一枚の葉

私の好きな画伯・小倉遊亀さんの言葉です。

「一枚の葉が手に入れば宇宙全体が手に入る」

京都紀行 その3

2009-06-11 21:44:10 | 
    京都紀行に話をもどそう。
     
    新島夫妻が京都寺町通りに構えた邸が現在、
    有形文化財としてボランティアの人たちに
    よって護られている。
    周囲にバルコニーをめぐらした、当時としては
    洒落た建物。
    (写真は2階の書斎)
    応接間やセントラルヒーティングなど洋風スタイル
    を取り入れ、中でもトイレは日本で初の洋式トイレ
    だとか。
    
    ここで2人は新婚時代を送った。
    ところが着物に帽子、編み上げ靴という八重の
    恰好がすこぶる評判が悪い。
    まして夫が「八重さん」と呼ぶのに対して、妻は
    夫を「襄」と呼び捨てにし、さらに人力車に乗る
    際、夫に手をとらせて先に乗りこむ八重の横柄な
    態度も、当時の学生たちには我慢がならなかった
    ようだ。

    学生というのは徳富猪一郎(後の蘇峰)や蘆花
    兄弟たち。
    新島先生が八重を妻にしたのは「一生の不覚」だ
    とし、学生や新島夫妻のいる公開の場で明らかに
    夫人を中傷した。
    蘆花に至ってはその作品の中で八重を「鵺(ぬえ)
    のような女」とまでいっている。
(鵺とは上半身と下半身がちがう妖怪のこと)
    若くて潔癖な彼らには、八重の奔放な生き方は
    受け入れられなかったのであろう。

    これらのバッシングもどこふく風、八重は自分を
    貫き、襄も学校に反旗をひるがえして退学した
    彼らにもやさしく接した。
    襄の寛容さは宗教からくるとしても、八重のその
    動じない自信というのはどこからくるのだろう。
    まだ追及できないでいる。