森の中を散歩していたら、
迷子らしい子犬に出会った。
近くに人家もないところだから
飼い主の知らぬ間に外に飛び
出したのか……。
犬というのはなぜか、
(ペットとして愛玩されていれ
ばいるほど)
人の顔を見る。
犬に慣れていない私は、困った
なと思ったが(なるべく)目を
合わせないように通り過ぎた。
以来、あの犬を見ていない。
無事家に帰れたのかどうか。
迷子といえば、高齢者の徘徊。
昨日も市の警察署のアナウンス
があった。
「●●さんが昨日から行方不明
になっています。
特徴は…………」
といって、身長や髪形、着てい
る洋服などが拡声器から流れて
くる。
子供の場合は迷子で、高齢者に
なると徘徊というのか。
私もときどき、
夢か現実(うつつ)か分からな
くなる。
あれこれ想って、
あれは夢だったろうか、
現実のことだったろうか、と
区別がつかなくなるのだ。
その感情は決して嫌なものでは
なく、
私にとってむしろ至福のとき
なのだが。
私はすでに認知症の範疇に足を
踏みいれているのだろうか。