蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

熊と踊れ

2017年05月05日 | 本の感想
熊と踊れ(アンデシュ・ルースルンド、ステファン・トゥンベリ ハヤカワ文庫)

暴力的でアル中気味の父親のせいで崩壊した家庭に育ったレオは、弟二人と協力して小さな内装工事の会社を経営している。
弟たちと軍隊経験がある友人と組んで銀行強盗を計画し、軍の備蓄兵器庫から大量の機関銃を盗み出す。綿密な計画と冷静な実行力で強盗は面白いように成功する。それゆえにか強盗をやめるきっかけを失い、弟二人が一味からぬけた後には婚約者や父親まで巻き込んで強盗計画をたてるが・・・という話。

強盗をするシーンとレオの少年時代のシーンが交互に語られる。
実際に発生した事件をもとにしているらしく、武器を盗み出す場面や強盗実行の計画・実行の場面に非常にリアリティがあるが、それ以上にレオの回想場面で描かれる父親との関係性の方がより一層迫力があり、かつ、テーマや描写に文学的といっていい深みが感じられた。

解説によると共著者のひとりは実際に事件を起こした犯人の弟(本人は犯行に関与しなかったそうである)とのことで、本物の経験に裏打ちされた物語は力強い。

それにしてもレオ(のモデルになった人)の計画力・実行力は恐ろしいほどで、その情熱を事業の拡大に当てていればビジネスでも大成功したんじゃないだろうか。
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