一枚の葉

私の好きな画伯・小倉遊亀さんの言葉です。

「一枚の葉が手に入れば宇宙全体が手に入る」

最後の仇討

2011-12-15 14:22:36 | 読書


    12月といえば赤穂浪士、赤穂浪士とい
    えば仇討ち、なのに昨日は討ち入りの日
    だということを忘れていた。
    このところすべてこんな調子で、世の中から
    1日か1週間おくれ、はたまた1シーズン遅
    れで尾(つ)いていく感じなのである。

    討ち入りで思い出すのは吉村昭の「最後の仇
    討」である。

    明治13年12月17日、
   (明治になってから「仇討」は禁止されている)
    臼井六郎は叔父と父を殺され、仇討ちを決意
    し、ついに本懐を遂げる。

    これは実話をもとにしているのだが、
    仇討ちといってもそう簡単にできるものでは
    ない。
    故郷を捨て、身を隠し、しかも敵に出遭える
    のは百分の一にも満たぬ確率。
    果たして出遭えたとしても、仇討ちが成功す
    る保証はどこにもない。
    ヘタすると、こっちが殺(あや)められるか
    もしれないのだ。

    吉村昭はそのところの人間の心理も見事に
    描いていて、読んでいてハラハラドキドキ
    する。私の好きな作品の1つである。

    実際にどうしたか。
    主人公は当然のごとく殺人罪に問われ、終身
    刑をいいわたされる。
    しかし10年後の大日本帝国憲法発布の恩赦
    で出獄するのだが。

    ぼやけきっている私には仇討ちする相手も
    いないが、強いていえば「己」であろうか。