蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

トヨトミの野望

2019年12月19日 | 本の感想
トヨトミの野望(梶山三郎 講談社)

フィクションとしてモデル小説を書く時、多少は勘ぐらないと誰が誰なのか、どのイベントがどの事件に当たるのか、わからないように(逆に言うと、ちょっと調べれば人物やイベントがある程度特定できるように)書くことが多いと思います。
その点、本書は人物や会社のモデルがあからさまで、名前も一字変えただけ(山田→山川みたいな感じ)みたいなのが大半で、すぐに誰をあるいは何をモデルにしているのかわかっちゃいます。
さらには、現役社長をクソミソにけなして、本書の主人公の武田(数代前の社長)をビジネスの神様のように褒め称えているのです。

冒頭のツカミは、武田の社長就任直後に若い頃の現社長(本作内では豊臣統一)が美人局に引っかかって反社の事務所に軟禁?されてしまう、という話。武田と御子柴(武田の次に社長になる人→この人も本作の中では「せいぜいが工場長くらいの能力しかない」みたいに酷評されている)が、事務所に乗り込んで救出する、という筋書きなのですが、さすがにこれは作り話ですよね??
でも、他の大部分が事実に近いので、この話も本当にあったのかも?と疑いたくなっちゃいます。

現社長の評価を高めたのは、アメリカでのリコール騒動を(アメリカ議会での公聴会出席もふくめ)際どく乗り越えたことだと思うのですが、このあたりは極めてあっさりとした描写になっています。

とにかく徹底してアンチ現社長が貫かれていて、総じて、講談社がこんなの出して大丈夫だったの?と心配になるくらいです。逆に言うと、ここまでコケにされても現社長がこの本を読んで微苦笑するくらいで、「殿、ご注進!」なんて言ってきた部下に「ほっとけ」というくらいだったら、(本作での設定と違って)本当は大物なのかもしれません。

続編は(未読です)小学館から出版されたので、大丈夫じゃなかったのかも?



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