蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

翔ぶが如く1~5

2014年08月09日 | 本の感想
翔ぶが如く1~5(司馬遼太郎 文春文庫)

大長編なので、半分くらい読んだところ(文庫版で5巻まで)でいったん感想を書いてみます。
本作品を読むのは2回目。といっても、1回目を読んだのは数十年前なので内容はほとんど覚えていませんでした。

西郷が征韓論にやぶれて下野し、西南戦争に敗れるまでを描いていて、主人公は西郷(と大久保)なのですが、例によっていろいろな脇役が、それぞれ相当の分量で描写されるので、物語はなかなか進みません。
桐野利秋、宮崎八郎などは、合計すれば文庫本1冊くらいになりそうなボリュームが割かれています。

「竜馬がゆく」の感想でも書いたのですが、著者の登場人物への好き嫌いがあからさまにわかります。

モノやおカネに執着しない出処進退の爽やかな人物(と司馬さんが見ている)人物については、欠点さえも愛すべきキャラクターとして穏やかな視線で描かれています。(例:桐野、宮崎、村田新八)
一方、無能力、カネにうるさい、粘着質、地位に拘る(と司馬さんが見ている)人物に対する酷評ぶりは(長編だけに何度も繰り返されることもあり)ちょっと気の毒なほどです。
大隈重信(高田馬場方面から抗議が来なかったのか?と心配になるくらい)や三条実美(この人は司馬さんのいろいろな著作に登場しますが、どこでも似たような扱いです)などです。

大久保は、一般的な印象としては、後者の方のキャラのはずですが、「ひどい奴だったけど、時代の流れでそういう役回りをせざるを得なかった」といったイメージの描写になっていたように思います。

ただ、こうした好き嫌いは、主人公である西郷の視点から見た場合の好き嫌いに沿っているような気もして、必ずしも著者のひとりよがりな思い入れから発しているものばかりでもないのかもしれません。

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