の自給率が落ちてるのもまずいんじゃないの?っていう疑問にも答えよう、
っていうことなんだそうだ。
「空地なら100円パーキング」っていう安直さに対抗できそうだし(この安直さは、駐車の取締強化で加速化するに違いない)、作物向けに個人単位の工夫や見立てが、「農業」っていう「業」になっているのも、いい。ちょっとした家庭菜園をやろうっていうのではなく、「農業」。なんか最近、農業が近いなあっていう気がしてたんだって(調子いいけど)。
妻有で改修しているのはもともと農家だし、建設中の(なかなか建たないけど)僕の家の前も広大な生産緑地だし、去年つくったハンガートンネルの下にあるのは「音符の畑」。そういや、随分前だけれど、NHKの企画「建築家バトル(ちょっと恥ずかしいネーミングだけど、NHK教育の企画で、若手(当時)が与えられた敷地でエコハウスを提案する、というもの)」で、みかんぐみが提案したのも、1階が農家の都市型住宅だった。これからはやはり農業か。


会が終わって、甲斐さんと企画を深めるためのミーティングをするつもりが、オーディエンスだった京都造形芸大の学生たちを妻有に誘ったりしているうちに遅い時間に。明日朝一で、淀屋橋で打ち合わせがあるので、いっそのこと淀屋橋に泊まっちゃえ、っていうことで、京都を後にしたのでした。
(淀屋橋までは、京阪で四条から特急で一直線45分。近い。けど、淀屋橋のホテルにしたら、周りがオフィス街でしかも休日の夜中。晩ご飯食べたかったんだけど、コンビニしかありませんでしたとさ)。





NHK高校講座 美術

2006-07-13 | インポート

7月8日(土曜)


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CCA。もともとは小学校の体育館だったところに間仕切り壁を追加して、スタジオに変身。


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すっごい雨。写真には写りにくいけど、東京じゃこんな降り方はしないなあ。雨音の迫力がかっこいい。


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安田工業(旧安田製釘所)の工場。辰野金吾の設計。工場の人によると、辰野金吾の工場は日本でひとつだけだとか。


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中央区商店街をフィールドワーク。街に出る時は、必ず制服着用なんだとか。


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とり秀。海の幸も鶏肉も、うまい。もともとの素材が違う。みんなマジで食べてます(この時点では会話少なめ)。


NHK高校講座の夏休み特集で「美術」っていうのをやることになって、その講師をすることになった。テレビはとても恥ずかしいのだけれど、CCAの三宅さんからの依頼で、しかも中村政人さんも一緒となると断る言葉が見つからなかった。
今日は収録初日なのだけれど、前回のブログで紹介したBankART桜荘騒動で、心の準備が無いままに今日を迎えてしまった。北九州のCCAで、地元の高校生とともに建築系のワークショップを行うのだけれど、よく考えたら、高校生相手のワークショップははじめてだ。どうなることやら。研究室の助手の中林さんの手を借りて、課題説明用のビジュアルは、なんとか前日の内に用意しておくことができた。


で、朝、羽田空港につくと、不審者のために滑走路が閉鎖されていたとかで、飛行機がものすごく遅れている(後で判ったけれど、その不審者とは、体操をしたくてなぜか滑走路を横切った、某大手航空会社の清掃アルバイトだそうだ。わけわからん)。幸先は、明らかに悪い。幸先は悪かったが、司会役の村井美樹さん(女優さん)に会って挨拶したりして、とりあえず機嫌は悪くない。それに、スタッフ全員分ひとつ前の便に振り替えることができたので、実際はそれほど遅れること無く、北九州に到着。


CCAに着いたら、いきなり土砂降り。よくいう、バケツをひっくり返したような、ってやつだ。爽快なくらい激しい雨。やはり幸先は悪かったか。前回CCAに来た時は大雪だったことを思い出し、この超悪天候の理由はもしや自分じゃないかと、かなり不安になる。不安だったのだけれど、室内の作業などをしているうちに雨は納まり始め、安田工業での撮影に向かおうか、っていうころには雨はあがっていた。幸先は悪いけれど、結果、何とかなってる、っていうパターンみたいだ。


