蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

コロナ後の世界を語る

2020年12月13日 | 本の感想
コロナ後の世界を語る(養老孟司他 朝日新書)

朝日新聞のデジタル版に掲載されたコロナウイルスに関するインタビューや寄稿を集めたもの。
流行初期の2020年の春先に書かれたものがほとんどということもあって、「コロナ後」の世界を語っている人はほとんどなくて「コロナ中」の世界を語っているものが多い。

政治経済や社会学者などいわゆる文系の論者が記事は概してありきたりで面白くない。
一方、福岡伸一さん、山本太郎さん(医学者)など理系の論者の記事はとても面白く読めた。

福岡さんは、ウイルスこそが生物を進化させる重要な役割を果たしているとして、ウイルスとの共存の必要性を説く。

山本さんは、集団免疫を獲得するまで(医療崩壊しないよう)流行をスローダウンさせることは必要だが、いきすぎたウイルス(病原体)の撲滅は有害であとする。
山本さんの記事の中で、感染症を抱えている社会の方が強靭であるという説が特に興味深い。新大陸(中南米)はスペイン人などが持ち込んだ病原菌によって現地の民族滅亡の寸前まで急速に追い込まれたのに対して風土病が多かったアフリカは新大陸ほどの速さでは植民地化が進まなかったという。
天然痘は絶滅されたが、これによって天然痘に対する集団免疫もやがて失われてしまう。近い将来天然痘やこれに似た病原体が発生した場合、深刻化する可能性があるという説も「なるほど」と思わされた。

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