一枚の葉

私の好きな画伯・小倉遊亀さんの言葉です。

「一枚の葉が手に入れば宇宙全体が手に入る」

ひと息

2018-12-01 07:19:07 | Weblog


       師走を前に、ちょっとひと息。

       メンテナンスのため、整体に行ってきた。

       この欄で何度も書いたけど、
       お目当ては待ち時間に読む「週刊新潮」に
       載っている、
       五木寛之センセイのエッセイ。

       昨日読んだのは
      (だいたい2~3週間遅れで読む)
       こんな内容だった。

       先生は今年86歳。
       30年以上も前の話である。

       ある出版パーティーでのこと。
       廊下で大先輩の今東光先生に遭遇した。

       五木センセイは恐縮して廊下の端に寄って
       今先生が通り過ぎるのを待った。

       すれちがう際、
       今先生がこうおっしゃったのだそうだ。

       「きみ、いくら髪が多いからって
        長くすればいいってもんじゃないよ」

       世は長髪の時代。
       ビートルズにならってか、
       若者も中年も流行の長髪にしていた。

       もちろん五木センセイも長髪とはいえないが、
       長めの髪。
(今先生は僧侶だから、つるつる頭)

       これには絶句して、何も云えなかったそうだ。


       それからしばらくして、
       ある会合で石坂洋次郎さんに出会った。

       五木氏(ここから「氏」に変わる)は
       石坂さんの
       「若い人」や「青い山脈」
       「陽のあたる坂道」
       が大好き。
       日頃から敬愛し尊敬している大先生である。

       ところが、
       石坂さんは毎度こうおっしゃる。
     
       「五木ひろし君、きみは……」

       氏がたまりかねて
       「あのう、<ひろし>」ではありません。
        <ひろゆき>です」
       というと、
       「ああ、失敬。<ひろゆき>君」
       に云いかえるのだが、
       またしばらくして会うと、
       「五木ひろし君……」
       とはじまる。

       こんな石坂さんはある時、司馬遼太郎氏に
       こういったそうだ。
       「きみの『青春の門』はいいね~」

       云うまでもなく
       『青春の門』は五木寛之氏の代表作。

       司馬さんは五木氏に
       「『ありがとうございます』と云っておいたけどな」
       と報告したそうな。

       「申し訳ございません」
       と五木氏が謝ると、
       「いや、きみが謝る必要はないんだよ」
       と司馬さん。

       いやはや、
       文壇の長老、重鎮もアルツハイマーになるのだろうか。

       エッセイの最期で五木氏は
       「私もいつかトンチンカンなことを云うかもしれない
        がよろしく」
       と結んでいる。


       ※ スーパーのクリスマス飾り