安田工業の工場(旧安田製釘所)は、あの辰野金吾の設計で1912年の竣工なのだそうだ。「何気なく建っている町の工場が、実は東京駅を設計したような建築界の大御所の手によるもので、そう思ってみて見ると、いろいろ工夫もある。建築って奥が深くてたのしいよね」っていう雰囲気での紹介ネタだ。工場だから当たり前なのだけれど、かなり素っ気ない建物で、かなり勝負のしがいがある建築だった。でもまあ、なんとか無事終了。それにしても、司会の村井さんの回転の速さには驚かされた。雑談のように話していることが、きちんと会話のフリに反映されている。リアクションの調整も素早い。きっと同時に3つくらいのことを考えてるんだろう。気配りも細かいし。実はこの時が、これなら今回の収録はぜんぜん安心だ、って思った瞬間なのでした。


CCAに戻って、八幡中央高校の学生たちと会って、今回の課題を説明。3、4人のグループが4つで、全部で13人。みんな、なんというか、きちんとしているというか、かげりが無いっていうか、純粋でまじめな雰囲気。熱心に考えてくれているのだけれど、はじめは、何やって良いのかが判らなかったみたい。グループごとのディスカッションをしてから、八幡中央区商店街へフィールドワークへ。そのころには、割と的確な勘をつかみつつあった、かな。一通り商店街を探索してから、再びCCAにもどってグループごとにプランを検討。グループごとの個性がはっきり出ていて、おもしろくなりそう。時間的な不安が無いわけではないが、夜も遅くなってきたので解散。


ぼくたちは、チェックインしてから再び中央区商店街近くへ。商店街の向かいにある「とり秀」で晩ご飯。ぼくは二回目なのだけれど、いつ来てもうまい。素材の持ち味で勝負している感じが、素朴で感動を誘う。名物店長との会話があまり無かったのが残念だけど、CCAの人が一緒じゃないから当たり前か。その後、バーでCCAの中村さん、三宅さんと合流し飲んだが、明日に備えて早めの解散。



7月9日(日曜)


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記念撮影。左から、研究室助手の中林さん、司会の村井美樹さん、曽我部、研究室の佃くん。


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3班。タイルの柄を印刷した紙でカモフラージュ。中に入ると、ピンク色+装飾。


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4班。ご飯食べてるのはやらせじゃない。この班の学生なんだけど、昼飯を食べずに製作し、ここで昼食。


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2班。自販機の間にのれん。手前のひもを引っ張ると開く。


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1班。上の三角形の部分が開いて、中の人が顔を出せる仕組み。


朝から学生たちは製作。平行して補足部分の撮影とかしているものの、基本的に暇。かといって、自分の仕事をはじめるような気分にもならない。普段あまり無いタイプの時間だ。村井さんと記念撮影をさせてもらったり、美術作品のスライドをカメラに収める様子をのんびり見学したりして、かなり幸せな時間をすごす。


そんな中、学生たちは製作をどんどん進める。さすが美術部というだけあって(といっても、美術コースのある高校なので、美術部員が90人いるそうだ)、作業に入ると手際がいい。村井さんと学生たちの様子を伺いにいくのだけれど、村井さんはもともと美術にも興味があるみたいで、結構いいところを突いてくる。建築にも少し興味をもっているみたいだから、建築関係のレポーターっていうと村井さん、みたいになるといいなあ。


着々と準備は進行。夕方前には現地に移動して、設置。
商店街にあるいろいろな部分の特徴を生かして、自分の居場所をつくる、っていうのが今回のテーマ。さすが高校生なのか、さすが美術部なのかわからないけれど、4組4様で、みんなそれぞれ良いところを突いてきている。
4案を一通り紹介しておこう。


始めに完成したのが3班。中で上にのびる不思議なニッチ部分を見つけてきて、その穴を、周辺のタイル柄をプリントした紙を貼った板でカモフラージュ。内部にはあらかじめ派手な装飾を施しておいて、外は地味なんだけれど、中に入ってみると派手、っていう演出。


