蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

数学する人生

2019年08月12日 | 本の感想
数学する人生(岡潔 森田真生編 新潮社)

戦前から戦後期に活躍し、世界的数学者とされる著者の講演やエッセイを集めた本。

「世にも美しき数学者たちの日常」(二宮敦人)という本によると岡の数学は例えるなら鶴亀算のような数学らしい。鶴亀算のようでない数学とは連立方程式で解くような数学とのことで、方程式というのは解く力が非常に強くて誰にも扱いやすいのだが、岡はこうした数学には批判的だったそうだ。

本書では数学らしき話は全く出てこなくて、著者が強調するのは「情緒」の大切さである。「情緒とは何か」という章もあるのだが、読んでいてもその定義はさっぱり理解できない。
「全体としての情と、その中の森羅万象の一つ一つとしての情と、いい分けないと不便です。ですから松から松、竹なら竹という、個々の情を私は情緒といっている。いつのはどれか、「情」と「情緒」を、こんなふうに使い分けているのです」(P36)

将棋の考え方というのは数学だそうで、プロの棋士は数学や物理が得意(というか勉強しなくてもできる)だった人が多いらしい。しかし、素人には将棋のどこが数学なのかさっぱりわからない。
だから、数学とは思えない著者の言葉も読む人が読めば、数学なのかもしれない。

「数学の本質は禅師と同じであって、主体である法(自分)が客体である法(まだ見えない研究対象)に関心を集め続けてやめないのである。そうすると客体の法が次第に(最も広い意味において)姿を現わにするのです」(P109)
うーん、このあたりはちょっと数学っぽい??

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