蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

印象派で「近代」を読む

2012年09月17日 | 本の感想
印象派で「近代」を読む(中野京子 NHK出版新書)

なぜ日本人は、印象派が好きか?
という問いに対して著者は
「印象派以前の絵画には意味があり、その意味がわからなければ感じることさえできない。そのためには、肖像画であれば、それが誰でどんな功績のあった人物か、歴史画であれば、それがどの時代のどんな事件か、神話画であれば、それはギリシャ神話のどの物語か、宗教画であれば、それは聖書のどの場面か、そういった知識が不可欠なのに、とてもまだそこまでは手がまわらない。また印象派以降の絵画は、それこそ百科繚乱のうえ抽象性と個別性が強くなりすぎて、どう感じていいのかさえ謎。そこで、すんなり理解できる印象派への殺到、という状態なのかもしれません」
という。

印象派という名前には、絵画を見る前提となる(西洋的)教養がなくても見たまま感じたまま鑑賞できる、という侮蔑のニュアンスをふくんだもののようだ。

掲載されている絵で、気に入ったのが「ラ・グルヌイエール」(モネ)。
著者も指摘しているが、あらあらしい筆使いなのに本物の「印象」そのままの波の描写がいい。

また、広重の「箱根・湖水図」をモチーフにしたと思われるスールの「オック岬」を上下に並べて前者が圧倒的にすぐれていることを指摘していたのも印象的だった。
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ブラックスワン

2012年09月17日 | 映画の感想
ブラックスワン

主人公のバレリーナは、高い技術を持っていて白鳥の湖公演の主役に選出される。
彼女は母親にスポイル気味に育てられ、今でも強い影響下にあるせいか、性格的に子供っぽくて成熟していない。
演出家はむしろ抜擢して彼女を鍛えることで大人の女性・バレリーナへ脱皮させようとする。

しかし、主人公はなかなかカラを破ることができず、ライバルの出現もあって次第に精神的に追い詰められていく。
その追い詰められていくプロセスの表現方法がサイコサスペンス風で、しばしば主人公の妄想と現実の境目があいまいになる。
しかし、バレエを描くという主題は全く揺るがず、幻想的なエピソードも終末部分では(映画の中の現実と)見事に整合させていた。
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