その次が4班。僅かなへこみや段差を生かして、机や棚を製作。パチンコ屋の入口脇が自分の部屋、っていうシュールな設定(この班の学生が、サインをしてくれっていって本を持ってきたんだけれど、それがカミュの異邦人!)。そこで、昼ご飯を食べずに製作していた学生が昼ご飯を食べている。不思議な馴染み方をしていて、とてもおもしろい。


2班はもともと並んでいた自動販売機の裏側を部屋にみたてて、その自販機同士の間を入口にした。自動販売機で缶ジュースを買っている人に、「中で休んでいきませんか」って声をかけるんだそうだ。すっかり街に馴染んでいる。入口にかけられたのれんが可動式になっているのだけれど、その仕組みもうまい。


最後は1班。他の3班が、隙間を狙っていたのに対して、堂々と広場の真ん中を敷地に。この広場には、ピラミッド型のトップライトがついているのだけれど、それを小さくしたような四角錐の家。段ボールの下見板張りになっていて、なかなかかわいい。


ということで、時間はちょっと押したものの、無事撮影は終了。それぞれ、別々の形で街の様子を活用していて、なかなかおもしろかった。みなさんお疲れさまでした。予定よりもひとつ後の飛行機で帰京(スターフライヤーだから、かなり遅い便まである)。ふうう。


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全員で記念撮影。




BankART桜荘オープン!

2006-07-05 | インポート
6月30日(金曜)

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もともとのちょんの間。赤と黄色の裸電球。


いよいよBankART桜荘がオープンした。
竣工したとは言い難い部分が無いわけではないが、ともかくオープンってことで(微妙)、めでたくお披露目となった(最後はBankARTの人たちに、ものすごく手伝ってもらったわけですが・・・)。いやあ、めでたい。


この、BankART桜荘っていうのは、「ちょんの間」(あ、「ちょんの間」が判らない方は、ここで解説するのもはばかられますので、ウェブで「ちょんの間/黄金町」などで検索してみてください)をアーティストのためのスペースに改修するというプロジェクト。
黄金町から日ノ出町までの大岡川沿いの細長いエリアに、ちょんの間が200軒以上あって、それが1年半くらい前に一掃されたのだそうで、今ではほぼ全部が空家。そのうちの一軒を市が借り上げ、その運営を公募で募集し、BankARTが当選したのだ。


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改修前。あまりに狭いので、現地でのミーティングは、扉を外して。


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ほぼ全てが初体験の自主施工。インパクトドライバーのビット交換すら判らないところからスタート。


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超急勾配だった階段は、足場を組み合わせてつくった階段に交換。単管はピンク(桜にちなんで)。


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手前のステップワンっていうのは地域の防犯拠点。2階の部屋には池田光宏さんの映像作品が。


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1階土間+座敷の空間。二部屋をぶち抜いて一体化し、広い座敷を設置。天井は光天井。


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足場材を使ってつくった階段。単管をピンクに塗装。

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とにかくシンプルに、ディーテールを消した空間。これから、既存サッシ枠も白くする予定。


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作業メンバー(一部)。


またこれは、神奈川大学建築学科曽我部研究室で進めてきた、設計施工のプロジェクトでもある。研究室単独で進めてきたものとしては、初のプロジェクトだ。
ちょっとした施工体験ができそう、くらいの軽い気持ちで始めたものなのだけれど、いつの間にか設計対象範囲が広がり、当然予算も増大し、それにともなって責任も拡大し、学生たちは全力疾走モードになり、さらには、ぼくの拘束時間も飛躍的に膨らむ、ってことになっていた。
このところ、「空いた時間がとれたら桜荘」な日々が続いていたので、みかんぐみスタッフとのやり取りは深夜のメールが中心になり、自宅の現場には全く近づいていなかった(やっぱり、自分のことが後回し)。そういう意味でも、このオープニングはうれしい。



