師走を前に、ちょっとひと息。
メンテナンスのため、整体に行ってきた。
この欄で何度も書いたけど、
お目当ては待ち時間に読む「週刊新潮」に
載っている、
五木寛之センセイのエッセイ。
昨日読んだのは
(だいたい2~3週間遅れで読む)
こんな内容だった。
先生は今年86歳。
30年以上も前の話である。
ある出版パーティーでのこと。
廊下で大先輩の今東光先生に遭遇した。
五木センセイは恐縮して廊下の端に寄って
今先生が通り過ぎるのを待った。
すれちがう際、
今先生がこうおっしゃったのだそうだ。
「きみ、いくら髪が多いからって
長くすればいいってもんじゃないよ」
世は長髪の時代。
ビートルズにならってか、
若者も中年も流行の長髪にしていた。
もちろん五木センセイも長髪とはいえないが、
長めの髪。
(今先生は僧侶だから、つるつる頭)
これには絶句して、何も云えなかったそうだ。
それからしばらくして、
ある会合で石坂洋次郎さんに出会った。
五木氏(ここから「氏」に変わる)は
石坂さんの
「若い人」や「青い山脈」
「陽のあたる坂道」
が大好き。
日頃から敬愛し尊敬している大先生である。
ところが、
石坂さんは毎度こうおっしゃる。
「五木ひろし君、きみは……」
氏がたまりかねて
「あのう、<ひろし>」ではありません。
<ひろゆき>です」
というと、
「ああ、失敬。<ひろゆき>君」
に云いかえるのだが、
またしばらくして会うと、
「五木ひろし君……」
とはじまる。
こんな石坂さんはある時、司馬遼太郎氏に
こういったそうだ。
「きみの『青春の門』はいいね~」
云うまでもなく
『青春の門』は五木寛之氏の代表作。
司馬さんは五木氏に
「『ありがとうございます』と云っておいたけどな」
と報告したそうな。
「申し訳ございません」
と五木氏が謝ると、
「いや、きみが謝る必要はないんだよ」
と司馬さん。
いやはや、
文壇の長老、重鎮もアルツハイマーになるのだろうか。
エッセイの最期で五木氏は
「私もいつかトンチンカンなことを云うかもしれない
がよろしく」
と結んでいる。
※ スーパーのクリスマス飾り