蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

AX

2017年08月04日 | 本の感想
AX(伊坂幸太郎 角川書店)

主人公は、凄腕の殺し屋(コードネームは兜)。
彼が最も恐れるのは、妻が機嫌を損ねること。夜遅く帰った時、(妻が起きてしまわないよう)夜食にするのは、音をたてずに食べられる魚肉ソーセージ。
家族に迷惑がかかるのを恐れて殺し屋稼業から引退したいのだが、元締めが許してくれない・・・という話。

私も恐妻家の一人なのですが、本作に出てくる恐妻家(主人公)の思考/行動パターンや、妻の機嫌が悪い時の雰囲気の描写は、恐妻家自身でなければ思いつけないほど精緻で真に迫っています。もしかして伊坂さんも恐妻家なのでしょうか。

伊坂さんの作品の大半を読んでいますが、一番好きなのは「グラスホッパー」。そのシリーズということで珍しく発売開始直後に買い、すぐに読みました。

(連作形式の)最初の「AX」は、いくら荒唐無稽な筋立てが多い(失礼)伊坂作品としても、ちょっとありえないなあ、というくらい無茶なストーリーでしたが、書下ろしの「EXIT」「FINE」はいつもの伊坂さんらしい面白さでした。

特に「FINE」の最後のパートが、映像的で、とても素敵な余韻がありました。恐妻家になる直前・直後の兜の話も書いてほしい、と思いました。
コメント
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