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蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

国際市場で逢いましょう

2016年03月07日 | 映画の感想
国際市場で逢いましょう

子供の頃、朝鮮戦争で父・妹と生き別れた主人子は、釜山の商店街で雑貨商?を営むおばを頼る。
成長した主人公は、弟の学費を稼ぐため西ドイツの炭鉱に出稼ぎに行き落盤事故にあって死にそうになったりする。
一度帰国したものの、今度はおばの雑貨店を買い取るためのカネが必要になり、戦争中のベトナムへ赴く。ここでも生命の危機を乗り越えるが片足を失ってしまう・・・という話。

韓国のドラマや映画を見たことはほとんどありません。
免疫がないせいか?全編にわたって続くやや大げさな感情表現にはやや違和感がありましたが、なんというか、他の国の映画にはないパワーもまた感じました。(それにしても主人公がピンチになると、泥汚れなどですぐ顔がまっ黒になってしまうのは、(昔の日本のコメディ(ドリフとか)を思い出してしまい、シリアスな映画としては)やりすぎの感もありますが)

すぐ隣の国だし、この映画で見る街の風景や暮らしの情景も似ているのに、感情の濃さというか喜怒哀楽の表現方法に大きな違いがあるのはどうしてなのでしょうか。

また、韓国の現代史について(私が)全く知識がないことにも気づかされました。
興南からの脱出、最近まで(というか現在も?)続く朝鮮戦争で離散した家族の捜索、西ドイツなどへの出稼ぎ労働、ベトナム戦争に派遣された韓国軍 などなど。
幸いにも民族分断の憂き目にあわず、朝鮮戦争を踏み台にし、ベトナムどころか戦後一度も海外派兵していない隣国を見るとき、「不公平だ」と思うのも無理ないか、と思いました。

不愉快な本の続編

2016年03月04日 | 競艇
不愉快な本の続編(絲山秋子 新潮社)

主人公はフランスに留学していたが帰国してヒモ兼金貸しみたいなことをしていた。やがて結婚するが相手が浮気して離婚する・・・という話。
という筋にはあまり意味がなくて、

主人公の

悪漢的行為とウラハラな内省、

何人もの女性のヒモだった経験があるのに妻の浮気に動揺する様子、

自堕落な生活を送っているように見えて実は真面目に運転代行や会社勤務をこなす性格、

美術館の展示物に心奪われる純真さ、

などを楽しむ小説だと思う。

君の膵臓をたべたい

2016年03月03日 | 本の感想
君の膵臓をたべたい(住野よる 双葉社)

娘が読んで、「たいそう良い」というので借りて読んでみました。
なるほど、砂糖とミルクをたっぷり入れたコーヒーのような味わいの小説で、年頃?の夢見る中学生を酔わせる要素が強い作品でした。

目立たない女の子が学校一の人気者の男子生徒になぜか気に入られるけど、男子生徒には大きな秘密があって・・・などという典型的な少女マンガをさかさまにしたようなストーリーで、主人公の名前を意図的に伏せている点にタネがある叙述モノなのかと思って読んでいたのですが、そういうミステリ的な仕掛け、あるいはタイトルから連想されるようなホラー的要素は全くないストレートな恋愛小説でした(というか、もしかして私が気づいていないだけ?)

いまどき、こんなプラトン的?生活やお付き合いができる高校生がいるんかい、などといのは野暮で、現実にはいないからこそ人気がでるのでしょう。

オデッセイ

2016年03月03日 | 映画の感想
オデッセイ

原作を読んだ後に見に行きました。

2.5時間と長尺なのですが、原作の魅力である細かな科学的(と見せかけた?)説明は当然ながら相当にはしょられているので、原作を読んでないと理解できない場面が多いのではないか(例えば、パスファインダーって何?とか、火星の基地のエアロックはなぜ爆発したのか、など)という懸念を感じました。
一方で、ややこしい話をうまくまとめてラストで大きなカタルシスを作ることに成功している(母船にピックアップされる場面はたいそう盛り上がります)ようにも思えて、映画としてはこれでいいのかなあ、とも思いました。

「オデッセイ」という邦題も初めて聞いたときは、どうよ?って感じがしましたが、「火星の人」とか「マーシアン」ってわけにはいかないでしょうから、見終わった今では、まあまあ内容にふさわしいもののように思えました。(もっとも「オデッセイ」が“冒険の長い旅”的な意味であることを知っている人がたくさんいるとも思えませんが)

原作を読んだ時に私が感じた心配(マジメな人の印象の強いマット・デイモンでは原作の乾いたユーモアを表現しにくいのではないか)については、懸念通りで、映画の中のワトニーは謹厳実直なNASA職員、というイメージでした。
映画の中ではリッチ・パーネル(ヒッピーっぽい格好の軌道計算のスペシャリスト)とヴェンカトが原作の雰囲気に近いものがありました。