それにしても、学生たちは肉体的にも精神的にも、とても大変だったと思う。実質、設計施工あわせて1ヶ月強。ほぼ、はじめてのことばかりなわけだから、始めのうちは、急ぐにもどこをどう急げばいいのかすら、つかめなかったに違いない。
苦労の積み重ねだったわけだけれど、当然のことながら、かなり幅広い知識が得られたはずだ。工具の使い方を知るとかっていうようなことばかりではなくて(もちろん、それもあるんだけれど)、建築を成立させている社会の構造に触れることで、ものを考える深さが格段と深まったに違いない。なによりも、この後、建築を構想する時のある種の自信が得られたと思う。
1ヶ月の超短期決戦的建築習得だったわけだけれど、それが実現できたのも、実際の現場を通しての体験的なプログラムだったからだろう。観ていて、ほんと、すごく成長したと思う。こういう場合、責任感が強い人ほど、その強さに応じて、進歩も大きくなるように思う。まあ、ともかく、ゼミのみんなはお疲れさまでした。



さて、で、どういう改修だったかを簡単に紹介。
まず外観。全部に手を入れて新築のようにしちゃうんじゃなくて、中での活動に関わる部分だけを改修することにしたので、外観はほとんどそのまま。(かといって、古い部分と新しい部分の対比を見せるような、雰囲気ある古さではないので、実際のところは、いろんな意味(時間、予算)で余裕がなかった、っていうのが本心かなあ?)。
そうはいっても、1階座敷の開放感を確保するために、でっかいサッシに入れ替えたり、単管足場製の階段を目立たせたりしているので、かなり印象は変わったみたい。道行く人々はほぼ全員振り返っていく。一度などは、前の道を通り過ぎた車がバックで戻ってきたほどだ。



メインのスペースが1階の座敷。座敷化するっていうのはある学生のアイデアだったんだけれど、この方針は研究室全員一致で決定となった。設計定例会議には座敷案を含んで4案持っていったのだけれど、出席者全員の投票となって、研究室側が組織票だったのに加えて、BankART池田さんの賛同も得られたので、すんなりと、この案に決定。
もともと二部屋に分かれていたのを一体化し(柱を抜いたのを鉄骨補強したんだけれど、これもセルフ)、さらにはトイレも無くして良いことになったので、広い座敷のスペースが実現できた。土間をはさんで業務用のキッチンを並べ「まあ、ちょっとあがっていってよ」的な場所を目指している。天井は全面アクリル板の光天井。細かい木材でつくった下地にアクリル板をビス止めしただけなのだけれど(といっても作業はとても大変)、結構きれいにできた。



2階は宿泊のためのスペース。2階にあがるために屋外階段がついていたのだけれど、ものすごく急で、ほとんどはしごだったので、ゆとりのある広めの階段を単管で製作して交換した。階段の勾配とか幅とかを、既存の建物にあわせたかったので、踏み板もオリジナル。そのために、単管の列柱が必要になったので、これを建物のファサードみたいにすることになった。
実は、道路を挟んで向かいに桜の木が並んでいて、これが「桜荘」っていうネーミングの語源なんだけれど、この階段も桜にちなんでピンクに塗装。つまり、この単管の面は、ある意味看板代わり、というわけだ。



2階には個室が4室。1室を水回り(風呂と洗面とトイレ)にして、残り3室を宿泊室に。基本的にディテールが見えない抽象化した空間をめざして、とにかくパテと合板で四角く変貌させている。内部壁をふかしてサッシの枠を隠し、幅木も回縁もつけず、さらに天井をつるっとさせるために、照明もない(スタンド対応)。
またこの部屋は、使ってない時などに、部屋内から窓面にプロジェクションして、作品を公開する、っていう活用もある。



ということで、ちょっとばかり作業が残っているものの、一応目処がついた。地域にはマル暴関係の方々も少なくなく、割と心配とかしていたんだけれど、それも杞憂だった。最後の片付けをしていたら、ある学生(女のこ)は「何か面倒なことがあったらすぐに相談にくるんだぞ」とかって声をかけられていたほどだ。


神奈川大学での活動をはじめて、いきなりSoboro(京都のカフェ)、桜荘、妻有と続いた。たった4ヶ月で、3つの実施プロジェクト。ちょっと多すぎだ。
これであとは妻有に集中して、それが終わったらいったん落ち着けることになる(はず)。4年生は卒業製作もあるし、ちょうどいいか。たまにはこういう年があってもいいかな。ああ、つかれた(腰も痛い)。