一枚の葉

私の好きな画伯・小倉遊亀さんの言葉です。

「一枚の葉が手に入れば宇宙全体が手に入る」

『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』その1

2011-07-09 15:29:06 | 読書


    TV映像的にナレーションをつければこういう
    ことになろうか。

     (19)60年代、チェコの首都プラハのロ
     シア語学校で4人の少女が出会った。
     アーニャ、ルーマニア人。
     リッツア、ギリシャ人。
     ヤースナ(ヤスミンカ)、ユーゴスラビア人。
     そして万理、日本人。
     4人の少女は卒業後、一度も会うことはなか
     った。
     その間に時代は激動して社会主義は崩壊し、
     東欧諸国の運命も大きく揺れ動いていった。
     その後、みんなどうしているのだろうか。
     そこから万理の少女たちを訪ねる旅がはじ
     まるのである。

    実際、日本に帰国後、紆余曲折をへてロシア語
    通訳となった米原万理は、ソ連崩壊後の混乱の
    日々に忙殺されながらも、旧友たちの安否が気
    になって仕方がなかった。
    そして、ロシアの要人の突然の訪日中止という
    休暇を利用して彼女らを探す旅に出たのである。

    「リッツアの夢見た青空」
    「嘘つきアーニャの真っ赤な真実」
    「白い都のヤスミンカ」
    の三編からなる本書は文庫本で100頁と決し
    て長くはない。
    ところがその内容たるや実に豊富な知識で埋め
    つくされ、政情や歴史抜きには考えられない
    社会情勢など、単なる一人の少女の成長過程や、
    一人の女性のキャリアを紹介するに留まるもの
    ではない。
 
    考えようによっては重くなりがちなテーマを、
    作者はその軽妙洒脱な切り口でバっサバっサと
    小気味よく切っていく。
    それこそ米原万理の魅力で、読者はたちまち
    その術中にはまってしまうのである。
    ところでなぜ「嘘つきアーニャ」となったか、
    それは次回にゆずることにしよう。