蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

船に乗れ!Ⅱ独奏

2013年03月25日 | 本の感想
船に乗れ!Ⅱ独奏(藤谷治 ジャイブ)

音楽高校でチェロが専門の主人公は、美人の同級生(ヴァイオリン)との協奏をきっかけに付き合い始めるが、おじさんに招かれて西ドイツへ夏休みに2カ月ほど留学している間に、恋人は・・・という話。

と、書くと「なんだ、そんなありふれた筋書で面白いのか?」と思ってしまうが、
Ⅰ(合奏と協奏)もそうだったけれど、恋愛小説としての結構を持っているものの、
本書の魅力は、音楽のオの字もわからない私のような者が読んでも、音楽を演奏することや、美しく演奏するために懸命に練習をすることの楽しさや苦しさが、何となく分かったような気にしてくれる点にあると思う。

本書でも、ストーリーとしての読みどころは、主人公が西ドイツから帰って来て、つれない態度になってしまった恋人に何があったのか?を探る場面だと思うが、私が最も興味深く読んだのは、西ドイツのチェロの先生が、主人公に、まだ音楽を演奏することは無理だといって音階ばかり弾かせるあたり、そして主人公が苦悩しながも一皮むけていくあたりだった。

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