一枚の葉

私の好きな画伯・小倉遊亀さんの言葉です。

「一枚の葉が手に入れば宇宙全体が手に入る」

啄木没後100年

2012-03-18 21:29:27 | 読書



      今年は近代日本を代表する歌人・詩人の石川啄木
      (1886~1912)
      が逝って100年になる。

      岩手県に生まれ、創作と生活に苦闘し、26歳で
      早世した啄木。東北大震災の後、東北出身という
      こともあってか見直されているのだという。
      啄木というと、
     
       東海の小島の磯の白砂に
         われ泣きぬれて 蟹とたはむる
      
       ふるさとの訛なつかし停車場の
         人ごみのなかに そを聴きにゆく

      といった中学生でも解釈なしで分かるような歌が
      すぐ出てくる。
      もっとも「そを聴きにゆく」の「そ」は分からな
      かったけど。

      また、新聞社や友人からお金を借りたおしたこと
      でも有名だ。
      そのせいか、感情が激しくて、女々(めめ)しい
      くせに自己顕示欲がつよい。
      そんな啄木がハナについて、一時夢中で読んだが、
      その後は遠ざかっていた。

      しかし、それは天才ゆえの苦悩だったのかもしれ
      ず、感傷的で分かりやすい歌の底にこそ深いもの
      があるのかもしれないと思うようになった。

      啄木が歌をつくったのはわずか3年。
      自分を天才だと思い込み、夏目漱石ぐらいの小説
      はいつでも書けると東京に出てきたが、誰も相手
      にしてくれない。
      天才意識がつよいから、失意もつよい。
      その落差が他の人には見えないものを見せたの
      ではないかといわれている。
  
      啄木は、短い人生の間に長い人生のすべてを経験
      してしまったとしたら、さぞ生きにくかったろう
      と今では思う。
      いま、私の好きな歌をあげると下記になる。
      
       何となく汽車に乗りたく思ひしのみ
          汽車を下りしに ゆくところなし

      どこか他の所にいきたい。でも、どこにいったら
      いいのか分からない気持ち。
      この魂の彷徨というか、さみしがり屋なのだろう。
      啄木には孤独という文字がよく似合う。