蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

貴様いつまで女子でいるつもりだ問題

2017年08月13日 | 本の感想
貴様いつまで女子でいるつもりだ問題(ジェーン・スー  幻冬舎文庫)

タイトルやペンネーム(著者は普通の日本人らしい)から容易に想像できるように、プライドが高い人が自分のイメージ通りに人生が進まないことの苛立ちを綴ったエッセイ。

私は美人でスタイルがよくて教養もあってずっと東京育ちで(ラジオだけど)レギュラー番組ももっていてエッセイを書けば講談社エッセイ賞(本作で受賞)なのに、どうして社会的な大成功(今でも十分成功していると思うが)を得られず、超金持ちの男を捕まえることもできないのか、を嘆いた内容。とにかく著者の自意識が前面に出ていて読むのが少々つらかった。今時(でもないが)でいうイタい本だった。

のだが、そういう自意識と離れた内容の「桃おじさんとウエブマーケティング」「Nissen愛している」はとても面白かった。
また父との葛藤?を描いた「母を早くに亡くすということ」も良かった。自我をうまく受け入れてくれない父親(=世間)とどう折り合っていけばいいのか?をめぐる苦闘が生々しくて、プライドが高い自分をかなり客観的に観察できる視点が感じられた。
いずれも最後の方に収録されているので、時間が経つうちに著者の尖ったプライドも丸みを帯びてきてエッセイも洗練されてきたのだろうか?
日経の夕刊(土曜)の著者による連載コラムを見ると(まだ2、3回くらいだが)確かにツンツンしたイタい感はあまりないように思えた。
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ゼツメツ少年

2017年08月13日 | 本の感想
ゼツメツ少年(重松清 新潮文庫)

中学二年生のタケシは、学校でいじめられていた。校外学習で知り合った小5のリュウとジュンと家出を計画するが・・・という話。

「ナイフ」や「エイジ」といった著者の代表作の登場人物やエピソードを取り入れ、リュウと著者が文通するというメタ視点的な作品らしい。「ナイフ」も「エイジ」も読んだ覚えがあるのだが、かなり昔なので本作のどの辺に生かされているのかよくわからなかった。著者が作品中に登場するという仕掛けも効果はイマイチかなあ。

著者の作品は、いじめの場面がとても真に迫っている感じがして、読んでいてつらくなり、かつ登場人物に同情してしまうのだが、本作でもタケシがいじめられる場面が何度か出てきて同じように感じた。
特にイジメの先頭にたっているのが実の兄だという設定がツラい。そういう実例って多いのだろうか?あまりあるとは思えないので、そういう筋を思いついてしまう著者がちょっと恨めしかった(それくらいタケシに同情してしまったということで、まさに著者の思うつぼなのかもしれない)。
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