蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

タクヤとコウダイの物語

2019年09月12日 | 野球
タクヤとコウダイの物語

2010年の育成ドラフトのソフトバンクの指名は次の通りでした。
1位 安田圭祐(外)
2位 中原大樹(内)
3位 伊藤大智郎(投)
4位 千賀滉大(投)
5位 牧原大成(内)
6位 甲斐拓也(捕)
4位が千賀投手で6位が甲斐捕手(さらに5位が牧原選手!)という、育成ドラフト史上最高では?と思える成果です。

入団2年目くらいから早くも頭角を現した千賀投手に比べ、キャッチャーというポジションもあって甲斐捕手が1軍の試合にそこそこ出始めたのは一昨年くらいから。
二人がバッテリーを組んで、2017年シーズンの(千賀投手の)初勝利をあげた試合後のインタビューで千賀投手は・・・(以下、日経新聞2017.4.12より)
「2回1死1,3塁から3塁走者を刺した捕手の甲斐を「リードも良かった」と持ち上げた。ともに2010年の育成ドラフトからはい上がった同期の桜。千賀の後を追い、甲斐は今季ようやく一軍定着を目指せるところまで来た。日本代表でも活躍し、“ワールドクラス”まで上り詰めた右腕は「育成の時から一緒にやってきた。本当に(甲斐)拓也と勝てて良かった」と感慨にふけった」

将来NPBを代表するバッテリーとなることを、入団当時二人は知る由もなく、高校時代さしたる実績を残したわけでもない高卒18歳の二人は、育成契約(しかも4位と6位)という不安定な地位もあって、なんとも心細かったものと想像されます。

一番固い友情は、戦友のそれ、などと言いますが、寄る辺ない寂しさや不安に苛まれつつも同い年で似たような立場で(ポジションからして)ライバル関係でもない二人はまさに戦友のような関係を築いてきたものと想像されます。そうでないと、ヒーローインタビューで「本当に拓也と勝てて良かった」なんて照れずに言えないですよね。

そんな千賀投手がノーヒットノーランを記録した今年9月6日のロッテ戦。相棒は甲斐捕手でした。最後のバッターを空振三振に仕留めて喜びのあまり抱き合う二人・・・それはハグというより抱擁という言葉がふさわしいものでした。

ヒーローインタビューで千賀投手は「今朝、LINEで拓也から「お前のためにがんばる」というメッセージが来た」(←うろおぼえ)みたいなことを明かします。
ノーヒッター達成後の全?国民注目のインタビューで、恋人かよ!みたいなこと言っちゃう??
そういうメッセージを送っちゃう方も、それを堂々と発表しちゃう方もどうよ、などと私は心配?になってしまったのですが、おおむね、好意的に受け止められていたようです。

これって友情というより愛ですよねえ。セクシャリティとか、そのへんの変な意味じゃなくて、今時めったに見られない輝かしくて純粋な愛というものを見せていただいたような、そんな場面でした。

なお、千賀投手が甲斐捕手のことを「タクヤ」と呼ぶのは、当初の登録名が「拓也」だったことも影響しているかと思え、甲斐捕手が千賀投手のことを「コウダイ」と呼んでいるかどうかはよくわかりません。

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