蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

極道めし

2012年09月09日 | 映画の感想
極道めし

刑務所で同じ房になった5人が、お正月に出されるおせち料理を賭けて、いままでの人生で一番うまかった食べ物にまつわる経験を話す(聞いている人の喉をごっくんといわせた数が多い人の勝ち)というゲームをする。

思い出の食事は、全員が母親か恋人が作ってくれた料理。

・警察に追われて実家に逃げてきた時に、母親が自家栽培のトマトやトウモロコシ、卵で作ってくれた食事(特にトマトのごまあえ?)がうまそうに見えた)。

・連れ子と愛人とで食べた海辺のバーベキュー(これはイマイチ)

・惚れたスナックのママが作ってくれたカレーソースのオムライス(これもあまりうまそうに見えなかった)

・母親が愛人と逃げ出す直前に作ってくれたホットケーキ

・同棲していた女の子が別れ際に作ってくれたインスタントラーメン(これは、とってもうまそうだった)

・とれたて?の牛肉で作った甘いみそだれ?のすき焼き

出所した男が別れた女の子がやっているラーメン屋を訪ねるシーンで、かつての愛人が出所してそこに来ていることに(女の子が)気づいていたのかそうでなかったのか、は、はっきりとは示されず、余韻のあるいい終り方だと思った。
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東京奇譚集

2012年09月09日 | 本の感想
東京奇譚集(村上春樹 新潮社)

村上春樹さんは、数多くの長編ベストセラーを出していますが、短編の方が技量?としては上なのではないか、という話を聞いたことがあります。
私は長編、短編ともあまり読んだことがなかったのですが、あるアンソロジーにはいっていた「沈黙」は、確かに優れた作品だと思いました。

本書は、たまたま図書館の開架にあったので、なにげなく借りて読みました。
5つの短編がおさめられていますが、どれもとても面白く、あっという間に読み終わってしまいました。

どの話の主人公も現実にはいそうにないほど人生を割り切っていて、生活スタイルや会話がおしゃれで、起こる事件も(本のタイトル通り)いかにも作り話ぽくって、普通ならしらけてしまいそうなものですけれども、ページをめくる手が止められないほどだというのは、やはりテクニックなんでしょうね。

特に「ハナレイ・ベイ」がよくて、ハワイの海岸で椅子に座ってじっとサーファーを見つめる主人公の姿や頼りなさげな青年たちとのやりとりが、非常に鮮やかに脳内に再現されました。
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J・エドガー

2012年09月09日 | 映画の感想
J・エドガー

初代FBI長官エドガー・フーバーの伝記映画。

フーバーのモンスターぶりはあまり強調されず、マザコンや同性愛に苦しんだ様子など人間的な弱点を中心に描写されている。

過去と現在をいったりきたりするが、場面の切替方法に工夫(例えば過去の場面でエレベータに乗っていて開くと現在に場面転換するとか・・・逆だったかな?)があって新鮮な感じがした。
ただし、ディカプリオは老人メイクをしてもやっぱりベビーフェイスで、若い時とあまり激しい差が感じられなかった。
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転移

2012年09月09日 | 本の感想
転移(中島梓 朝日文庫)

すい臓がんが肝臓に転移した後の闘病記。

グインサーガのファンだったので、著者の逝去はとても残念だった。
まだ55歳。グインはまだまだあと100巻くらいは続きそうな展開だったのに、神様ももう少し人を選んで召してもらいたものだ。

がんになると食が細くなって痩せ衰えるとうのは、一般的な知識として知っていたけれど、その過程がとても詳しく書かれていて、つらさが伝わってきた。

解説で指摘されていることだが、著者は家族(とりわけ母親)に対して非常に強いストレスを感じている。本書でも夫、子供にくらべて母が登場する回数が圧倒的に多い。
昔から「団らん恐怖症」(家族と夕食をとろうとしても食べられないが、一人でなら食事ができる)で、若い時にも拒食症だったので、食べられないのは心因的なものだろうと思い込もうとしているが、やっぱりがんの影響だったのだろうと、傍目には思えた。

それでも著者の小説や着物に対する情熱はすごくて、末期がん患者なのに、並みの小説家より多くの原稿を書き(この闘病日記もボリュームがすごい)、呉服の展示会に出かけては着物を買いまくってストレスを解消する。

このような買い物中毒?のためか、著者は経済的にはあまり楽な状態ではなかったようだ(グインを書かないと金銭的に苦しいという記述があった)。
下世話で恐縮だが、グインはおそらく1冊平均10万部はいったろうから、150冊書いたとして印税だけで10億近くあったはずで、それでおカネがないというのは・・・呉服屋の超上得意だったのか、それともミュージカルの製作とかで蕩尽したのだろうか?(不謹慎な話題ですみません・・・)
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