一枚の葉

私の好きな画伯・小倉遊亀さんの言葉です。

「一枚の葉が手に入れば宇宙全体が手に入る」

泣いていた女先生

2018-04-14 07:31:57 | 雑記



       ウォーキングの途中の山路で
       真っ赤なツツジを見た。

       誰が見るでもなく、
       ひっそりと、しかしながら色鮮やかに
       咲くツツジ。

       私は、この真っ赤なツツジとともに
       強烈に覚えている思い出がある。

       
       私は小学3年生だった。

       担任は女の先生で、
       コヤナギ先生といった。

       20代後半の若い先生で、
       同じ学校の男の先生と恋をしているという
       噂があった。

       しかしながら、
       その男先生は品行よろしくなく、
       悪い噂がたっていて、
       恋の行方も暗雲立ち込めているらしかった。
       (大人たちがする噂話は子供の耳にも入っていた)

       ある日、コヤナギ先生の様子がおかしい。
       私はぎょっとして先生の姿に釘づけになった。

       なんと先生は教壇のすみで
       (生徒に見られないように)
       後ろ向きになって泣いているのである。
       (肩がふるえていた)

       何があったのだろう。

       その日は職員会議がある日で、
       校長先生や他の先生から何か云われたのだろうか。

       子供の私に、
       大人の事情を忖度する余裕はなかったが、
       窓から外を見ると、
       校庭の隅に、真っ赤なツツジが咲いていた。

       やがてコヤナギ先生は身体をこわして休職し、 
       噂の男先生も別の学校に転任になったが、
       その後、二人の恋はどうなったのか分からない。

       教職員の転任の季節。
   
       真っ赤なツツジを見るたびに
       子供の頃を思い出して、
       ちょっと切なくなるのである。