蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

足軽仁義

2022年01月12日 | 本の感想
足軽仁義〜三河雑兵心得1(井原忠政 双葉文庫)

茂兵衛は18歳。渥美半島の植田村の農民だったが、父と死別し、美人の母が富農の男と再婚することになって、その男の紹介で、弟(丑松)といっしょに岡崎の近くの夏目氏に仕えることになる。夏目氏は三河の家康に反抗する一向衆で、家康勢を岡崎南方の池のほとりにある野場城で迎え撃つ、という話。

野場城の攻防をめぐる武士たちの戦いぶりの描写が詳細に描かれている。現実の歴史と一致しているのかは知識不足でよくわからないが、今まで読んできた時代小説に比べて臨場感が遥かに高くて面白く読めた。

リアリティがあるなあ、と思ったのは、例えば下記のようなところ。
野場城の有力な侍が鉄砲名人で、面白いように敵に命中させるのは嘘くさい。しかし、籠城戦ではあえてその能力フルには発揮しない(守る方も攻める方も地縁のあるもの同士で敵を殲滅するような激しい戦は避けている)という筋書きになっているところが本当っぽい、と思えたのだった。

ちょっと気になったのは、茂兵衛のキャラが薄いところ。シリーズものなのでまだこれからなのかもしれないが。
コメント
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