蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

キュレーターの殺人

2023年07月08日 | 本の感想

キュレーターの殺人(MW・クレイブン ハヤカワ文庫)

イギリスのカンブリア州(イングランドの北西端の州)でクリスマスに3つの場所で切断された指が発見され、3人の殺人事件が明らかになる。「#BSC6」という文字列のメッセージが残されていたことから同一犯とみてワシントン・ポー(国家警察の分析官刑事)たちは捜査し始める。一見して共通点がないと思われた被害者たちには、意外なつながりがあった・・・・と言う話。

本作の魅力は主人公のポーと同僚の分析官ティリー・ブラッドショー、そして犯人のキュレーターのキャラクターにある。プログラミングを始めとして多方面で考察・分析能力を発揮するが、人見知りでビーガンのティリーが特によくて、彼女とポーの絡み(恋愛的感情は一切ない)が、本書(というか多分本シリーズ(他2冊は未読だが・・・))の柱になっている。

山奥の古びた一軒家で暮らすポーも変わり者で、警察の同僚からも敬遠されている気配がある。しかし、警官としての使命感、ギフテッドで過敏なティリーへの敬意、ストイックな私生活などが醸し出すハードボイルドな雰囲気に酔わせてくれる。

ミステリとしての本書の魅力は・・・

3人の連続殺人犯の捜査で浮かび上がった犯人と思われた人物は、黒幕のキュレーターの誘導手段に過ぎず、被害者たちの共通点から浮かび上がった次のターゲットと思われる人物もキュレーターの仕掛けた罠の一つだった。そのキュレーターも実はカネで雇われたにすぎず・・・

といった具合に、3段重ねになった重層的なストーリー構造と、各層内でも謎解きが連続的に発生して、決して読者を飽きさせない点にある。

ストーリー自体は現実には決してありそうにないもので、物語のための物語ではあるが、前述のように登場人物のキャラ設定がよくて抵抗なく読み進むことができる。


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