蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

いちまいの絵

2017年08月06日 | 本の感想
いちまいの絵(原田マハ 集英社新書)

世界的名画を紹介する本。
この点の本では、名画といってもド素人はあまり見たことないような、知る人ぞ知る的な作品を取り上げることが多いように思うが、本書はど真ん中、まさに誰でも一回は目にしたことがあるだろうな、という作品ばかりを取り上げている。そういう作品の解説は数多た世に出回っているわけで、こうしたセレクトをするには相当の度胸がいると思うのだが。

私が読んだ名画の解説本では、赤瀬川原平さんのものが良かった。
いずれも絵そのものの魅力、見方を解説していて、画家ならではの視点に感心することが多かった。
特段注意深く観察していなかったとしても気づくはずの絵の特徴が私には全く見えていなかったことが(著者の指摘により)初めてわかって愕然としたことも多かった。

本書の著者は美術品のキュレータみたいな職業についていたそうで、解説内容は、絵そのものの魅力を説くというよりは、著者や作品の来歴に触れている部分が多く、美術展のカタログを解説文みたいな感じなのはその影響だろうか。

その中で、「ブリオッシュのある静物」(ジョルジュ・モランディ)の解説はよかった。描かれた何でもない器やパンといった静物が、見つめているうち人間に見えてこないか?という指摘には「なるほどそう見えるな」と思えた。
コメント
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