一枚の葉

私の好きな画伯・小倉遊亀さんの言葉です。

「一枚の葉が手に入れば宇宙全体が手に入る」

猫町

2019-03-09 07:00:38 | 読書



       必要があって萩原朔太郎を読んでいる。

       朔太郎といえば、
       詩集『月に吠える』
       だが、
       今回はあえて『猫町』について。

       『猫町』は散文詩風の短編小説である。

       これには、いろいろな猫が出てくる。
       私はこれを読んだとき、
       朔太郎の抱えている苦悩、憂鬱、煩悶が
       分かるような気がした。

       つまり、
       私もこんな感覚になって迷子になったことがあり、
       他人事ではないような気がしたのである。
              

       『猫町』はこんな風にはじまる。

       「私(主人公)は毎日4、50町(30分~1時間)
        くらいの散歩をしていた。
        田舎町のどこでも、商人は算盤をはじき、役人は 
        煙草を吸い、来る日も来る日も単調な暮らしを
        続け、次第に年老いていく人生を考えている。
        ……その日もやはり……」

       こんな風に、もの思いにふけり、
       人生を考えながら散策する詩人。
       やがて道に迷い、
       気がつけば猫だらけの町にいた。

       そして、
       「詩人は道をなくしていた」
       「迷子になった」
       
       やがて、
       現実にもどされたときの不思議な感覚!

       自分は一体、どこの世界にまぎれ込んで
       いたのだろうか。
       夢か現(うつつ)か?

       私(内田)は
       歩いて図書館に行った帰り、
       完全に道をうしない(迷子になり)  
       一時間半ほど、さまよい歩いて、
       やがて現実に生還した。

       それは決して悲惨でも、寂しくもなく、
       幸福な体験であった。

       もっとも私の場合、
       詩人の要素とはほど遠く、
       単なる「方向オンチ」といったものだが。

       昔、年寄りはよく言ったものだ。

       「季節の変わり目は気がふれる」
       つまり、精神状態がおかしくなる。

       私は、そのたぐいかもしれない。