蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

大山康晴の晩節

2006年11月03日 | 本の感想
大山康晴の晩節(河口俊彦 新潮文庫)

著者はプロ棋士で、将棋界や棋士を描いた作品を数多く手がけている。著者自身はプロ棋士としての成績はあまりよくないみたいで、そのせいか、棋士の悲運や哀愁を語る時が一番精彩を感じる。

本書は大山康晴という近世最高の実績を残した(わりには既にその業績が忘れられかけている)大名人の評伝。タイトルには「晩節」とあるが、全盛期も含めて「大山時代」全体を描いている。

私が将棋をおぼえた頃は中原全盛の時代で、大山さんはどちらかというと敵役のイメージだったし、ド素人から見てもその棋風は地味でケレンとか面白みがあまり感じられないものだった。

しかし、本書で戦績を見るとあまりに圧倒的な強さにあらためて驚く。七冠を取った時の羽生さんのような状態がかなり長期間に渡って維持されたような感じだろうか。
「敵役」のイメージは、最強期の北の湖や西武ライオンズのように、その強さゆえに、同業者のみならず世間からも嫉妬され、憎まれたゆえに形成されたのだろう。
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