蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

国宝

2020年02月22日 | 本の感想
国宝(吉田修一 朝日新聞出版)

父親を暴力団の抗争で失った喜久雄は、いっしょに育った徳次とともに出生地の長崎から大阪に出る。
女形の名優:花井半次郎に拾われて、半次郎の息子の俊介と切磋琢磨しながら歌舞伎役者として頭角を現していく・・・という話。

歌舞伎を見たのは高校の時の学校行事のプログラムくらいで、その時は(本書でも似たようなシーンがある)開幕から10分ほどで寝入ってしまった。
現実世界の歌舞伎の面白さは全く理解できないのだが、本作で描かれる歌舞伎やそれを演じる役者たちは恐ろしく魅力的だ。(あと、役者ではないが喜久雄の幼馴染で俊介の妻となる春江もとってもキュート)

喜久雄と俊介はそれぞれに(貧乏や病気や醜聞や芸術的葛藤などといった)試練が襲いかかり、互い違いに(歌舞伎界で)浮き沈みを繰りかえす。
ジェットコースターのように起伏の激しいストーリーがスピード豊かに繰り広げられ、まさにめくるめく読書体験を味あわせてくれる。

本書は、本好きの狭い世界では恐らく非常に評価されていると思う。
しかし、もっと普遍的にジャンルを超えて多くの人に、アートとしての素晴らしさを共有してもらいたい、という思いにかられた。

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