蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

監督の問題

2019年04月22日 | 本の感想
監督の問題(本城雅人 講談社)

新潟を本拠地とするプロ野球チーム:OCアイビスは、冴えない成績が続き、毎年監督のクビがすげ替えられている。関西の人気チームの4番だった主人公の宇恵は、アイビスの新任監督になるが、コーチ陣は対立が目立ち、選手のやる気はイマイチで困惑気味・・・という話。

選手に関するエピソードはほとんどなく、オーナー、球団代表、コーチ、球団広報との間でのやりとりが話の中心で、野球小説だと思って読み始めたらサラリーマン小説だったという感じではあったけど、けっこうおもしろく読めた。

チームの大黒柱のエースのトレードが監督の電話一本で決まるとか、新外国人が一言のアドバイスで打てるようになるとか、美人の球団広報の不倫疑惑で監督以下のスタッフが動揺するとか、一見非現実的と思える筋もあるのだが、著者は元スポーツ記者ということなので、案外実態はこんなものなのかもなあ、なんて思えた。

現場で指揮をとっていると頭に血がのぼってしまい(監督をやめてから振り返ると)自分でも信じられないくらい愚かな戦法を採用してしまっていた・・・などという挿話もあったが、これなんかも実際にあった話っぽいなあ、と感じた。

人気選手が引退後すぐに監督になるのはよくないと、昔から言われているが、興行面の要請もあるのか、今でもそういう例はよくある。
宇恵も、指揮・指導経験がないまま監督に就任し、春季キャンプでは何をしていいのかわからず戸惑うばかりなのだが、これもよくある現実風景なのかもしれない。
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