蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

ディックアンドジェーン

2006年11月08日 | 映画の感想
主人公は大手IT企業(だった思う)の広報担当部長に抜擢されるが、そのとたん会社は不正経理がバレて倒産。社長は持株を売り逃げる。
財産のほとんどが自社株だった主人公は大企業に勤めていたプライドが災いして再就職できない。やがて家計は破綻し、主人公と妻は強盗で生計をたてる。強盗稼業が板につき(?)何とか一息ついた主人公は(元)社長の財産を横取りしようと策を巡らすが・・・

ジムキャリーって、「この人(演技じゃなくて)本当にヘンな人なのでは?」と思わせるほどのギャグが売り物だと思うのだが、この映画ではおとなしい普通のコメディアンという感じ。

映画のラストで(映画の中で倒産した会社のモデルと思われる)エンロンやタイコの経営者への非難のメッセージがクレジットされる。この映画はジムキャリー自身のプロデュースらしいが、もしかして、ジムキャリーはこういった「不正経理会社」の株主で、この映画はある程度実体験に基づいていたりして??
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北村薫のミステリー館

2006年11月04日 | 本の感想
北村薫のミステリー館(北村薫編 新潮文庫)

ミステリー周辺の短編を集めたアンソロジー。博覧強記という言葉が似合う北村さんの選択によるもので、だれでも知っている有名なもの、というより埋もれた傑作を発掘しようという狙いがあるようです。巻末に宮部みゆきさんとの対談形式で各編の詳しい解説を読みやすくまとめてあるのも、おおきなウリになっていて、一編読んでは巻末の解説を読むというのも楽しい読み方です。

さて、不明にして今まで奥泉光さんの著作を読んだことがなかったのですが、本書に収録されている奥泉さんの「滝」はとても印象深い作品でした。
新興宗教に帰依する少年たちが夏合宿の修行で山中の滝めぐりをする話。恐らくモデルのような団体があるわけではなく、著者の頭の中だけで構築された物語だと思うのですが、ミステリでもなく、純文学でもエンタテイメントでもない、「小説」としか分類のしようがないような、というより、「小説かくあるべし」というべき作品かと思います。

私が読んだことがある人の中では、三島由紀夫さんとか坂口安吾さんとかの小説に似た感じというのか、とにかく小説家の力量が読むものをだじろがせるような小説でした。(表現力がなくてすみません)
元々の収録先の本はすでに絶版のようですが、奥泉さんの他の作品を読んでみたくなりました。
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大山康晴の晩節

2006年11月03日 | 本の感想
大山康晴の晩節(河口俊彦 新潮文庫)

著者はプロ棋士で、将棋界や棋士を描いた作品を数多く手がけている。著者自身はプロ棋士としての成績はあまりよくないみたいで、そのせいか、棋士の悲運や哀愁を語る時が一番精彩を感じる。

本書は大山康晴という近世最高の実績を残した(わりには既にその業績が忘れられかけている)大名人の評伝。タイトルには「晩節」とあるが、全盛期も含めて「大山時代」全体を描いている。

私が将棋をおぼえた頃は中原全盛の時代で、大山さんはどちらかというと敵役のイメージだったし、ド素人から見てもその棋風は地味でケレンとか面白みがあまり感じられないものだった。

しかし、本書で戦績を見るとあまりに圧倒的な強さにあらためて驚く。七冠を取った時の羽生さんのような状態がかなり長期間に渡って維持されたような感じだろうか。
「敵役」のイメージは、最強期の北の湖や西武ライオンズのように、その強さゆえに、同業者のみならず世間からも嫉妬され、憎まれたゆえに形成されたのだろう。
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