蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

泣くな研修医

2023年05月17日 | 本の感想

泣くな研修医(中山祐次郎 幻冬舎文庫)

主人公の雨野隆治は鹿児島大学の医学部を出たばかりの研修医。東京の下町の病院の(主に)外科で働くが、上司の岩井や指導役の佐藤には怒られてばかり。生活保護を受けている老人に対する治療方針に疑問を抱き、虫垂炎の手術で初めてメスを使い、若い末期大腸がん患者の死に動揺する・・・という話。

 

著者はがん治療を中心にした外科医なので、かなりの部分が実体験に基づいていると思われ、リアリティがたっぷり。というか研修医の実態がリアル(当たり前だけど、研修医ってほとんど素人同然なんだな・・・)すぎてちょっと怖い。

 

ただ、本書の魅力は、(モノ書きが)本職ではない著者の思いが、素朴にストレートに記述されていること。実務的知識も経験もほとんどない研修医の感情や迷いや悩みが痛切なほどに伝わってきて、プロ作家が取材や想像で書いた物語とははっきり一線を画していると思った。


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