一枚の葉

私の好きな画伯・小倉遊亀さんの言葉です。

「一枚の葉が手に入れば宇宙全体が手に入る」

「さんまの歌」

2020-08-23 09:53:39 | 雑記


        秋風が立つと さんまの季節到来。

        「さんまの歌」は佐藤春夫の歌(詩)。

        私は当初、この歌を
        独り者の中年男の悲哀の歌と思い込んで
        いたのだが、さにあらず。

        「あはれ 秋風よ/情(こころ)あらば伝えてよ
         --男ありて/今日の夕餉に ひとり/
         さんまを食らひて/思いにふける と。
         …… …… ……
         さんまさんま /そが上に青き蜜柑の酢を
         したたらせて/
         さんまさんま/さんま苦いか 塩っぱいか」

        実はこの歌、佐藤春夫の恋歌だったのだ。

        その頃、
        谷崎潤一郎と佐藤春夫は 互いに作家として
        認めあう交友関係にあった。

        ところが 春夫が 谷崎と不仲の千代夫人に同情、
        さらに愛情に変わったことから三角関係に。
        当然、絶交状態となる。

        やがて和解するが、
        谷崎は千代を春夫にゆずりわたすという
        「小田原事件」に発展。
        (谷崎は 別の女性と結婚)

        つまり、
        「さんまの歌」は 春夫が千代に向けた
        思慕の歌であったのだ。

        ああ、驚いた!
        「小田原事件」はいまも文学史上にのこる
        大事件なのである。