一枚の葉

私の好きな画伯・小倉遊亀さんの言葉です。

「一枚の葉が手に入れば宇宙全体が手に入る」

沢木耕太郎「一瞬の夏」

2020-10-26 09:44:34 | 読書
       私が沢木耕太郎が好きなのは、
       その取材方法で、こういっている。

       「私は 自分で見たもの 直接聞いたことしか
        書かない」

       こういう姿勢だからこそ、真実に迫る、 
       リアルな表現ができるのだろう。

       『一瞬の夏』の例を あげよう。

       カシアス内藤は 有能なボクサーなのだが、
       彼の性格の弱さからか 無残な結果に終わった。

       その内藤が 4年後に復帰するという。

       当時、駆け出しのルポ・ライターであった沢木は、
       何か心騒ぐものがあって、
       プロモーターを買って出て、
       ポケットマネーで資金の援助もした。
      
       ときどき練習現場に顔を出し、
       内藤の仕上がり具合をチェック。

       努力嫌いの内藤は 減量もなかなかうまくいかない
       ようで 苦しんでいた。

       結果を急げば 案の定、 一回戦で KO負け。

       1年間にわたる 著者と内藤の闘いは 終わった。

       沢木は 勝ち戦だけでなく 負け戦もきちんと
       描いた。
       そこには 一ボクサーではない、
       一人の人間の夢と希望や 弱さもあった。