蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

羊と鋼の森

2016年10月17日 | 本の感想
羊と鋼の森(宮下奈都 文芸春秋)

主人公の外村は、高校時代に学校のピアノの調律に訪れた調律師(板鳥)の腕前に魅せられ、専門学校に入って、板鳥の所属する楽器店に就職する。板鳥のような調律師を目指すが、現実は厳しくて・・・という話。

あとがきを読むと、著者は長年ピアノを続けてきた人のようで、音楽に親しみがあるようだ。著者にとって、音楽とは森のようなもので、その森にはいれば、俗界の悩み事からも解放されるようなイメージを持っているのではないかと思えた。

タイトルの「羊」はピアノのハンマーがウール製である(初めて知った)ことから、「鋼」はピアノの弦が鋼線であることから来ている。
なので、「羊と鋼の森」というのは「ピアノ演奏による音楽の豊かさ」くらいの意味だろうか。

ところが、私は音楽については歌うのも演奏するのも極度に苦手(いわゆる音痴)だし、歌や曲を聴いても、その良さが理解できることはめったにない。そのせいか、著者が作り上げる「森」のイメージに共感することが難しくて、有体に言うと、あまり面白いとは思えなかった。
あと、主人公の外村のキャラクター設定やそれを補強するエピソードが淡泊すぎた(ひきこもり?の青年の家にいって、弾き込んでいるいるのに手入れされていないピアノを修理するエピソードはよかったが・・・)のも一因だろうか。

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