蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

第三の時効

2006年11月26日 | 本の感想
第三の時効(横山秀夫 集英社文庫)

F県警の強行犯捜査一課は3班に分かれていて、現在の班長はいずれも優秀であるが、功名争いが激しく、いがみあっている。
本書はこの捜査一課に属する刑事たちを描く連作短編集。各編で主人公が異なり、それぞれの班長が交代で主役になったり脇役になったりする。

それぞれの班長のキャラクタが、簡潔かつ明確に表現されていて、どの短編もスムーズに物語世界に入っていける。簡潔な描写、説明でありながら、けっこう複雑な人間関係や事件の背景を読者に納得させてしまう技術は新聞記者の経歴で養われたものだろうか。
ただ、ミステリとしての中心ネタは少々強引というか、非現実的。特に表題作(第三の時効)は「まあ、理屈ではそうかもしれんが、ありえんわな」という感じがした。
一方「密室の抜け穴」は、トリックは平凡だが、物語の筋に必然性があり、刑事の心理描写が秀逸で、意外性もあり、最も楽しめた。
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